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[コラム] 土のスプーンたちのビンゴゲーム


総制作費3億ウォンをかけて作った『誠実な国のアリス』という映画がある。 n放世代*と呼ばれる韓国の青年たちの暗い現実を告発するブラックコメディだ。

映画の中の主人公のスナム(イ・ジョンヒョン)は、手先が器用で14個の資格を取得したが、ほとんどの資格はデジタル時代以前のもので不用になったものだった。ようやく工場の仕事を得て、そこで出会った障害者の男性と一緒に暮らすことになるが、純粋な愛だけで生きていくには現実はあまりにも非情だ。

一生の夢「マイホーム」と夫の看病のために、スナムは新聞配達、清掃、レストランの補助などの掛け持ちも辞さないが、高騰する家賃と物価に対処することも難しい。

映画のあらすじを話そうというのではない。映画の中の主人公の設定は現実とかけ離れている風変わりな話で、本当の韓国社会では珍しい話であってほしい。

最近、就職を控えた青年の間で流行っている土のスプーン**ビンゴゲームも、青年の悩みと痛みを代弁する。大学の卒業証がなければ処世も難しい世の中で、学費を作るためにアルバイトに追いやられる青年が夢と理想を抱くことは容易なことではない。

「Boys、be ambitious」は本当に時代遅れの古い諺になってしまった。

もちろん、まだ優れた頭脳とずば抜けた技量で自分の夢を羽ばたかせる韓国の若者たちはいくらでもいる。さらには、社会と人類に奉仕するという遠大な抱負を持つ若者も少なからずいるだろう。

しかし、貧しい家に生まれて頼るところのない若者たちが、早い時期に「土のスプーン」で生まれた自分の境遇を自嘲して、世界を嘲笑する現象を容認するのは難しい。親から受け継ぐものがない場合、努力をしても、成功どころか就職や結婚すら放棄しなければならないと考えている若者の数が増えている状況において、韓国社会の安定を期待することは難しいからだ。

n放世代の青年たちの現実的な厳しさは数値にも表れている。韓国保健社会研究院が調査した2013年の18~24歳の貧困率は19.7%、25~29歳は12.3%にもなる。60~64歳の20.3%に次ぐ数字だ。

青年失業率は、2012年に9%、2013年に9.3%、2014年に10%と毎年増加している。求職を完全に放棄して公務員試験を準備したり、大学院に進学した青年たちが失業率の統計に反映されないという事実を考慮すると、実際の青年失業率ははるかに高い。20代の賃金労働者341万人のうち、非正規職が47.4%とほぼ半分に近い。良質の雇用を得ることは、また別の問題ということだ。

イライラした青年たちは韓国社会を地獄に表現した「ヘルチョソン(Hell朝鮮)」、韓国人で申し訳ないという「センソンハムニダ(朝鮮人で申し訳ありません)」という言葉を作ったりした。韓国を脱出しようという移民のための集まりも登場した。

努力をしても志を成すことができないと信じている人が多くなるなら、社会の構成員は近道を見つけるしかない。特に政治、社会、文化で不公正な競争が蔓延した局面であれば、青年たちの視線は未来に向けた夢よりも現実的な誘惑に向けられる。

映画『誠実な国のアリス』の主人公スナムは新聞配達と名刺回しで身につけた技術を犯罪に利用することになる。権力と富を持つ韓国の指導層が青年をスナムのような道に行かせないようにするためには、青年たちに努力だけで立ち上がることができるという夢を見せなければならない。

* n放世代:1990年代末、恋愛と結婚、出産をあきらめた3放世代(3つのことを放棄した世代)という言葉が登場し、ここにマイホームと人間関係が追加された5放世代が登場した。n放世代は一体いくつをあきらめなければならないのかわからないという自嘲的な意味が込められた言葉だ。

**土スプーン:貧しい家に生まれた子。裕福な家に生まれることを銀のスプーンに例えたことから。

土のスプーンのビンゴゲーム
  • [コラム] 土のスプーンたちのビンゴゲーム
25個の項目のうち、該当する項目に丸をつけ、丸が対角線や縦横に5個つながったらビンゴ。ビンゴが何個かによって土スプーンの程度が決められる。
  • O2CNI Lim, Chul
  • 入力 2015-08-30 08:00:00




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