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[モノの哲学] センサー、進化する技術と退行する体


  • [モノの哲学] センサー、進化する技術と退行する体
私が幼かった頃、この時期になると、必ずニュースに出てくる記事があった。練炭ガス中毒による死亡事故だった。練炭が主な暖房用燃料であり、自家用車が今よりもはるかに少なかったその頃には、交通事故で死亡する人よりも、練炭ガス中毒で死亡する人が多いのではないかと思われるほどだった。

そんな記事を見ながら、いつも疑問に思っていたのは、眠っている人は、なぜ有毒ガスの臭いを嗅ぐことができなかったのかということだった。少しでも良い暮らしをするために、みんなが一生懸命に生きる姿を見ながらも、そうやって死ぬ瞬間の人生を見ると、命は本当に淡いとまで思った。眠っていた人は、絶体絶命の危険にあるものの、その状況を検出せず、むしろ限りなく平和な表情で死の状況を素直に許してしまうのだった。

地震、津波や火山の噴火のような自然災害が襲い掛かる直前、動物が見せる危機感知能力はよく知られている。アリの異常行動、ネズミの群れの大移動、クジラの群れの緊迫した動きなどは有名だ。彼らの感覚は大災害の前にあらかじめそれを検出するのに十分なほど大きく開いている。それに比べると、有毒ガスが体に入ってくるその時間にも笑顔を浮かべて眠っている人間の感覚とは、すべての生物の中で最も鈍い。

「センサー(sensor)」とは、「メディア」を「人間の体の拡張」だと表現したマーシャル・マクルーハンの定義によると、最も「メディアらしい」モノのうちのひとつだ。自然から分離されて人工楽園を作った後、人間は鈍くなった肉体の感覚通路を補強して拡張するために、さまざまな「感覚器・センサー(sensor)」を発明して発展させてきた。ドアの前に立つだけで「シュン」開かれる自動ドアのセンサーもそうだが、ずいぶん前に発明された温度計も風向計も時計も、最終的には人間が置かれた環境の変化を検出するための「センサー」のようなものだ。

最近の世界の産業界の話題であり、未来のホットポテトでもある「モノのインターネット」というものがある。モノが人の介入なしにお互いに情報をやりとりして、自らそれに応じて人間の日常を柔軟に対応させてガイドしてくれる技術システムのことだ。このシステムにおいてのカギは、情報を正確かつ鋭敏に収容する「センサー」の有機体を建設できるかだ。

ところが、私はこのような技術の進化を見て、むしろ皮肉に感じたりもする。これからは寝るときだけではなく目を開いて目を覚ましているときでさえ、危険を感知する能力が人間の肉体から完全に退行することになるという恐れについてだ。
  • 毎日経済 ハム・ドンギュン文学評論家 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-11-06 15:40:50




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