トップ > コラム > オピニオン > [世智園] 心の温度

[世智園] 心の温度


  • [世智園] 心の温度
夕食の席で聞いた話だ。企業の従業員を教育する講師が、大企業で講義をしながら「良い会社に勤めていて、羨ましい」と言ったところ、従業員が冷たく「サムスンでもないのに、何を」と言ったという。ある日、サムスングループ系列会社の従業員に羨ましいと言ったところ、「サムスン電子でもないのに、何を」という反応が返ってきて、サムスン電子に同じことを話をしたところ、「役員でもないのに、何を」と言ったという。

より上の人と延々と比較しながら、現在に満足していない韓国人の断面を見るようだ。サムスン電子の役員は、サラリーマンの羨望の対象だが、彼らといえども幸せなだけだろうか。

小説『クペさんの幸せ旅行』でクペさんが最初に見つけた幸せの秘密は「自分を他人と比較しないこと」だった。私たちは、「他人と比較する瞬間、不幸が始まる」ことを知りながら、このつまらない習性のせいで「比較的不幸」にはまったりする。

最近の調査の結果、韓国人は自分の「心の温度」が氷点下14度で凍っていると感じていることが分かった。入試に苦しむ高校生は氷点下16.6度、就職が不確実な大学4年生は氷点下24.4度と最も深刻だった。韓国人の心の状態がいつも雪の舞うシベリアレベルなんてひどい話だ。経済的余裕がある40代まで氷点下9度にとどまった。これは、景気低迷、高い住宅費用、望んだ通りにはいかない子どもの教育などの暗い現実のためだけではないような気がする。他人と比較しながら感じる相対的剥奪感が入り乱れながら、より心が寒くなったのではないか。

この調査機関は、心の寒さを溶かすことができる解決策も提示した。意外にシンプルだ。高校生は「家族・友人から賞賛を聞いたとき」、40・50代の会社員は「温かい話に接するとき」と答えた。

先日、YouTubeに涙腺を刺激した動画が上がってきて話題になった。ある女学生が公園の真ん中で泣きながら隣の人に「私、高3なんですが、とてもつらいです。一度、抱きしめてくれませんか」と質問する。修能(韓国のセンター試験)を100日後に控えて制作された、一種のどっきりカメラだったが、多くの人が生まれて初めて会った女子学生を胸に抱いてくれた。水を買ってきてくれたり、一緒にご飯を食べようと慰めた。動画には「胸がジーンとした」「私も泣いた」というコメントが続いた。

寒さは暖かさでしか溶かすことができない。動画の中の人ように、見知らぬ人に暖かい肩を借してこそ、そして他人と比較しない文化が定着してこそ、初めて心の温度計が上がるようだ。
  • 毎日経済 シム・ユンヒ論説委員 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-09-02 17:11:54




      • facebook icon
      • twetter icon
      • RSSFeed icon
      • もっと! コリア