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[コラム] マムチュンとハンナムチュンが暮らす国


「女ひとりでは生きられないわ。女ひとりでどうやって子どもを産むの。産めない。男が種をまかなくては」

認知症にかかった老人が一週間前からレパートリーにしている言葉だ。老人は一度話し始めると、しばらくの間その言葉だけを口にしながら暮らす。

「お母さん、男一人でも子どもは産めないよ」
「だからそういうことよ。男が種をまいてこそ産むのよ」

すでに一人で暮らし始めてから20年が経ったから、寂しさが骨に沁みたのか、生前には敵のようにして過ごしていた夫がそれでも恋しいのか知る由はない。老人の記憶の中に夫が存在しているのかも疑わしい。長い事、まったく口にしたことのない言葉だ。

「女性一人では生きられないの」
老人がふと私の顔をじっくり見る。私が誰なのか気になったようだ。
「お母さんの息子です。お母さんが産んだ息子です」

私を見る老人の目には疑問がいっぱいだ。自分はひとりなのに、どうやって息子を産んだのかという考えに陥ったようだ。

老人が「女性ひとりでは子どもを産むことができない」という言葉を口にして暮らしている間、オンラインの世界では戦争の真っ最中だ。理念葛藤でもなく、貧富の葛藤でもない。法務部長官が目前に迫っていた司法試験廃止時期を4年後に延長すると言った後、法曹界へも金のスプーン騒ぎが飛び火したが、男女の争いが起きているオンラインの世界では、スプーン論が入り込む隙間はない。

しばらく男性たちが嫌悪感を抱かせる女性に対してキムチ女、味噌女、キム女史と皮肉っていたが、今度は彼女たちが韓国の男性に対してキムチ男だと嘲笑する。女性はマムチュン(他人に迷惑をかける子どもの母親を虫に例えた言葉)、男性はハンナムチュン(マムチュンに対抗して韓国人男性を虫に例えた言葉)へと、韓国人は虫に変身する段階だ。

まだ極度に韓国の男性を嫌悪する女性や、女性を卑下する男性が少数に過ぎないというのが慰めにはなるが、このような傾向が持続すれば戦線に参加する数が増えるのではないかと心配になる。賃金や昇進で女性が不利益を受け、女性に美しさを強要する社会では、戦線が拡大する可能性が十分であることから、心配を打ち消すことができない。

しかし、一方では、心の中に深く隠してきた不満が出てきたことが幸いでもある。お互いを罵って嘲笑しながらも、社会の不条理に起因する被害者という連帯意識を持つこともできるのではないかという細い糸のような希望が見えたりもするからだ。

性差別による構造的な問題を、男女が一緒に解放していこうという共感が形成されれば、これに基づいて非正規職労働者や、疎外階層の問題など、別の問題の解決にも行動をともにすることができるだろうという希望を抱いてみる。

「女ひとりでは生きられないだろう」を繰り返していた老人は、いつの間にか眠りについた。
  • O2CNI_Lim, Chul
  • 入力 2015-12-13 08:00:00




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