コラム > オピニオン
[コラム] 乱世の英雄
- 「乱世の英雄」。朴槿恵（パク・クネ）大統領のファンクラブが、サムスン電子の李在鎔（イ・ジェヨン）副会長に対する令状を棄却した判事を称賛しながらおだてた言葉です。正義のある人物だという称賛も、「パクサモ（朴槿恵を愛する会）」ファンカフェを飾っています。
少し前までパクサモは、令状を棄却したチョ・ウィヨン判事を貶めるために血眼になっていました。「朴槿恵－チェ・スンシル（崔順実）ゲート」を調査している特検チームが申請した拘束令状のほとんどをチョ判事が発行したためでしょう。
チョ・ウィヨン判事を「乱世の英雄」として褒め立てたパクサモファンカフェの掲示板は、「民主党の偽装活動家」や「内乱共犯スパイ」というメッセージで攻めたてられた所ですね。
厳密に言えば、判事が令状を棄却することもできます。必ず拘束してこそ起訴できるわけでもなく、不拘束状態で裁判を受けても、有罪判決を受けて刑務所に行くこともあります。大韓民国の検察が拘束令状を乱発するという非難もあったはずですから、5000万人の国民が見守るなか、拘束令状を棄却したチョ判事の扱い方を勇気ある決断と評価することもできます。
しかしチョ判事が令状実質審査で下した判決をふり返ってみると、財閥の前ではことのほか弱いのではないかという疑問を感じるのも事実です。
チョ・ウィヨン判事は、1750億ウォン台の背任横領容疑でロッテグループの辛東彬（シン・ドンビン）会長に拘束令状が請求された時も、オキシー加湿器殺菌剤被害事件でジョン・リー前代表に対する拘束令状請求にも、フォルクスワーゲンの排出ガス事件でパク・トンフン前社長に対して請求された拘束令状も棄却させました。
令状を棄却しながら掲げた理由は同じです。まだ追及する余地があるということですね。見方を変えれば、追及する余地があるというまさにその理由で拘束令状が請求されることもあります。罪が明らかにあってより深く追及すべきだが、自由にすると証拠を隠滅したり証人と口裏を合わせる余地があり、拘束しなければならないという主張も妥当性があるんです。
サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の場合、「チョン・ユラ氏の噂の芽を摘め」と隠蔽を指示した電子メールが公開されたとかで、法曹界の一部では拘束される可能性が非常に高いと占ったりしました。
サムスン家の後継者に対する拘束令状の棄却で、韓国では法律よりは権力、権力の上の金というパワーゲームの様相がはっきりしたという診断さえ出ています。有限の権力に立ち向かうことはできても、無限の金の威力の前では良心も後回しになることがあるという話ですね。
「法の前に万人の平等」を宣誓した判事が財閥の誘惑に負けたと断定するわけではありませんが、令状を棄却しながら出した理由が鮮明ではなかったこともまた事実です。
インターネットメディア「オーマイニュース」は、拘束令状を棄却する際に法院（裁判所）が提示した理由のうち、法院が明らかにした△賄賂罪成立に対する疎明不足、△事実関係および法理の争いの余地、 △捜査内容の不足などの3つのほか、「被疑者の住居および生活環境を考慮」と「賄賂授受者に対する調査不備」などの2つがさらに含まれていると報道しました。
報道内容が事実ならば、「やはり金の力は強いことは強いんだなあ」という考えが自然に浮かびます。「生活環境を考慮」というのが財閥の息子を監獄に閉じ込めればどう生きていくのかという心配のためであるように見え、「賄賂授受者に対する調査不備」は、けっきょくイ・ジェヨン副会長を刑務所に送る前に朴槿恵大統領を処罰しろという話と考えられているためです。弾劾審判が行われているなかで、大統領は青瓦台から一歩も出る考えがないため、最終的に法院がイ・ジェヨン副会長を赦免してやったことと変わりないでしょう。
もしかしたらイ・ジェヨン副会長が監獄に閉じ込められればサムスンが滅び、サムスンが滅べば韓国経済は大変なことになるという懸念のために、法院は拘束令状を発行するのに躊躇したのかもしれません。そうであればさらに大変なことでしょう。サムスンが滅びても韓国経済には支障がないという自信がない限り、韓国に正義のある新しい秩序を確立することは遼遠のこととなるでしょうから。 - O2CNI_Lim, Chul | 入力 2017-01-22 09:02:00
