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[世智園] 大統領の座右の銘


  • [世智園] 大統領の座右の銘
燕巖(ヨナム)朴趾源(パク・チウォン)は、最も目立つ屏風に「因循姑息苟且彌縫」と八字を書いておいて、自分を警戒した。因習を直そうとすることなく、すぐに快適さを追求することが因習姑息、後ろめたい卑怯な方法で仕事を適当に終わらせようとする性向が苟且彌縫だ。

燕巖は、このことにより世界が壊れると、自ら、ここに陥らないように生涯に渡って精進した。『熱河日記』をはじめとする著作が高い完成度を見せることも、このような態度と無関係ではないだろう。このように、座右の銘は一人の人生に大きな影響を与える。

韓国の歴代大統領にも座右の銘があった。李承晩(イ・スンマン)元大統領はクリスチャンらしく「敬天愛人」についてよく言及した。天を敬い人を愛するというこの言葉は、カトリック信者だった金大中(キム・デジュン)元大統領もよく使った言葉だ。金大中元大統領は「敬天愛人」と似たような脈絡で、天のように国民に仕えるという意味の「事民如天」という言葉が好きだった。

朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領は揮毫のひとつに「明知報国」を書いたことがある。すぐれた知恵である「明智」は『礼記』や『墨子』など、東洋の古典によく登場する単語だ。貧しい国を再建するために、すぐれた知恵で志を広めるという抱負が込められている。崔圭夏(チェ・ギュハ)元大統領は、さらに高尚な場所で座右の銘を探した。『明心宝鑑』の正己篇には、「凡戱無益惟勤有功」という言葉が登場するのだが、遊んでばかりでは何の利得もなく、ひたすら勤勉であてこそ功を成すことができるという意味だ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の座右の銘は「自分に厳しく、他人には優しく」だったという。

歴代大統領の中で、自分の座右の銘を最も確実に刻印させた人は、やはり金泳三(キム・ヨンサム)元大統領だ。よく知られているように、彼の座右の銘は、「大道無門」だ。宋の国の慧開僧侶の話に由来したこの言葉は、文脈上「大きな悟りとは、特別な道がない」と解釈することができるが、金元大統領は「大きなことをするひとは寄り道をしない」という意味で使った。どのような状況にあっても、正しい道を行くという覚悟を感じることができる座右の銘だ。

今日の告別式を最後に金泳三元大統領は、歴史上の人物として残ることになる。彼を送りながら、「大道無門」を唱えていた彼の遺志を、しっかりと受け継ごうと叫ぶ人が多い。問題は、原則も恥も投げ捨てて、疎通と和合を度外視して、議会民主主義を殺している器の小さな人ですら、「大道無門」を利用して私益を得ようとする風土だ。
  • 毎日経済 チャン・パクウォン論説委員 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-11-25 17:26:58




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