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イ・ビョンホン長編インタビュー「ホンモノの面白い映画をやりたい」


  • イ・ビョンホン長編インタビュー「ホンモノの面白い映画をやりたい」
俳優イ・ビョンホン(李炳憲、44)。大韓民国でイ・ビョンホンとして生きるということはどんなことなのか。

ローラーコースターにもこんなジェットコースターはない。デビュー後すぐにトップをキメてアジアを網羅する韓流スターになり、遅れることなくハリウッドに飛んでいった。

20代は当代最高の青春スターとして華やかな時代を飾り、30代に「スター」と「俳優」という両翼をつけてふわりふわりと飛んだ。「40代のイ・ビョンホン」は俳優として頂点を刻んだようだ。どんな作品、どんなキャラクターを任せても「期待以上」の演技が出たし、地雷を踏むたびに「演技」は彼を救い出す救世主だった。多事多難な俳優人生だが、「演技一つで終わらせる奴」がイ・ビョンホンだった。

ところで、ここ数年のあいだに起きたスキャンダルはおそろしくて執拗だった。なおさら演技にさらにしがみついて、すべてのエネルギーを注ぎ込んだ。 18日に封切りする『インサイダーたち』(オ・ミノ監督)は「俳優イ・ビョンホン」を再び刻印する映画だ。劇中で大企業の会長と政治家に利用されて廃人になった政治ギャング「アン・サング」役を引き受けてスクリーンを圧倒する。彼の演技はすさまじくて魅惑的だ。片手でがつがつとラーメンを食べる演技でさえ名場面にしたイ・ビョンホンだ。

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---シナリオを見て、わずかの時間で出演を決定した?

「単純な理由だ。まずは見ることが楽しみだ。そして、『私がこれを演ることになりそうだ』という感じがする映画があるが、二つがそろってきた」。

--- 完成した映画に対する満足度は?

「心配していたことに比べて(笑)。実際にけっこう悩んだ。『わ~これは大変だ』だったよ。何の話をしているのか分からなかったし、退屈だという思いもあった。ユーモアコードも意図してようにはいかせなかったし、惜しいことが多かった。当初のバージョンは3時間40分だった。関係者が『それはたいへん良い』という。冗談みたいに1・2編に分けようとしたが、2時間に減らさなければ、問題が多くなる。ぶつぶつ切ると説明にならない部分もある。もったいないシーンが多い」。

--- 全羅道方言の演技は大変だった?

「英語よりかんたんだと思って始めたが...たいへんだった(笑)。全羅道が故郷の演劇俳優の方といっしょに、リーディングしながら学んだ。話をするときも冗談のように方言を使ってみたりしたし、スタッフの中に全羅道の者がいてセリフのたびに彼の前で一回ずつためした。 100%完璧にはできないが、少なくとも感情に沿うには妨害しない程度にしなければならないと思った」。

--- けっこう編集されたとか?

「だから、スンウさんや私と『なんでこんなにみっともない』という声さえ聞かなかったらと。ところが『アニキ、(思ったより)おもしろい』と言っていた」。

--- 俳優たちの演技はその華麗な美術装置よりも流麗だった?

「現実を反映している映画だ。美術も現実的だ。社会性が濃くて、社会不正を告発する類の映画がある瞬間から多くなった。流行のようだが、良いことではない。それだけ社会が腐って行っているのだから。 (このような映画には)初めて出演してみた。方言も初めてだし、会う俳優たちもイ・ギョンヨン先輩をのぞいて初めてだった。たったワンシーンだけ出る脇役の方までも、『どうすればあのように演技できるのか』とびっくりした。刺激された」。

--- 当初「アン・サング」よりも「イ・ガンヒ」(ペク・ユンシク)により魅力を感じたというが?

「3人のキャラクターの中で一番おもしろくないと思った。シナリオにはユーモアコードもなく、ただ映画狂の政治ヤクザだ。文字通りチンピラ。(笑)イ・ガンヒは魅力的だった。 『ノムノムノム』の時もなぜか良い奴はさらに良く見えて、変な奴がもっと良く見えた(笑)」。

--- おもしろくなかったアン・サングが、最も華麗なキャラクターとして誕生した。

「現実的な話をじめじめと残酷に、赤裸々にさらけ出した映画だ。観客は見て疲れるかもしれない。何か一つでもあまり離れないキャラクターがいてこそひと息入れることのできる地点がある。 アン・サングのキャラクターに色をかぶせてみようとした。監督が一つだけお願いした。腕を切られて初めて登場するとき、アン・サングの姿から強い感じがあったらいいなと。それとともに、スーッと見せてくれたのが『ケープフェア(Cape Fear、1991)』のロバート・デ・ニーロの写真だった。だから似たような頭になった(笑)」。

--- ウィッグだった?

