A. | しかし、世間を見ているとグレシャムの法則が通用するような部分もあり寂しくなります。俗にいう「声の大きい人が勝つ」ということがまるで真理のように聞こえてくるからです。 とんでもなく大きな声で悪口を言うおばさんたちに口喧嘩で勝つ人はほとんどいません。口論の場に偶然通りかかったまともな教授が割り込んで丁寧に話をしても、頑なに悪口ばかりを言うおばさんには最終的に放棄して背を向けることでしょう。 インターネットでも人の世の中だから似ています。情報の海のインターネットの機能障害について話すので、インターネットがもたらした巨大な純機能を蔑視したと悪口を言わないでください。 例えば、このような場合を考えてみましょう。インターネットコミュニティに文章を書いたり、コメントを書き込むユーザーのうち10人ほどが幼稚な文章を書いたとします。実際に人を賞賛しようが誹謗しようが根拠もなく自分の主張だけを並べる人がその程度はいると思います。 ところが、このようなごく少数のコメントが及ぼす影響が凄まじいのです。とある女性芸能人がスキャンダルに巻き込まれた後、根拠のないデマや悪意のあるコメントに悩み数週間隠居生活をしました。その後、街に出てみたところ、人が自分に目もくれないことを発見したのです。 しかし、同じ状況になれば芸能人、政治家、一般人を問わずに絶望的な気持ちを味わうことでしょう。 数年前のデータではありますが、韓国最大のポータルサイトであるNaverを訪問した人の中でコメントを書き込む人は0.84%に過ぎないそうです。月平均70件以上の書き込みをした人は、その中で2.8%の1万人に過ぎませんが、すべてのコメントの中でその人たちのコメントが占める割合は半分くらいだそうです。 インターネットのサイト上のコメントはこのような活動的なユーザーによって行われているということです。ほとんどの韓国人は、インターネットを利用しますが、生活するのに忙しくてコメントを投稿する余裕も情熱もありません。問題は、情熱的な参加者の中で有名政治家やスターを無条件的に敵視する人がかなりいるということです。客観的に見れば少数なのですが、積極的にコメントを書くユーザーが少ないので無視できないほどの比重を持つことになります。 政治家や芸能人が誤ちを犯したならば、もちろん非難を受けて当然です。しかし、非難される行為をしていなくても誹謗中傷は出てきます。 歌手ペク・ジヨンは流産という苦しみを経験しましたが、悪質なコメンターたちは流産についてさえ冗談の対象としました。家もなく借金をしてまでも寄付をするキム・ジャンフンがKBSから賞を受けたとき、歌手が歌ではなく善行により賞を受けたという皮肉がインターネット上に溢れました。おそらく彼らはキム・ジャンフンのコンサートのステージを見たことがないのでしょう。キム・ジャンフンの魅力が放送よりライブステージに出てくるという事実を知っているはずがありません。そもそも彼らはキム・ジャンフンが嫌いなのですから。 寄付天使として有名な女優ムン・グニョンは6年間に渡って社会福祉機関に8億5000万ウォンを寄付した事実が知られた後、称賛より嘲笑するコメントに苦しまなければなりませんでした。彼女の母方の祖父が転向していない左翼勢力で、大叔父は5.18光州民主化運動当時、銃で撃たれ死んだという事実があったからです。ムン・グニョンの善行事実が知られた後、「光州左翼のムン・グニョンがちょっとのお金で恩着せをしている」、 「血統から共産主義者」、「パルチザンを美化させたい意図的な行為だ」と露骨な非難の書き込みが殺到しました。ここには、論客という年配の知識層も一役かいました。 そんなこんな事情を見ると韓国のコメント文化はオフラインと同様に朝鮮半島の悲劇的な分断状況に影響を受けているわけです。左か右かの派閥争いが明らかに韓国社会に存在していて、このような両極端な考え方がコメント文化にも投影されています。 ここで「パがカを作る(単語帳参照)」という韓国のユニークなインターネット現象もコメント文化の一つの軸を成しています。この言葉は、過激なファンや信奉者のせいでアンチファンが生じるという意味です。自分が好きなスターを無条件に庇うファンを批判するあまり、そのスターまでも良いイメージではなくなるのです。ともすると、自分が大切にしているスターをさなる窮地に追い込む行為なのですが、そのような深い考えを持つ暇がないのです。「なぜ私のオッパ(お兄さん)を憎むのか」と襲い掛かる小さな女の子を見て、ほとんどの大人は無視するでしょうが、その姿に我慢ができない人もいるのです。 韓国コメント文化を理解するためのキーワードをご紹介します。 ・コメントジャーナリズム:政治・社会問題について自分の意見を勝手に吐き出す行為。匿名性が保証されているオンラインの特性上、以前より表現の自由を享受する人がはるかに多くなり、読者が生産まで担当するプロシューマー(Prosumer)の段階に入るのに多大な貢献をした。しかし、インターネットのコミュニティーが悪口と誹謗で汚れる副作用を生んだ。 ・リップル族(Reply族、コメント族):学校や職場から帰宅した後、サイトを巡ってリップル(コメント)をする人。習慣的にリップルを書くリップル族の反対側には、自分の投稿記事や映像のリップルがないと不安に思う「リップル症候群」に苦しむ人がいる。機知に富んだリップル、奇抜なアイデアを含んだリップルを見ようとオンラインコミュニティを訪れる人が増えたため、コミュニティ活性化のために他人の文章にリップルをつけるアルバイトもできた。 ・アクプル(悪 + Reply):他人の投稿を誹謗したり、うわさ話しをする内容のコメント。このような文を書く人をアクプルラーという。別の言葉では悪質なリップル族、インターネットフーリガン、またはネチズンとフーリガンを合わせてネティガンとも呼ばれている。 ・ヨクチズン(辱+ Netizen):掲示板に載せられたすべての文章に対して悪口を言うネチズン。 ・イルガンベスト:略してイルベ。悪口が横行していることでは最も定評が高いサイト。 ・サイバー侮辱罪(Cyber侮辱罪):俳優チェ・ジンシルが誹謗中傷に苦しめられたあまり自殺したと知られて、サイバー空間で人を侮辱する行為を処罰するために推進された法律。別名チェ・ジンシル法と呼ばれる。しかし、現行法でもいくらでも規制が可能であり、表現の自由を抑圧する可能性が大きいうえ、権力者をはじめとする少数の既得権者のための法律として悪用される可能性が大きいという反論が提起されて制定までは至らなかった。 |