A. | そして、ついには韓国で2010年12月15日に放送されたKBSドラマ『プレジデント』で大統領に就任しました。 そのうえ、妻のハ・ヒラも大統領夫人にキャスティングされました。 今の時代、大統領は天から選ばれるようなポストではありません。競争を勝ち抜いてのし上がるポストです。ドラマでもチェ・スジョンが演じる大統領役には、チャン・ドンゴン、キム・ミョンミン、ハン・ソッキュなどが挙がりましたが、チェ・スジョンが選ばれました。同じく大統領夫人役はチェ・シラ、カン・スヨンが有力候補でしたがハ・ヒラに決まりました。 夫婦を青瓦台(大統領官邸)の主人にしたドラマ『プレジデント』は日本の漫画家、かわぐちかいじの『イーグル(EAGLE)』を韓国の実情に合わせて脚色した作品です。 原作は日系3世のアメリカ人が米大統領選挙に参加してホワイトハウスに入城する内容です。有色人種が米国で大統領になることは可能か?この問いに対する悩みが筋書きになっていますが、オバマ氏が大統領になったことで、かわぐちの予知力が優れているという評価を受けたりもしました。 『プレジデント』は、政治を善悪構図ではなく権力意志の発現と見る点で、評論家から好評を博しました。 チェ・スジョンが主人公を演じた大統領チャン・イルジュンは複雑な人物です。 貧しい農夫の息子として生まれ韓国最高の名門大学、それも法学部に入学したものの学生運動に足を踏み入れたことで実の兄と共に「兄弟スパイ団」事件の濡れ衣を着せれられ、死刑台の露の中で消えていきます。 刑務所から出た後、西ドイツに留学に行き妻である財閥2世のチョ・ソヒと出会い結婚、その後人権弁護士、市民運動家を経て政治家になります。 親盧系コミュニティでは、このドラマを見て軍事政権が捏造した事件で懲役刑を言い渡され、その後ドイツに留学していたユ・シミン(柳時敏)元議員を連想しました。 *亡くなったノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領を追慕する人たち ドラマは初回から大統領を狙撃した事件、収賄など刺激的な素材を盛り込みました。それでも視聴率はわずか6.3%に過ぎませんでした。 低調な視聴率は20話が終わるまで続きました。 低調な視聴率は制作費にも影響を及ぼし、出演料の支払いに差し支えが生じ、助演俳優がドラマから次々に姿を消すというとんでもない出来事も起こりました。主人公の娘として出てくる子役俳優は3話で服を着替えるために部屋に入った後、ドラマが終わるまで姿を見せなかったくらいです。 これだからドラマが成功するはずがありません。 まるで韓国の政界を見ているようです。4月15日の国会議員を選ぶ選挙の年の2020年につぶれてしまったドラマが思い出される理由でもあります。 ドラマの主人公チャン・イルジュンは千辛万苦の末、大統領に当選しますが選挙キャンプに携わった側近もみな離れ大変そうです。 「1年が過ぎれば大統領と言えども出来ることは何もないということを知るようになるだろう」、「企業の協力なくしては何もできないだろう」という声を聞きます。 制作会社ではすでにシノプシス(あらすじ)が完成されたとし、シーズン2の制作を狙っていますが、現在は未だに作品を作れるチャンスが得られるか未知数です。 チェ・スジョンはこの作品の失敗に影響を受けたせいか、翌年放送された大河ドラマ『広開土大王』の出演を固辞したそうです。余談ですが『広開土王』は時代劇史上最悪の駄作と評価されていたため、断ったのは非常に幸いなことでしょう。 |