A. | 人間、いやすべての生命体の基本構造が細胞だという点は敢えて説明しなくてもいいでしょう。 細胞は、時が来れば分裂を止めて死にます。 新しい細胞にポストを譲るのです。 死んだところに代わる細胞がなければ? その細胞が担う機能が止まるでしょう。 人間の体を構成する細胞は大きさも違いますし寿命にも差があります。 大きさ*だけでみるとヒト細胞の中で最大のものは卵子です。おおよそ0.2ミリメートルと肉眼でも見られます。 これに比べると、オタマジャクシ型の精子は長さ40~50マイクロメートル、幅2~4マイクロメートルと小さな存在です。人間の細胞の中で一番小さいです。しかし、数字がとても多いです。 器官を構成する哺乳類の細胞の大きさ**はほぼ同じです。ネズミの細胞や象の細胞の大きさがほぼ同じだということです。ゾウの体が大きいのは細胞が大きいからではなくて、個数が多いからです。 * ヒト細胞の平均サイズは、1/300ミリメートル ** 生物種によって細胞の大きさに差がありますが、地球の生命体の細胞の中で最も大きいのはValonia ventricosa(オオバロニア)とXenophyophorea(クセノフィオフォラ)。ブドウの卵のような形をしたValonia ventricosa細胞は直径1.5センチを超えるものもあります。 ヒトの体の細胞はおよそ60兆個あります。体の大きいヒトの細胞数は少し多く、100兆個にもなるとも言われています。 この多くの細胞の周期が身体部位ごとに差が大きいです。 周期が最も長い細胞は目の水晶体です。 水晶体は一生を共にします。 肝臓の細胞は12~18か月で、長いほうです。 骨と筋肉、臓器を構成する細胞の周期は120~200日で、骨を完全に新しい細胞に入れ替えるのにかかる期間はおよそ7年ほどです。 皮膚細胞の寿命は1か月ほどなのですが、頭皮は60日と皮膚細胞の中では長い方です。 血液中の細胞も差がありますが、赤血球は3~4か月、血小板は10日ほどであるのに対し白血球の生存周期は48時間に過ぎません。(糖尿病患者も赤血球の生存周期は同じだけに、検査を受けた後3か月間は新たに検査を受ける必要がありません) 白血球の生存周期も短いですが、胃腸を構成する細胞の周期は短いです。 胃壁は5~7日と、それでも長いのですが、小腸の絨毛細胞の周期はすごく短いのです。 小腸の内壁表面を覆っている約500万個の絨毛はエスカレーターを連想させます。無数の突起状になっていますが、突起の頂上まで登ると周期が途絶えます。エスカレーターの目的地に着くと階段が消えることを連想すると楽でしょう。 多くのはかない命の絨毛細胞のおかげで、私たちの体に必要な栄養素を吸収できるようになったわけです。 |