A. | 武侠小説にある門派を導く僧侶や道士が高強な武術を創案したり、修練のために面壁修養を行う場面がよく登場します。 したがって、武侠小説をマネるならば、身体に絶世神功を備えるためには断食が欠かせないということになります。 しかし、これはむやみにすることではありません。 私の知り合いの教会の牧師は、40日断食を何度も(?)して亡くなってしまいました。だから、健康のため、ダイエットのために行う断食は、何日も食べないということではありません。朝食を抜くとか1週間に1日か2日だけ昼食を抜く断食のことです。 考えてみれば、人類が1日3食の食事をした歴史はそう長くありません。 韓国の場合、朝鮮時代から3食が一般化したという説もありますが、20世紀以降になって定着したと見る見解も有力です。 20世紀以前には、1日3食ではなく朝夕の2回食事をしてました。 昼食はきちんと食事をして食べるものではありませんでした。夕飯を待ちながら虚しくなった心を点火させる程度の簡単な食事を意味しました。宮廷でも昼食は「点心」(チョムシム)と言いながら麺類を中心に簡単に食べていたそうです。(ドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』にも狩りを楽しんだ王と臣下が昼食に麺を食べる場面が出てきます) * 朝(ご飯、食事、アチム、아침)、夕方(チョニョク、저녁)は時間を表す単語が食事の意味まで持つようになりましたが、昼食(チョムシム、점심)は昼食を表す単語が時間の意味を含むようになりました。ある人によっては、1970年代後半に入って、韓国人に1日3食が保障されるようになったという話をします。 朝夕だけの2食が3食に変わったのには食べ物が豊かになったせいもあるでしょうが、生活パターンが変わった影響の方が大きいはずです。 農耕社会では、朝早く起きてまじめに働けば、半日は余裕で過ごせるでしょうが、午後も仕事がたくさんあり、ややもすれば夜勤までしなければならない会社員は、午後に必要なエネルギーの供給も受けるべきでしょう。(農村でも稲作、稲刈りなど人手が総動員され、日が暮れるまで働く時は1日に数回、食事をします) 一日中働く人には朝、昼、夕方のいずれの1食も欠かせません。 おやつを食べない人なら、エネルギーを充電する唯一の瞬間でもあります。 ところが、いまさら断食が登場した理由は食べ過ぎているからです。 食べるためにお金を稼ぐのではなく、お金を稼ぐために食べるコメディアンのキム・ジュニョンも「あまりにも食べ過ぎたと思った時は断食する」と打ち明けました。 間欠断食は体重減少だけでなく、血圧を下げ、がんや糖尿病、心臓疾患を予防する手段にもなると支持する医師も多いです。 この分野の研究者たちが明らかにした断食の効果を紹介しましょう。 - ケトーシス(Ketosis)を誘導。 - インスリン敏感度向上 - 脂肪組織の減少 - 遺伝子発現変化による寿命延長 - 細胞自滅による自浄効果 - 抗酸化効果と細胞内の炎症を減少 - 認知機能向上 - がん細胞及び、がんの前段階細胞の減少 ここまでくると、体に支障をきたすのではなく、体に有益なだけです。 美味しい料理の誘惑にさえ耐えることができればですね。 しかし、人によっては副作用が出たりもします。 オフィスで断食ブームが起き、一緒にマネしていた30代の女性は、胃炎が悪化し血糖値が下がって病院生活を余儀なくされました。成長期の子どもや青少年、妊婦、糖尿病患者、そして摂食障害のある人は避けるべきです。 そして、朝食が記憶力と集中力、学習能力、問題解決能力に役立つと固く信じる人々は「朝食を抜く」という断食に同調するのは難しいでしょう。 余談ですが、禁食と断食は同じようで違う言葉です。 禁食は非自発的な食事制限、簡単に言うとご飯を飢えさせることまで含みますが、断食はあくまでも本意で食を断つ行為です。 |