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[筆洞情談]最後の陳述

    最後の陳述というと、ソクラテスが最初に思い浮かぶ。プラトンが書いた『ソクラテスの弁明』のためだ。有名な「対話」編のうちのひとつで、ソクラテスの法廷弁論を再現する方式だが、3部で構成された本だ。もちろんソクラテスが処刑された後に書かれた。ソクラテスはどの弁護士よりも絢爛で巧みに自分自身のための弁論を繰り広げるが、実は師匠を話し手にして弟子プラトンの考えが後世に伝えられたものだ。

    自分を告発した者たちを相手に直接弁論を繰り広げたソクラテスの流暢な論理にもかかわらず、裁判は結局、死刑宣告で終わった。

    ソクラテスは「私はあなたがたに服従するよりも、神に服従する。命がある限り、知識を愛して追求することを決してやめない」と堂々と叫んだ。それでも投票に参加した市民は30票差で有罪を決定した。刑を決めるために再び開かれた2審でも陳述を行ったソクラテスは、哀願するどころか自分を国家的な貴人として待遇しなくてはいけないと強弁し、ついには死刑を逃れることができなかった。

    私たちの司法制度にも、刑事公判に最後の陳述がある。刑事訴訟法によると裁判長は、証拠調査と被告人の尋問を終えた後、検事、弁護人、被告人にそれぞれの最終意見を提示する機会を与えなければならない。検事の最終意見は論考と呼び、科刑に関しては求刑と呼ばれる。検事の求刑後、弁護人は最終弁論を、当事者である被告人は最後の陳述をする。

    弁護人と被告人に最終意見陳述の機会を与えずに審理を終結して宣告する場合、判決に影響を及ぼした違法事由として上訴理由に該当する。ただし、被告人が裁判を拒否し、裁判長の許可なしに退廷し、弁護人もこれに同調した場合、防御権の乱用ないしは弁護権の放棄となり、被告人や弁護人の在廷なく審理の判決を下すことができると刑事訴訟法は規定している。

    朴槿恵(パク・クネ)大統領が昨日開かれた憲法裁判所の弾劾審判最終弁論への出席をあきらめて、書面での意見陳述を代わりに行った。自分の罷免を決定する審判なのだから国民に対して説得するものがあるなら、直接出てきて解明もして反駁も行うと期待したが残念だ。最後の陳述を拒否した朴大統領の決定が裁判官にどのような影響を及ぼしたのだろうか。
  • 毎日経済 ユン・ギョンホ論説委員 | (C) mk.co.kr | 入力 2017-03-01 07:00:04