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センド・エニウェアのイーストモブ、技術だけで楽天から80億ウォンを誘致

海外で技術力を認められ、サムスン電子も提携要請 

    △写真=イーストモブのオ・ユンシク代表(右手前)が従業員と一緒にポーズを取っている。

    1人多モバイル時代だ。1人がスマートフォン、ノートパソコン、タブレットPCなどの複数の機器を同時に使用する。そうすると作業していたファイルがあちこちに分散される場合が日常茶飯事だ。クラウドサービスでファイルを共有できるが、大容量ファイルを処理する際に面倒だ。業務上重要なファイルは、クラウドに保存するのが厭われる。ファイル転送プログラム開発会社イーストモブ(estmob)の「センド・エニウェア(SendAnywhere)」と呼ばれるサービスは、このような不便さを解決してくれる。スマートフォン、ノートパソコンなどの機器同士が直接ファイルをやり取りするサービスだ。別途ログインも必要ない。任意の6桁のパスワードを設定後、すぐに他の機器へファイル転送が可能だ。

    速度も速い。 2ギガバイトの容量のファイルをPCでは10秒、モバイルでは1分以内に送ることができる。ネットワーク環境が良くなくても、高速を維持できる。米国、インド、台湾のネットワーク環境では、既存のクラウドサービスより10倍以上の速度を出す。

    最近、ソウル駅三洞のオフィスで会ったイーストモブのオ・ユンシク代表(38)は、「ファイルを原本のまままますぐに他の機器に直接送信できることがセンド・エニウェアの利点だ」とし、「外部サーバーを通さないためセキュリティ面でも安全だ」と明らかにした。韓国航空大学情報通信工学科を卒業したオ代表の最初の職場は、ソフトウェアメーカーのイーストソフトだった。そこで、クラウド・ストレージ・サービスの開発に主に参加した。そうするうちに、社内ベンチャーを介して機器間のファイル転送サービスの開発を開始し、以後、分社してイーストモブを創業した。大学の同期(イーストモブのイ・ギョンホ取締役)と一緒に資本金2億ウォンで出発したイーストモブは、現在従業員数20人規模に成長した。

    順調なだけではなかった。イーストソフトから独立した後、運営資金を調達することも容易ではなかった。国内ベンチャー投資家を探しながら投資を要請したが、「そんな技術で、果たして利益を出すことができるのか」という冷淡な反応だけが帰ってきた。あらかじめ数十万人以上の利用者を確保ていたとしても、投資家たちは気に入らなかった。あるベンチャー投資会社の代表は、「センド・エニウェアは絶対に成功できない。ビジネスモデルを変えろ」と断定的に話したりもした。

    最終的に他の情報技術(IT)ベンチャーのような開発プロジェクトを受注しながら、なんとか堪えた。オ代表は「大きな夢を持って会社を蹴って出てきたが、希望が薄れるようだった」と語った。 「放棄」というカードを弄っていた頃、信じられない機会が訪れた。創業2年目の2014年初め、楽天ベンチャーズから投資提案がきた。オ代表は「楽天側に投資説明会をしたこともなかった。ちょうどファイル転送関連サービスに興味を持っていた楽天が海外マガジンに紹介された記事を見て最初に連絡をくれた」と語った。数千万ウォンも惜しかった時期だったが、楽天はイーストモブの技術力を認め、10億ウォンを一度に投資した。オ代表は「収益性とかビジネスモデルではなく、技術力だけを検証して投資をした」と話した。楽天との縁はここで終わらなかった。今年1月、70億ウォンを追加投資した。イーストモブは楽天が投資した韓国唯一のスタートアップだ。オ代表は「最も自信があり、得意な分野がネットワークベース技術だった」とし「さまざまなモバイル機器でファイルを転送するのに不便さがあるという点に着目して、可能な限り簡単かつ迅速にファイルを転送するサービスを作ることに集中した」と語った。

    今月中に「センド・エニウェア for プリンター」というアプリをサムスン電子プリンターで発表する計画だ。ケーブルなしで、スマートフォン、タブレットPCなどに保存されたファイルをプリンターに送信して出力できるようにするサービスだ。昨年からベータサービスを開始し、今回、サムスン電子と協力して初めて有料モデルを披露した。この提携は、センド・エニウェアの技術力を知ったサムスン電子が、まずイーストモブに協力を提案して成された。サムスン電子との共同事業だなんて、初めて提案を受けた時は心惹かれたりもしたが、心配な気持ちが先立った。

    大企業と協力すれば、最終的に技術力だけ奪われるという周囲の懸念が多かったためだ。オ代表は「単に技術を提供する下請け業者になることはできなかった」とし「収益を分け持つという同等の関係で協力を引き出した」と話した。技術力のあるスタートアップと大企業の成功的協力事例を作ったのだ。

    イーストモブのオ・ユンシク代表(38)は、「プリンターは、始まりにすぎない」と言った。イーストモブは、テレビ、カメラなどとも自由にファイルを送受信できるサービスを段階的に開発していく計画だ。オ代表は「スマートフォンやカメラで撮影した動画や写真を大画面のテレビでその場ですぐ見れる環境を構築していく」と話した。ワイヤレス・ネットワーク・インフラストラクチャーが不十分な外国では、ファイル転送が容易でない。

    そのためセンド・エニウェアは、国内よりも米国、日本、インドなどの国外ユーザーにより人気がある。約160万人の利用者のうち75%が国外にいる。外国メディアとパワーブロガーたちの間でセンド・エニウェアの口コミが出始めながら、ユーザーも急増した。あるパワーブロガーは「それぞれ別のオペレーティングシステム(OS)を持つ機器間で、自由にファイルを送受信できる驚くべき技術力だ」とし、「センド・エニウェアが活性化すれば、USBは消えるだろう」との見通しもした。
  • 毎日経済 アン・ジョンフン記者 / 写真=キム・ホヨン記者 | (C) mk.co.kr | 入力 2016-04-14 17:08:56