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[世智園] 虐待と権力格差


  • [世智園] 虐待と権力格差
京畿道にある某大学の教授が自身の生徒を数年間虐待したという疑いで最近拘束された事件の余震が続いている。ソーシャルネットワークサービス(SNS)で、教授の虐待行為が想像を絶していると非難する声が後を絶たない。実際に、教授にかけられた嫌疑は衝撃的だ。自分の学会の事務室に就職した生徒を野球のバットで暴行し、睡眠をとらせなかったという。

しかし、韓国社会では、この事件が特別例外的なものではない。弱者を虐待する行為が絶えず発生する。「ラーメン常務」事件と「ナッツリターン」事件が代表的だ。

心理学者は、虐待行為の原因として「権力」を挙げる。人間が権力を感じると、体から「ドーパミン」と呼ばれるホルモンが分泌され、脳の化学的作用が変化する。その結果、私たちの脳は共感能力が損なわれ、偽善になる。だから他人をより簡単に虐待することができるようになる。

米国スタンフォード大学の刑務所の実験がこれを立証する。大学生を二つのグループに分け、一つのグループには看守の役割を、他のグループには囚人の役割を任せた。すると看守役だった学生が囚人役の学生を苦しめてセクハラまでした。このように、人間は権力を握ると、他人をいつでも虐待する危険性がある。

韓国は特に、このような危険性が大きい。人々の間の権力格差が大きい社会だからだ。国別に権力がどれほど不均等に配分されているかを数値化した権力格差指数(PDI:Power Distance Index)で、韓国はなんと60だ。オーストリアは11、デンマークは18に過ぎない。

一方では、教授の指図を受けて暴行に参加した疑いを受けた他の生徒たちを非難する声も高い。教授が指示したからと仲間を暴行するのはありえないというのだ。

しかし、人間はもともとそのように生まれている。イェール大学のスタンレー・ミルグラム(Stanley Milgram)教授の実験は、これを証明する。実験で片側には学生の役割を、他の一方には先生の役割を与えた。先生役が出した問題を隣の部屋の学生が間違って答えると、電気ショックを与えた。問題を間違うたびに先生は衝撃強度を15V(ボルト)ずつ最高450Vまで上げなくてはいけなかった。この程度なら、学生を殺すレベルだった。しかし、研究員が電気ショックを要求し続けると、先生役のうち65%が450Vまで高めた。研究員の権威に服従して他人を殺す可能性のある決定を下したのだ。

人間が他人を虐待しないようにするには、権力と服従の危険性を知らないといけない。
  • 毎日経済 キム・インス論説委員 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-07-22 17:24:13




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