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[社説] 国民の信頼を失った韓国司法部

1人の反対もなく、最高裁の判事全員が政府に有利な判決 

どうしても「これは違う」という考えが自然と浮かぶ。国家情報院のハッキングについて騒がしい最近、制憲節(憲法の公布を記念する日)を目前に、大法院(最高裁)が国家情報院の選挙介入疑惑について免罪符を与えたからだ。

もちろん、そのような判断を下すこともできる。1審では「政治介入は事実だが、選挙介入ではない」と判断し、これを高裁の裁判部が反転させたのだから、最高裁で違う解釈をしたからと、完全なでたらめだとは言い難いのも事実だ。

たとえそうだとしても、大法官(最高裁の判事)13人全員が同じ考えを持ったということは、到底納得し難い。1審と2審の判決が分かれた場合、判事のうち少なくとも1~2人は違う判断を下すのが常識的に正しい。

裁判官の判断に影響を及ぼした内容は簡単だ。国家情報院の職員のファイルには院長が下した指示と要員たちが書いたアカウントが含まれている。裁判廷で国家情報院の職員は、政府の広報をしたり、野党を批判する内容は、自分が書いたものだと認めた一方で、選挙介入疑惑が濃い残りのアカウントについては、誰が使ったのか分からないとしらを切った。

この明らかな嘘​​に、1審は被告側についた。自分に不利な証拠を認めない、刑事訴訟法の伝聞法則が被告に有利に作用した。この規定は、捜査機関の拷問などで偽の自白をしたとしても、法廷で被疑者がこれを認めない場合は証拠能力を与えないために作られた条項だ。

捜査機関が間違った人を証人として立てたり、偽りの証言を出すのを防ぐ装置としても活用されている。ただし実際に処罰を受けるべき者が証拠を認めずに無罪で釈放されることを防ぐための例外条項も設けられている。

最高裁は2007年、性売買の女性らが相手の男性の電話番号と売春方法を書いておいたメモ用紙を業務上の文書と見て、証拠資料として採用したことがある。さらに、これまでの判例を見ると、デジタル文書を伝聞法則から除外する傾向を示している。

これを勘案すると、最高裁はあまり力のない弱者には刃を突きつけて、強者には法を有利に適用した非難から免れない。

政治的に敏感な事案であるだけに、最高裁の判事も苦心したのだろう。選挙介入として判決すると、ただでさえ混迷する政局に油を注いだ格好になる可能性もある。

それでも裁判官は文字通り法と良心に基づいて判決を下さなければならない。裁判官は、法治と民主主義の最後の砦であるわけだ。

今回の判決について最高裁の判事が、天を仰いで、少しの後ろめたさもないと主張するなら言うことはない。そんな裁判官たちに韓国の法を預けた国民がかわいそうなだけだ。最高裁の判事13人全員が同じ考えを持っているのだから、彼らの良心を裁断する天がいないことを嘆くしかない。

すでに韓国の司法部は国民に信頼されていない機関として烙印を押された状態だ。昨年、WEF(世界経済フォーラム)で、韓国は政策決定の透明性や政治家の信頼度について最下位に近いスコアを受け国際的な恥を買った。

政策決定の透明性は、カンボジアよりも低い133位で、政治家の信頼性は、アフリカ、ウガンダよりも低い97位にとどまった。司法の独立性も82位で、下から数えたほうが早い。OECD(経済協力開発機構)の司法信頼度調査で、韓国が受けた点数は、わずか27点で、ヨーロッパとアメリカ、日本と比較することさえ難しい。司法の信頼性で韓国よりも低い点数を受けたOECD諸国は、コロ​​ンビアとチリ、ウクライナの3国だけだ。

このような事実を裁判官が知らないのなら、本当に言うことはない。ありふれた少数意見を出した判事は1人もおらず、一糸乱れず下した今回の最高裁の判決を見て、法治の最後の砦が崩れたような気がした。

  • [社説] 国民の信頼を失った韓国司法部
  • O2CNI_Lim, Chul
  • 入力 2015-07-19 09:00:00




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