記事一覧

ニュース

数字経済

テクノロジー

コラム

ビューティー

カルチャー

エンタメ

旅行

韓国Q&A

新造語辞典

もっと! コリア (Motto! KOREA)
コラム > 人物

チョン・ミョンフンの空席を埋める「若い指揮者」チェ・スヨル

「オーケストラの主人は、指揮者ではない団員」 

    「オーケストラの主人は指揮者ではなく、オーケストラ自身です。これまで私たちが積んできた経験や努力は健在です。ソウル・フィルハーモニー管弦楽団(ソウル市立交響楽団)が決して崩れないということをお見せします」

    12日の午後、ソウル・フィルハーモニー管弦楽団の事務室で合ったソウル・フィルのチェ・スヨル副指揮者(37)は、疲れでいっぱいだった。10年間ソウル・フィルを導いてきたチョン・ミョンフン前芸術監督が突然辞任したことにより非常事態となった楽団の戦列を整備して、当初チョン前監督が引き受けることになっていた大きな公演に備えるために、昼夜を問わず働いた。しかし、疲れた表情の中でも瞳の輝きは断固としていた。

    チョン前監督が不在でも「市響は絶対に崩れることがない」と断言する彼の声には、去る5年間ソウル・フィルと緊密に呼吸を合わせながら得た信頼、また、ソウル・フィルだけの色と実力に対する固い自負心がにじんでいた。

    韓国を代表する若い指揮者である彼は、現代音楽の作曲家である父親の血を受け継ぎ、指揮者の道を歩み始めた。ドイツのドレスデン国立音大を経て、世界的な現代音楽団体である「アンサンブル・モデルン」が主管するアカデミーの指揮者部門に東洋人として初めて選ばれて活動した。2011年からソウル・フィルの現代音楽シリーズの公演に参加した彼は2013年にソウル・フィルの次世代指揮者発掘プログラムで最高点を受けて副指揮者となった。これまでソウル・フィルと多数の公益公演と現代音楽シリーズ、ソウル大林(テリム)倉庫でクラシック公演を行った「倉庫音楽界」、クラシックの演奏に演劇的な要素を加えた「音楽劇場」などを企画して大好評を得ていた。

    「自らの音を持つオーケストラは多くありません。市響は去る10年間、特融の深くて重厚なサウンドを完成させてきました。一流の客員指揮者が来ても、簡単に変えにくい私たちだけのスタイルです」

    実際に、ソウル・フィルはチョン前監督の指導のもと、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、マーラーなどのレパートリーを渉猟しながら、国外ツアーのたびに「経験豊かな深い音の所有者」という評価を得てきた。「楽団にとって、指揮者は過ぎ去っていく存在です。これから誰が新しい芸術監督として来ても、伝統と実力は途絶えることがないでしょう」

    去る9日、チョン前監督の代替指揮者として迎えたドイツの巨匠クリストフ・エッシェンバッハとソウル・フィルのブルックナー交響曲第9番の公演が、心配されたものとは違い大きな好評の中で終えることができたのも、団員たちがそれまで磨いてきた合奏力をチェ副指揮者とリハーサルを行いながら、遺憾なく発揮したおかげだ。

    来る16日~17日、彼がチョン前監督の代わりに指揮するソウル・フィルのマーラー交響曲第6番の公演は、彼にとっていろいろと特別だ。長期公演デビューの舞台である上に、世界的な巨匠でなければ手を付けにくい難曲であり、自身が大切にしているグスタフ・マーラーの作品だからだ。

    「若い指揮者にとってマーラーは常に挑戦したくても機会が与えられない、大きな山のような存在です。テクニック的に変化が多く、全エネルギーを投入しなければ、できません。正直、大変です。はは」

    まずはソウル・フィルの状況を収拾して、揺れのない演奏を続けることが急務だが、彼の中長期課題は多様な経験を積むことだ。「私の目標は世界的な楽団を導くことではなく、市響よりも知られていない楽団を引き受けて、発展させることです。後輩指揮者たちが今、私の位置に着て私が享受している価値ある経験をつんで発展していってほしいです」

    彼は、ロールモデルとして迷うことなく20世紀の伝説的な指揮者、セルジュ・チェリビダッケを挙げた。「音楽的に大変神経質だったが、演奏が終わるたびに彼は団員をまず立たせて、自身は喝采を受けなかった。すべての栄光を団員に返したのです」
  • 毎日経済 オ・シネ記者 | (C) mk.co.kr | 入力 2016-01-13 17:02:07