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[コラム] 王権を巡って血しぶきを呼んだ英祖

認知症に関する2つの話 

朝鮮22代の王「正祖」の一代記を扱ったMBS時代劇『イ・サン(李祘)』に認知症にまつわる部分が出てくる。

世孫の李祘が王家の家族と一緒に温泉に旅立った後、空になった宮殿で居眠りをしていた英祖は、中宮殿を訪れて貞純王后に優しい声で話しかける。

「久しぶりに談笑するために来たんだ」

王妃は瞬間、当惑する。王妃の妹が世孫を殺そうと爆薬事件を起こしたため流刑され、王妃も中宮殿の外に一歩も出ないようにという罰を受けたためだ。英祖に再び対面した王妃は、次の日に嬉しそうな顔で王を拝謁しに大殿に行って、叱られる。

中宮殿の外に一歩も出ないという命令を破ったとして、「どんな言葉も聞くことはない、すぐに退け」という言葉を聞いた。王妃は英祖が認知症にかかったと確信して、これを利用して世孫を追い出す陰謀を計る。

朝鮮の歴代王のうち、在位期間が最も長い英祖が認知症にかかったということは、いくつかの野史にのみ出てくるだけで、正史には記録がない。王に対して不敬な言葉を述べるのが難しい点を勘案するべきだろう。

急増する認知症患者により苦痛を受ける世帯が増えているが、国の指導者や権力者の認知症は、一家庭の不幸にとどまらない。認知症患者は、考えや意思表現が合理的でないとの理由で、法的な行為に制約を受ける。

ロッテ家の兄弟が父親の健康状態を巡って「そうだ」、「違う」と対抗しているのも、このような理由からだろう。

米国の法廷スリラー小説の大家、ジョン・グレシャム(John Grisham)が書いた、継承を巡る富豪の精神的な健康を素材にした小説は読みごたえがある。『テスタメント(The Testament)』という作品だ。

110億ドルという、ものすごい財産を持つ老人が離婚した3人の妻と7人の子供を呼び集める。彼らに雇われた精神科医の精神鑑定により問題がないと診断された後、手書きの遺書を弁護士に預けて、14階から飛び降り自殺をする。

一か月後に公開された遺言状には決別した婦人と子供たちに自殺した当日までの借金を清算する資金を与え、残りはそれまで世の中に公開されていなかった娘に完全に譲渡するという内容だ。

医学部を卒業して、宣教師のレッスンを受けた後、アマゾンの奥地で宣教活動をしている娘は、財産とは一線を引いた人だ。とにかく彼女に巨大な相続財産が行くことを知らるために弁護士が探検を始め、元妻と子供たちは訴訟の準備をするという内容だ。

ここで注目すべき部分は、死の直前に作成された遺言状が法律的に効力があるのか​​ということだ。高齢者は、子供たちを困らせたかったのか、これについて徹底した準備を終えた状態だった。

このような準備がされていない場合、財産相続は泥試合の様相で展開さ​​れるしかない。忘れっぽい高齢者は、子供たちの争いについても「一体、なぜ争っているのだろうか」と理由がわからないかもしれない。

最近、会う中年配の人は、「ボケないうちに、この世を去る準備を終えなければならない」と話す。しかし、いつ認知症になるかは誰にもわからない、かといって、あまりにも早く子供に財産を分けて、悪人たちに全部食いつぶされてしまっては、それはそれで頭の痛いことだ。

とにかく認知症にかからないようにするのが、上策だ。
  • O2CNI Lim, Chul
  • 入力 2015-08-10 09:00:00




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