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将来の夢が「スター」となった時代、逃しやすいもの

    ドラマ台本の練習のときのことだ。私の横に座っていたある子役出演者が私に声をかけた。

    「大変ではないですか?」

    4部を一度に練習せねばならず、5時間程を台本練習室で過ごした日だった。10歳ほどの子供が耐えるにはとても退屈であろう、そんな質問をしたようだった。可哀想だけれども可愛いなという考えになり優しく声をかけた。

    「とても大変でしょう」質問するや子供が答えた。

    「いえ…、お姉さんの台詞があまりないので、待っているのが大変そうだったので」

    予想外の言葉だった。この子供の目には主人公ではない私が、然程ではない場面を練習するために座っていることがとても可哀想に見えたようだった。くりくりとした目で、堂々と大人びた言葉を話す子供を見て、私の子役時代を思い浮かべた。

    成人俳優で埋まっていた台本練習室は、私にとって夢の空間だった。ひとつのテーブルを囲んで座り、実際に撮影するように泣いて怒って台詞を読みあげる姿は、俳優に対する憧れと尊敬、そして演技に対する熱望を呼び起こした。私は壁側にくっついている補助席に座り、彼らを見守りながら演技を学び馴染みながら真の俳優となる日を夢見ていた。

    その時代には子役を希望する子供が多くなく、偶然に街中でスカウトされたり知人によってオファーされる場合がほとんどだった。放送局の所属となる子供合唱団から子役俳優がしばしば選抜されたりもした。私もまたMBC子供合唱団にて活動する中で、偶然に子供番組に抜擢されて演技を始めることになった。そうしてみると、実際に撮影する過程で演技を学び、実力を積み上げながら俳優としての専門性を作り上げていくことが多かった。

    しかし最近では学院やマネージメントにて先に専門的な教育を受け、すでに実力を兼ね備えた状態でデビューする子役が増加している。子供が主人公をしたり、核心的な役割を担い注目を受ける「子役スター」現象が増えているためだ。幼い頃に多くの人々の関心を受け、過度な待遇を受けるスターの道を味わうことができるという甘い誘惑に溺れ、成功のための事前演技教育システムが必須的コースとなっているようだ。それにより、最近の子役は撮影する中で何かを学ぶというよりも、ただ主人公に対する熱望と一日でも早くスターになりたいという渇望が先立っているようだ。

    私にとって子役生活は初期教育とも同じものだった。子役という経験を通じて、私の才能を探し自ら夢を追いかけて学んでいくようにする生きた教育の場だった。そこは演技に対する真の悩みとともに、俳優という職業に対する真正性で近づかせてくれ礼儀作法、大人への敬意、先輩後輩関係など社会で必要な基本素養と俳優としての資質を学ぶことができる学習の場だった。けれど今の子供たちにとって、子役生活は自分の夢を探し、それを育てる場所ではなく、主人公とスターを夢見させる場所に変化しているようで残念な思いだ。

    「お姉さんは何歳から主人公をしましたか?」一人の子供が主人公を演じることになった他の子供に質問した。「うん、私は6歳のときから」誇らしく答える主人公の子供と、それを羨ましそうに見つめる子供。

    トイレで偶然に聞いた子役同士の会話が忘れられず、私の頭の中に悲しく位置づいている。この子供たちに与えられた現在の子役生活が主人公スターを追う時間ではなく、夢を探すための挑戦の過程であり探した夢を育てていく学びの時間となることを願う。
  • 毎日経済_イ・ヘヨン慶星大学デジタルメディア学部教授・女優 | (C) mk.co.kr | 入力 2016-12-23 16:13:24