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ドキュメンタリー映画「君よ、その川を渡らないで」累積観客数30万人突破

76年添い遂げた老夫婦の日常…小さいながらも強力な響き 

    76年間、お互いを大切にしてきた老夫婦の愛が韓国の劇場街に奇跡を起こしている。商業映画製作費の10分の1にも満たない額(1億2000万ウォン)で作られた素朴なドキュメンタリーが錚々たるトップスターが出てくる国内外の映画を抜いて興行の道を大きく開いた。韓国独立映画(自主映画)の中で最短期間に累積観客30万人を突破したドキュメンタリー、『君よ、その川を渡らないで』だ。

    10日、映画振興委員会統合電算網によると、先月27日に公開された『君よ、その川を渡らないで』は公開13日で累積観客数30万人を突破した。 2009年に韓国独立映画史上最大のスコア(293万人)を記録した『牛の鈴音』よりも速い。『君よ、その川を渡らないで』は公開初日のスクリーン数は186だったが、現在では301スクリーンに拡大した。去る8日にイ・ジョンジェとシン・ハギュン主演『ビッグマッチ』を押し、週末(7日)には、一日5万人を超える観客を集めるなど、尋常ではない興行傾向を見せている。この映画にはスター俳優が出演せず、壮大な叙事詩もない。江原道横城の小さな町に76年間仲良く暮らしているお婆さんのカン・ゲヨル氏(89)とお爺さんのチョ・ビョンマン氏(98)の日常が全てだ。お爺さんとお婆さんは小さな楽しみで日常を作り上げる。春には花を摘んでお互いの髪に挿してあげ、夏には川辺で足を浸す。秋にはお爺さんがお婆さんに落ち葉を投げ、冬には二人で手で雪玉を作って雪合戦をする。

    「ペアルック」のように同じ色の韓服をきれいに着飾って、どこに行くにもお互いの手をしっかりと握って歩く白髪夫婦の姿は、「設定」ではないのかという疑問を持たせる。しかし、その疑問を恥ずかしく思うことになる。お爺さんがお婆さんの髪に花を挿してあげて「きれい」と笑うとき、観客は愛の甘さを味わうことになる。この映画では私たちの生活で死が自然なように、永遠の別れも自然に描く。映画撮影中にお爺さんのチョ・ビョンマン氏の健康が悪化して、家の中から笑い声が減る。お婆さんは、お爺さんの顔を触りながら「3か月だけ、こんな風に私の隣にいてほしい」と言う。どのシーンでも悲しみを高めている音楽が流れはしないが、観客は別れさえも愛で待っている老夫婦を見たときに涙を我慢できない。

    信頼に基づいた愛を自然にそのまま収めた演出が真正性を渇望する劇場街で通じたという分析だ。この夫婦の話は、2011年KBS『人間劇場』で既に扱った話だ。放送を見たチン・モヨン監督はすぐに江原道に向かい老夫婦の長女に撮影許可を受けて15か月間、お婆さんとお爺さんの元に留まり、彼らの生活を加減なく収めた。お爺さんの死、子供間の葛藤など、映画の劇的要素はすべて実際の状況だ。老夫婦が主人公であるにも関わらず、この映画は家族の観客と20代の観客が多い。前売りサイトのマックスムービーによると、全体の前売りチケット購入者の年齢の割合は、20代が28%、30代29%、40代40%だ。 「駆け引き」恋愛に慣れている若者はこの映画を見て「軽い愛があふれる時代に本当の愛を確認できて感動的」という意見を出している。暖かい家族愛を守っていくことが厳しい現実で、この映画が代理満足をさせてくれる側面もある。死ぬまであたたたく面倒をみてくれる固い情は、きびしい現実と対比され、大きな響きを与えるというのだ。

    司法年鑑によると、昨年の結婚20年目以上の夫婦の熟年離婚は3万2433件と過去最多だ。

    チョン・ジウク映画評論家は、「この映画は老夫婦が主人公だが、『シルバー映画』に限定されていない。本当の愛を大事にするという点で、家族映画としても遜色がない」とし「経済的に大変で、家族間の愛を守るのが困難な状況では、この映画は暖かい慰めを求める観客らの願いを正確に拾った」と述べた。
  • 毎日経済 イ・ソンヒ記者 | (C) mk.co.kr | 入力 2014-12-10 16:59:03