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[コラム] 故郷に向かう道端に掲げられた「親不孝防止法」横断幕


秋夕(チュソク、旧盆)を目前にして道を渡ろうと信号を待っている間、ふと向こうの街路樹にぶら下がっている横断幕が見えた。

「親不孝者防止法で、さらに親孝行します」

野党である新政治連合がつけたものだ。秋夕の場合は親元に帰省するから、このような横断幕を付けるにはもってこいの時期だ。韓国の中年以上、さらに言うと高齢者は保守的な傾向が強く、野党はこれまでずっとセヌリ党に押されてきたが、親孝行を強制する法案で票を得ることができるだろうか。

親孝行を強制する。もちろん法が作られたからと、親不孝者が一日にして孝行者に変わりはしないだろう。まず、新政治民主連合が推進する立法過程を見てみよう。

親不孝防止法だからといって、新しい特別法を作ろうというものではない。民法と刑法の規定を一部改正しようという話だ。現行の民法556条は、子どもに財産を譲った後に、犯罪行為があったり扶養義務を履行していない場合は、取り消すことができると規定している。贈与の解除は、このような事実を知ってから6カ月以内にしなくてはいけない。

さらに、民法558条には、既に履行した贈与については適用されないという条項がある。 556条を変えて、子が親をないがしろにした場合にも与えた財産を取り戻すことができようにして、期間も1年に延ばすというのが親不孝防止法のポイントだ。556条と衝突していた558条の項目を削除するという内容も含まれている。

ここへ、さらに尊属暴行に対する刑法206条3項を改正することも、親不孝を防止するのに力になると見ている。現行法では、親を暴行した場合でも、子が泣いて許してくれと懇願するせいで親がしぶしぶ処罰しないように要求するため、罪を問うことができないように規定している。これをなおして被害者の意思とは関係なく、尊属暴行を捜査して処罰するようにするというのだ。

ここまで来れば親不孝防止法の内容が何であるかは分かるだろう、この法律が作られた場合、親不孝者、いや、親の財産のみを狙う天下の悪い奴は少し減るかもしれない。その可能性が少しありそうな気がする。しかし、その後の部分は、ただの願いに過ぎない。

親と子の間で行われる財産戦いが減ったからといって、親孝行する子が増えるのではないからだ。

このような法は、韓国で初めて作られるものではない。すでにドイツや、オーストリアなどでは、親が子供に財産を譲ったものの、扶養を拒絶した場合、撤回することができるようにする法律条項を持っている。だからといって親不孝を防ぐ法の規定ができた韓国が先進国の仲間入りをしたと見る事は難しい。

以前であれば、このような法規定は、韓国では想像すらできないものだった。親孝行を強制するだなんて。資本主義が作った醜い社会悪を資本主義式の法条項で防ぐことができると信じるべきだろうか。お金が最高の価値として浮上し、このような社会に適応できず、親しい人である子どもや親に暴力を振るう行動を法で抑制することができるのだろうか。

道を渡りながら横断幕を見て、韓国が経済成長にもがいていた初期のころ、故郷に背を向けてソウルに上京し、縫製工場の労働者や市内バスの案内嬢をしていた娘たちが秋夕に親と弟へのプレゼントを胸に抱いて列車に乗っていた姿が思い浮かぶ。親兄弟に会えるという期待だけで胸が暖かくなっていた時代の姿だった。
  • CNI_Lim, Chul
  • 入力 2015-09-28 08:00:00




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