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もっと! コリア (Motto! KOREA)
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  • Q.
    韓国の接待や賄賂の文化について知りたいです。
  • A.
    大韓民国の国是が何であるか知っていますか。自由、平等、博愛でしょうか。いいえ、それはフランスの国旗ですね。

    実は、韓国人もよく知りません。大学の入学試験に一度も出たことがありませんから。憲法第1条に「大韓民国は民主共和国である」とあるため、民主主義あたりじゃないかと考えることでしょう。

    接待についての質問に、なぜ民主主義などの話が出て来るのかって? 今、その話をしようとしているところです。つまり、韓民族最初の国である古朝鮮までさかのぼると、「施す(与える、もてなす)」ことが国是だったんです。韓民族の始祖である檀君(タングン)は桓因の息子ですが、母親は百日の間、ニンニクだけを食べて女性になった熊でした。女性だったのに婚姻の道が塞がった熊女は、赤ん坊が授かるように神檀樹の下で祈りをささげたのですが、かわいそうに思った桓因が人間に変わって熊女と結婚したのです。

    このように微物にまで豊かな心を与えたのが、朝鮮の始まりです。国を作ったのは、ただただ人間のためだったのです。韓民族の思想的ルーツは、まさに古朝鮮の理念である「弘益人間」となります。

    「他人の為に生きて、他人に施す」のが先進国の美徳であれば、韓民族の先祖たちは本当に時代をリードした人々でした。

    そのためでしょうか。韓国の人々はある意味では本当に施すことが好きです。それこそが、まさに接待です。明日の子供の学費はなくても、高官をもてなすためなら高利債もいといません。

    事業資金に窮して銀行にお金を借りる時は、せめて夕食だけでも接待しようと、一日に三、四回「一度でいいから、もてなしたい」と電話をかけます。当然、相手の好きな料理店で食事をして、豪華なルームサロンや料亭にも寄ることでしょう。

    仕事が不足している中小企業の社長は、大企業の部長に気に入れられようと、家庭の大小事も忘れません。お金がなくて借金するときにも、接待だけは必ず行うのですから、弘益人間の精神で武装された檀君の子孫に間違いありません。自嘲的な感じがしなくもないですが。

    昔は少しでも多く持っている人が不足している人をもてなすのが韓国の伝統でした。99間の金持ち(家の部屋が99室もあるほどの金持ち)の部屋には客が滞在し、飢饉の際には飢えた隣人を救済しようと納屋を解放しました。

    慶州のチェブジャの家では「旅人を豪華にもてなしなさい」、「周辺100里内に飢えて死ぬ人がいてはならない」という家訓が伝わっています。チェブジャは景福宮の再建にかかるお金を出すために財産をすべて奪われ、穴蔵に住みながらおかゆで延命していたのですが、倒れて死んでいく乞食を見て、自分が食べていたおかゆを渡しました。その功徳で再び財産を築いたという民話が伝えられています。

    考えてみれば公職者や教師、記者たちに渡していた寸志も、賄賂というよりはお小遣いとして使ってくれと施す行為でした。いまや誰もがそれなりに暮らしていますが、昔は公務員や教師、記者たちの給料がひどく少なかったのです。扶養家族が多かった中央省庁の書記官が、昼食のたびに古宮に行って水道水で空腹をなだめたという言葉があるほどでしたから。

    記者などは、交通費程度しか給与が出ない新聞社もあったそうです。だから友人や知人がくれる寸志は命綱だったわけです。このようなお金を受け取ってはいても、当時の記者や公職者は不正に対して妥協しないなど、気概が高かったそうです。寸志をあげる人もあまり対価を望んではいませんでした。まあ、すべて昔の話ですが。

    小さな真心、寸志や餅代がだんだんと賄賂に変わり始めたのは産業化が進んでからです。政府が企業を作れと資金を供出し、政府の施策に便乗すれば財閥の隊列に合流することができたため、お金の力が威力を発揮し始めたのです。

    寸志は慣行となって、「何か事が起きたら、後処理をよろしく」という保険の性格を帯びるようになりました。教育現場でもお金の封筒は日常となり、子どもが不利益を受けることを事前に防ごうとするための、すさまじい苦闘が繰り広げられるようになりました。

    時流と野合して富を得た人々はお金の力で政策と情報を得て富を増殖しながら、権力はお金と野合する状況に至りました。お金は政治家と政府高官、判事と検事、言論人との人脈を築くのにも効率的に機能します。人脈はその人を権勢門家の周辺人物に作り上げ、能力のある人に見えるようにしてくれます。

    特に特恵の是非が問題になる開発事業に関連する事業は、権力と繋がろうと普段から管理をします。韓国で、お酒の接待やお小遣いを受け取っていた検事が問題になったことがありますが、スポンサーは大体において建設業者でした。政界や判事や検事、記者と仲のいい業者は、彼らに何のお願いをしなくとも、周りの人には強大な人と認識され、ビジネスがスムーズに進むことになります。

    先日、国会を通過した公職者の不正な請託と金品授受を規制する、いわゆる「キム・ヨウンラン法」は、条件なく受け渡しするお金を集中攻撃するものです。では、この法律で賄賂や寸志が消えるでしょうか。

    筆者の個人的な見解からすると少し懐疑的です。在米8軍司令官を務めたジョセフ・フィル将軍が韓国人にモンブランの万年筆セットと革のバッグをプレゼントされたのが問題になって中将から小将に降格された後、強制的に転役させられましたが、その米国にもブラックマネーは存在します。

    キム・ヨウンラン法で百貨店の高価なプレゼントコーナーはしばらく萎縮するかもしれませんが、韓国の施す文化を完全に変えることは容易ではないでしょう。甲乙関係(単語帳を参照)が生き続ける限り、接待文化はさらに陰性化することでしょう。「左手で受け取ったことを右手に知らせてはならぬ」ってね。