「後ろにだけ付けるかつら。半かつら」。

--- 残酷なヤクザだが、人間味とユーモアもあった。

「そもそも単純なキャラクターだ。そこに何か、ネジが一つ抜けたような? 『キツネのようなクマ』というセリフのように、キャラクターをかぶせてみようと思った。ほとんどは現場でアドリブによって新しいアイデアを出し、状況を作って…だった。私が想像していたキャラクターだけを考えていた」。

--- 「アン・サング」の色を最も克明に見せてくれたシーンを挙げるならば?

「監督も好きだと言っていたが、ほらハンマーを手に叩きつけるシーンがあるじゃない。バンから降りて、首に枕をはさんで出てくるシーン。その場面がほんとうにアン・サングのすべてが含まれている。自分が持っているものをすべて享受するような。映画狂に加えてファッション好きで…伊達な性向もある。その首枕は私の車から持ってきたものだ(笑)。あんなに残酷なことをしつつも、車で悠々と寝る、なぜならこれが生活だから。彼にはそれが日常。そしてハンマーを手にするとなにげなく歌を口ずさみながら、しかし近付く時は本当に恐ろしい表情に急変するような人間。残忍にぶっ殺すと思ったら、それができなかったというようなウィットや余裕...それが本当のアン・サングだ」。

--- 感情調節の難しさはなかった?

「それは悩みもした。 『悪魔を見た』のスヒョン役も、その復讐心ひとつで最初から最後まで映画を押していく。ゆううつでほんとうに復讐に満ちたそのような目つき、無表情で一貫した。ふつう復讐映画はほとんどそうだ。ところが、この人物(アン・サング)は、復讐が最大の目標だけれど、その過程の中にはありのままの人生が見える。笑ったり冗談も言って、楽しそうにも見えたり。そんな点が果たして観客に説得力を持つかと思った。どうかすると、それはもっと現実的じゃないか?願っている復讐が一年後に行われれば、その時間のあいだは『復讐!』だけでいるわけじゃない。生きなければならないから。だから、そう自分自身を説得した。『そうさ、人というのは大きな目標を置いても、それがすぐさま明日に行う復讐でない限り、自分の人生を生きていくことがより現実的じゃないか』と。このようなことから、『悪魔を見た』は間違った演技みたいだ。ハハハ!」。

--- イ・ビョンホンが選ぶ名シーンは?

「ところが、なくなった(笑)。最初のシーンだ。記者会見直前に、記者の一人をホテルの部屋に呼んで単独インタビューする場面だけど、ノワール物の『ゴッドファーザー』のような感じだ。薄暗いところで顔をクローズアップしておいて、一人で話し続けている。 『「チャイナタウン」を見たか?俺は土曜名画の虫だった』と言いながら映画の話をずっとする。そうするうちにある瞬間、『俺はこの手が好きだ』と言いながら義手を回す。『俺はこれで飯も食べくそも拭く』と言いながら。自分がなぜ復讐しようとしているのか、映画になぞらえて話す。どうかすると形式にのっとった場面で、どうかすると映画的な効果があふれる場面だ。惜しい」。

--- ここまで来れば編集の思い出だ。惜しいシーンはもうない?

「精神病院のシーンもあった(笑)。手を切られるやいなや、部下たちが精神病院に入れたのだ。秘密を口外しないように精神病に押し込めた。後で3時間40分のディレクターズカットが出ればすべて見ることができるだろうが、ビジュアル的に面白い。手を切られたという事実を忘れて頭をかこうと右手を上げる。ふと感じるフラストレーションや虚しさ、そんなものが一回ずつでも見えたらと思う」。

--- 屋上でラーメンを食べるシーンも印象的だった。新しいモクバン(グルメ放送)を見るようだった。

「最初はわびしいシーンとして考えていた。自分がときどきそうだから。ラーメンを食べて熱いと吐き出してしまう。そしてあふれでたものうつわに入れてまた食う。あ、このシーンはウケると思った。一人でかなり笑った。あまりにも笑って、5回ほどNGを出した。ところが不思議なことに現場のスタッフが笑わない。きまりが悪かったが、やはり試写会の時も笑わなかった(笑)」。

--- 代わりに全面ガラスのトイレシーンであてた。

「監督に『デザインするときガラス張りにしてください』と言った。ところがいざ撮影現場に行くと半分は壁で、上だけがガラス張り。監督が美術チームと再び話をして再作業した。全面ガラスをさがすだけでも4時間かかると言っていた。負担になった(笑)。『何としてでも面白くしなければ』と言いながら撮った場面だ(笑)」。

