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「フクスジョ」出身チョン・ウヒョンMPKグループ会長の「カプチル(甲質)」

  • 警備員に暴行を加えた「甲質(カプチル/立場を利用して相手を困らせる行為)」で国民の公憤を買ったMPKグループのチョン・ウヒョン会長は、慶尚南道河東(ハドン)郡の田舎町の出身だ。朝目覚めるとすぐに牛の飼料を作り、薪を絶やさないように山を経巡らなければならなかった。チョン会長は1974年、親戚がやっていた東大門の繊維卸売業のチョンイル商事に入って、1年めで会社を東大門で5本の指に入る店舗に育てた。店舗の真ん中 に「退職金支給店舗」と書いて貼ったことは伝説のように語られる。従業員を召使のように扱った険しい時代に、 「家族経営」の旗を掲げたわけだ。

    チョン会長は 「乙(ウル/弱者)の悲しみ」の分かる人物だった。 MPKグループの社訓は「履物を整理しよう」だ。ピザを配達に行った顧客の家の靴を整理するくらいに真心を込めなければならないということだ。チョン会長は加盟店を 「家族店」と呼び、店に立ち寄って汚れたトイレを自ら掃除する。チョン会長は「成功するには乙になければならない」という一念ひとつで、底辺からグループ会長の座にまで上がった。

    そんな彼が一瞬にして「甲(カプ/強者)の象徴」になったのは皮肉なことだ。夜遅く、原則に基づいて建物のシャッターを下ろした警備員を暴行した疑いで捜査を受ける羽目になった。一歩遅れて「被害を受けた方に心からお詫びを申し上げる」と収拾に乗り出したが、覆水盆に返らずだ。

    大韓航空から蒙古食品や大林産業まで連日、企業の「カプチル」事例がまな板に上がる。「クムスジョ(金のスプーン/裕福な家に生まれたの意)」出身であれば「家庭教育の問題」と片付けて非難するとしても、「フクスジョ(クムスジョの反対)」出身のチョン会長のカプチルは響きが違う。

    昨年、ジョブコリアの調査によると会社員の88.6%は、職場生活でカプチルを受けた経験があると答えた。逆に本人がカプチルを試みたと認めた割合は33.3%に過ぎなかった。カプチルに接する姿勢はこのように二重的だ。これを根拠にチョン会長の行動をかばおうというものではない。当然、チョン会長は適切な処罰を受けなければならない。しかし、これで終わってはいけないということだ。

    毎日経済新聞社は創刊50周年記念として「先進国進入を妨げる心の中の10の敵」企画を開始し、私たちの社会で何が最も問題かという質問を投げかけた。読者が最も緊急な問題として指摘したことは「カプチル現象」だった。昨日のウル(乙)が今日はカプ(甲)になる世界だ。この際、自分の中の悪魔のような「カプチル衝動」も一度振り返る時が来たようだ。
  • オピニオン部=ホン・ジャンウォン記者 | 入力 2016-04-05 17:36:16