旅行バッグ市場の72％を占めるサムソナイト

旅行バッグ市場の72％を占めるサムソナイト

「トランクカバーできれい好きの韓国顧客を魅了しました」

「外国では全く売れないのに、韓国でのみよく売れているものがあります。トランクカバーです。一年に数十万枚が売れます。雑に扱うのがトランクなのに、なぜカバーなのかと本社は理解できません。しかし、顧客が望めば、私たちは提供します」

韓国で旅行トランクやバッグの代名詞であるサムソナイト（Samsonite）。最近、旅行バッグのブランドが洪水のようにあふれ出ているが、その中でもサムソナイトは韓国市場1位を強硬に守っている。

2009年に453億ウォンだった年間売上高は、3年ぶりの2012年に3倍を超える1382億ウォンに成長した。昨年は2000億ウォンを突破した。だからといって、押し寄せる「ヨウカー（中国人観光客）」の影響を多く受けたわけでもない。免税店でのヨウカーの割合は30％程度だ。それにもかかわらず、サムソナイトはスーツケース市場の72％を占めている。

サムソナイトコリア株式会社のチェ・ウォンシク支社長（47）は、秘訣は「グローカル化（glocalization）」にあるとした。スーツケースは気軽に「雑に取り回すべき（？）」という外国人とは異なり、韓国の人々はトランクもきれいに管理したがる。このようなニーズを把握したサムソナイトは、トランクカバーを別途製作して販売した。

チェ社長は最近、毎日経済とのインタビューで、「本社は理解していなかったが、顧客の要求があって作り、数十万枚を売った」とし「グローバル企業が『私たちは外国で売れているブランド』だとアピールすると、韓国では百戦百敗する」とした。彼が語る韓国の消費者は、ブランドだからと無条件追いかける1段階とブランドの知識を積む2段階、ブランドを介して自分自身を差別化する3段階を経て、「感情のつながり」を作ってくれるブランドを好む4段階に入った。だから、消費者の感性に触れて、満足させなければならないというのだ。

韓国支社特有の「グローカル化」戦略が光ったのは、「サムソナイトレッド（Samsonite RED）」のローンチだ。サムソナイトレッドは、2010年に米国本社ではなく、韓国で生まれたブランドだ。「キム・スヒョンのバックパック」として有名になり、若い男性会社員の間で旋風的な人気を集めている。

サムソナイトレッド専属デザイナーも韓国人で、韓国に常駐してデザインをしている。チェ支社長は、「韓国で誕生したブランドが中国を越えてアジア全域に拡大していて誇らしい」としながら、「西洋人と違う体躯、違うスタイルを持つアジアの男性をターゲットに徹底的にグローカル化をしたことが成功の秘訣」と述べた。
実は以前にもこのような試みが行われていたものの、スマートフォンの普及に伴って男性の間で両手が自由になるバックパックへの欲求が発生する時期をよく読み取ったことも成功要因として見た。チェ支社長は「韓国の全国民がスマートフォンを使用するようになりながら、バックパックが受け入れられるだろうと思ったし、またスーツからビジネスカジュアルへと通勤の服装が変わり、このような傾向がより強くなると判断したことがうまくかみ合った」と付け加えた。

チェ支社長は取るに足らないように見える小さな部分にも神経をとがらせる。イブサンローラン、ボビイブラウンなどの高級ブランドを中心に身を置いていた彼は、サムソナイトにきてから学んだことが多いという。

彼は「韓国市場でサムソナイトの次に旅行用のカバンを売るブランドは他でもない低価格ブランドのピエール・カルダン（Pierre Cardin）」だとし、「これは、私たちが考えることのできなかった市場であり、その需要があるということだ」と打ち明けた。続いて「私たちが、アメリカン・ツーリスターからサムソナイト、ハートマンまで、様々なブランドを保有して流通チャネルを差別化する戦略を取っているのも、最終的に私たちには見えない顧客までつかむという心から出てきたもの」と説明した。

サムソナイトは、様々な顧客の心をつかむために20代と30代の女性をターゲットにしたトランクブランド「リパウト（Lipault）」を立ち上げ、来年初めにはアウトドアバックパックブランド「グレゴリー（Gregory）」をラインナップに追加する予定だ。
毎日経済パク・インヘ記者 | (C) mk.co.kr | 入力 2015-08-16 17:12:29