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[世智園] スーパー・スプレッダー


  • [世智園] スーパー・スプレッダー
2003年2月21日、香港メトロパークホテルの911号室に宿泊したしたゲストが、深刻な高熱と咳に悩まされていた。中国広東省から来た彼は、このホテルでたった一晩過ごしただだったが、彼のウイルスは少なくとも16人のゲストに感染し、その16人はアジア、ヨーロッパ、アメリカまで、32か国の数千人の感染者を量産した。彼がかかっていた病気は、さましくサース(SARS、重症急性呼吸器症候群)だった。

3か月が過ぎた後に調査官はメトロパークホテルの911号室の近くにあるカーペットから、SARSウイルスの遺伝子情報を見つけた。問題のゲストが咳やくしゃみ、あるいは嘔吐する過程で残した可能性が高い情報だった。911号室のゲストは、現代史で最も悪名高い「スーパー・スプレッダー(Super spreader、平均的な患者より感染を広める力の強い患者)」として記録された。

中国と香港でSARSが猖獗していた当時、「淘大花園(アモイガーデン)」という香港のアパート(高層住宅団地)では、下痢に苦しんだ一人の感染者が同じ団地内の住民321人を感染させて、そのうち、42人が死亡した。感染の震源地は、彼が一人で使っていたトイレだったが、トイレの換気システムと配管、窓などを通じてウイルスが広がったものと推定される。

米国ウェイクフォレスト大学の伝染病学者ワーナー・ビショフ(Werner Bischof)博士によると、ウイルスに感染したすべての患者が同じ伝播力を持つのではなく、特にたくさんのウイルスをまき散らす感染者がいるという。通常2次感染者が8人以上の場合に、スーパー・スプレッダーとして規定するが、インフルエンザ感染症の場合、80%がスーパー・スプレッダーによって広まるという。

歴史上最も有名なスーパー・スプレッダーは、別名「腸チフスのメアリー(Typhoid Mary)」と呼ばれたメアリー・マローン(Mary Mallon)だった。アイルランド系アメリカ人である彼女は、1906年にニューヨーク近郊の裕福な家庭に調理師として就職し、家族全体を腸チフスに感染させた。疫学調査の結果、腸チフスの保菌者だったマリーは、10年間で8つの家庭を転々として、22人に腸チフスを移し、そのうちの1人を死亡させたことが明らかになった。ニューヨーク市の保健当局によって隔離収容されていた彼女は、調理師の仕事をしないという条件で釈放されたが、1915年から再びブラウン夫人(Mary Brown)という偽名でマンハッタンのある病院に調理師として就職した。その結果、25人の医師・看護師・職員が腸チフスに感染し、2人は死亡した。

韓国で拡散しているマーズ (MEARS、中東呼吸器症候群)でも有力な「スーパー・スプレッダー」が見つかった。中東諸国を旅した後、最初に発症したAさん(68・男)だ。彼は、自分と3次感染者の3人を除いても、なんと26人にマーズを伝播した。

世界最高のマーズ研究機関であるオランダのエラスムス医療センター(Erasmus Medical Center)側は、26人を感染させたマーズのスーパー・スプレッダーは非常に異例だとし、このウイルスがすでに空気感染性の亜種へと進化した可能性があると明らかにした。

歴史上最も慌てふためいて右往左往する無能な政府が昨年のセウォル号事態に続き、今回は史上で最も危険な変種ウイルスと出くわしたわけだから、これからが本当に心配だ。
  • 毎日経済_チェ・ギョンオク論説委員 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-06-03 17:24:07




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