A. | 政治家も学者もこの事件についての言及を避けているように思います。どうしても避けることのできない境遇に置かれた場合は、あいまいに話をごまかすようにも見えます。 とにかく、この事件は名前からしてあいまいです。メディアが「江南駅通り魔殺人事件」と報道したことから、人々もそう思っていますが、事件が起きたのは江南駅とはだいぶ離れた瑞草洞のカラオケです。去る5月24日に実施された現場検証で警察は「瑞草洞居酒屋トイレ殺人事件」と念を押しました。 この事件に対する態度にどのような違いがあるのか、あるポータルサイトに投稿された、多くのコメントがついた書き込みを紹介します。書いた人は、新婚の主婦です。 「ねえねえ。江南駅事件のニュース見た?」 「うん、見た」 「どう思った?」 「悪い奴だ。死刑にするべきだ」 「違う、そういうことじゃなくて」 「狂った奴がさらに多くなった気がするとか、そういうこと?」 「そうじゃなくて、犯人が言った言葉を知らないの? 記事にも出てきていたのに?」 「何て言ったんだ?」 「女だから殺したそうよ。女性だから」 「うーん……」 「その犯人が隠れていたところに男がいたら殺していなかっただろうし、女だから殺したんだって、女が嫌いだから」 「殺人犯も弱い人を選んだんだろう。自分が危険になる可能性もあるし」 「この社会は、あまりにもひどい気がする。赤の他人でも女だという理由で死ぬかもしれないってことよ。私はそれがあまりにも怖い」 「気をつければいいだろう」 「気をつけてもダメでしょう? この状況でどうしたらよかったの、じゃあ?」 その時から、夫が少し神経質になり始めました。 「なんで怒るの? 私は本当に怖くて衝撃的だったから……」 「俺にずっと同じことを質問するからだろう。答えてるのに」 「自分は怖くないの? 妻の私も女だし、後で子どもが生れたら娘かもしれないのに」 「何度も言ってるだろう。気をつければいいじゃないか」 「だから、どうやって気を付けるのよ」 「……」 「もう外のトイレは怖くて入れなくなったの。女性は」 「なら、俺がトイレについて行こうか? 他の女子が通報するだろうけど」 「皮肉みたいなことを言わないで。現実的に気を付ける方法がないことを自分も認めるのね?」 「いい加減にしろよ。考えてみろよ、これまで女性だけが殺人の被害者だったわけじゃないだろう? 男だって無駄死にする人は多い」 「男性だから殺したという事件は聞いたことがないわ。これは単に女性だから殺したのに? あなたはまだ娘もいないし、女の兄弟もいないから分からないのよ。女性が今、この事件のせいでどれほど恐怖を感じているのか。その心を察するのがそんなに大変?」 「だから、注意しろって言っただろう。これ以上何をどうしろって言うんだ。警察にも解決できないのに」 「いくら何でもそんなこと言わないで。さっき、女性に対して悪く話したじゃない」 「いい加減にしろよ。俺がいつ女性に対して悪く言ったんだ。そういう女性だけがそうだってことだ」 「つまりそういうことよ。女性の心は今、みんな同じよ」 「本当に理解できない。これは殺人者を非難すべきものだ。男性を非難すべきことなのか? 女性の殺人犯はいなかったのか? 女性の犯罪者はいなかったのか」 「それとこれとは違うでしょう」 「何が違う?」 「女だから殺したの。女性を標的にして、女性という理由だけで殺したのよ」 「お前がここまで話の通じない女だとは知らなかった」 「女だから話が通じないって聞こえるけど?」 「ほらまた。今、俺たちの会話がどれほど無知なのか分かるか。同じ話を何度も繰り返して」 「自分がずっと揚げ足を取ったりするからでしょう」 「俺が? 俺がいつ揚げ足をとったんだ? まいったな。通行人に聞いてみろよ。誰が間違っているのか」 「それこそ私の言いたいことよ」 「江南駅でデモしてる女に聞かずに、本当の不特定多数に聞けよ。必ず」 「もういい。やめよう」 このようにケンカしてから、今日までメールや会話をせずに過ごしています。いくら考えても、夫はこの事件に無関心で、恐怖に震えている女性自体を情けなく見ているようで失望しています。 本人は何が問題なのかもわからずに。 もし私があんな事件にあっても、同じように反応するのでしょうか。私への愛情がないか、女性について、もともとこんな考えを持っているのか。 この記事へのコメントの中では夫が可哀想だという意見が多数ですが、中には妻の肩を持つコメントも少なくありません。この違いを知るためには、江南駅通り魔殺人事件の精神病を持つ犯人が、自分より弱く見える相手を狙ったものなのか、それとも女性を犯行対象にしたのかを確認する必要があります。長くなりますので、今回はこの辺まで。次回へと話を続けます。 ※この記事は「江南駅通り魔殺人事件が他の事件と違う特別な理由がありますか?(2)」へ続きます。 |