--- チョ・スンウとの最初の作業だった。

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「彼はふだん言葉遣いが少しシニカルだ。ジョークもよく言うし。冗談のように『僕をちょっと弟扱いする』という。そんな彼が『僕はアニキのせいでこの作品に出た』と言うから信じられなかった。その背後にどんな冗談があるのか。恐ろしいし(笑)。作業しながら『ほんとうに演技のうまいやつだ』と思った。私は『インサイダーたち』はスンウの映画だと思う。とても良かった。映画を通じて良い友達ができてうれしい。十日に一度はビールを買ってうちに遊びに来る。今や友人と同じだ。昨日もたくさんビールを持ってきたよ。遅くまで二人で酒をのみ続けて... 」。

--- 俳優チョ・スンウに発見した魅力は何か。

「ヘビが塀をはって越えるような上手さがある。自分のものにうまく作り出す。いくつかのセリフをかみ砕いて吐き出すときに、けっきょく自己化していてぴったりくる。ふてぶてしさというか」。

--- チョ・スンウ、ミュージカルは見た?

「じつはミュージカルはよく知らない。映画の中で縁を結んで『ヘドウィグ』を見た。おおいに驚いた。見るたびに『あいつはふつうじゃないな』だ。なぜチョ・スンウなのか分かったよ」。

--- 「イ・ガンヒ」役のペク・ユンシクとぶつかる場面も多かった。

「年輪と内面の力はしかたなかったよ。どのようにあんなにエネルギーがばんばん来るのか、そのリアクションというのはすべて想像を外れた。ペク・ユンシク先輩の微妙なニュアンス、セリフ法、知ることのできない呼吸と笑い。戸惑うほどに驚いた」。

--- 『ミスコンダクト』の撮影はうまく終えた?

「『インサイダーたち』を終わらせて撮影したのが『Beyond Deceit』だったが、タイトルが『ミスコンダクト』に変わった。低予算映画だ。なるだけはやく撮った。それが終わって『荒野の7人』にキャスティングされ、野原しかない非常に湿度が高くて暑い地域で苦労した。ほとんど水の中を歩くような感じだった。肉体的に言えば『甘い人生』が最初で、これが2番目にたいへん苦労した作品だ。『ノムノムノム』のような場合には、馬に乗るアクションが多くて大変だったが、少なくともそこは暑いけど乾燥していた(笑)」。

--- ハリウッド活動を振り返ってみると。

「大きな意味がある。 『ターミネーター』は中学校の時、あれほど画期的なアクション映画があったのだろうかと思うほどたいへんな映画だった。ものすごいレジェンド作品だった。さらに液体金属T-1000のキャラクターは、最もインパクトのあったキャラクターだ。学校のとき私のニックネームがターミネーターだった。腕相撲をしたら力が一番強いから、ターミネーターだった。私がターミネーターだったから、『ターミネーター』に出演するのは感慨深かった。 『ミスコンダクト』も私の役割が何であれ、どんな映画でも関係なかった。アル・パチーノ、アンソニー・ホプキンスが出てくるともう終わるわけだ。アル・パチーノは私のアイドルで、私の人生映画で挙げる映画のひとつが『スカーフェイス(Scarface、1983)』だ。その俳優と一緒に演技するということだけでも、さすがに一生にこんな幸運を持つことができるだろうかと思った」。

--- すべてを下にするコミック物はどうなのか。

「ホンモノの面白い映画をやりたい。コミックコードも主観的なもののようだ。苦笑いさせるコメディなのに、人々はとてもおしゃれに笑わせたとし、洗練されたユーモアみたいだが『それはスラップスティックじゃないか』と言う。ポイントがお互いにみんな異なっている。洗練されたシチュエーションの、面白いコメディたらぜひやってみたい。単に笑わせようと努力しているコメディなら別」。

--- スターとして享受したことも多いが、個人的にはたいへんな時間も多かった。持ちこたえることができた力は何か。

「持ちこたえなかったらどうします?持ちこたえられないなら死ぬつもり?例えば、死ぬこともあれば生きることもある。ところで、その中で悩んでいずれかを51%の考えで選択をしたとしよう。かといって51%ぶんだけその選択した方で行動するよりも、51%の理由で選択したが頑張らなくてはならない。何のことなのか、理解できるか分からないな」。
  • スタートゥデイ_チン・ヒャンヒ記者
  • 入力 2015-11-18 09:04:28




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