A. | 韓国保健当局(保健福祉部と国立がんセンター)が2015年に発表した「国民がん予防に関する心得」の酒項目は次のようなものです。 「一杯、二杯のお酒も飲むな」 従来の節酒から禁酒へと変わったわけです。 禁酒の対象には、もちろんワインも含まれます。 世界的な時事週刊誌米国の『TIME』誌が選定した10大健康食品(スーパーフード)に赤ワインも堂々と選ばれました。 『TIME』がスーパーフードを発表した2002年当時はもちろん、これまでも赤ワインは「人の体にやさしいお酒」として認識されています。 赤ワインの紫色色素(ポリフェノール)は体の中のコレステロールのうち良いものは増加させ悪いものは抑制する効果があると紹介されました。貯蔵過程で生じる若干の渋みを出す「カテキン」には有害酸素を除去する抗酸化作用と抗がん作用があります。 これだけではありません。赤ワインに含まれている「プロシアニジン」は天然の抗酸化、「レスベラトロール」は身体に「SIT1」という遺伝子を活性化させ老化を抑制してくれます。ブルーベリーにも多量に含まれている「アントシアニン」は血栓作用、肥満抑制、メタボリックシンドローム予防、視力保護に良いと言われています。 難解な各種成分が表記されていますが要約すると赤ワインは心臓をはじめとする心血管疾患や体重調節、疲労回復、口腔の健康に役立つという意味です。 フランスの長寿老人として知られるジャンヌ・カルマン(Jeanne L. Calment)が122歳になると、その秘訣が気になったメディアは赤ワインに含まれた「トレンス型レスベラトロール」に注目しました。 ジャンヌ・カルマンでなくてもフランスをはじめとするワインを楽しむ南欧の人々は健康で平均寿命も長いため「フレンチパラドックス」という言葉もあります。 肉類やチーズ、バターなど高飽和脂肪の多い食べ物を好んでもワインを飲むので、心血管疾患を患う人が少ないということです。 ワイン愛好家は赤ワインだけでなく白ワインでも食中毒予防、骨粗鬆症予防、心血管疾患予防、疲労回復、視力保護の5つの効果があると推薦しています。 ワイン愛好家たちには他の話が耳に入りません。 医学の父と呼ばれるヒポクラテスが「適当な量のワインを適当な時間に飲めば病気を予防し健康を維持することができる」と絶賛した言葉だけが耳に残るだけです。 「がん予防の心得」作業に参加した研究チームも「1日1~2杯の適正飲酒が心血管疾患や糖尿病の予防に役立つ」と認めています。ワインの成分ががん細胞の成長を抑制したり、がんを予防する動物実験が成功裏に行われたという事実も認めます。 保健当局が注目しているのはワインに含まれる有益な成分は少量のみであり、ワインも酒ですので主成分はあくまで1級発がん物質であるアルコールであることです。どのような種類のお酒を飲んだかに関係なく、がんの場合は1日1~2杯のお酒でもリスクが高まるという説明です。 健康のためにワインを諦めるか健康のためにワインを飲むか? 簡単には選べないジレンマです。 前述したフランスの長寿老人ジャンヌ・カルマンが21歳から117歳までなんと97年間もタバコを楽しんだという事実がジレンマを解くのに参考になるでしょうか? |