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[科学の香り] バイアグラ誕生の秘密

韓国科学技術情報研究院(KISTI) 

    歴史的に、特定の用途で開発された医薬品が、偶然、他の用途に使われ、大ヒットした事例がある。代表的な薬は、勃起不全治療薬として有名な「バイアグラ」だ。バイアグラの原料である「シルデナフィル」は、最初から勃起不全治療を目的とし開発されたものではない。シルデナフィルの本来の任務は新しい方式で高血圧を治療するものだった。

    シルデナフィルが実際にどれほど効果があるのか、そして副作用がないかを確認する過程で、動物実験では、とりあえず合格だった。その後、人を対象とした臨床試験を通過する必要があるが、最初の段階では、健康な人を対象に薬剤が投与される。試験結果、高血圧症の治療薬として不適格であり、狭心症の治療薬としても古くに開発されたニトログリセリンに比べてはるかに作用が弱いという点が明らかになった。

    このような状況で、1992年忍容性試験(最大容量を投与して副作用を観察する実験)の結果、興味深い副作用が発見された。 8時間ごとに50mgを10日間服用した人から、別の副作用と一緒に勃起がされるという点が報告されたのだ。既に莫大な研究費が投資された状態であったため、研究結果をそのまま捨てることはできない状況だった。会社は研究成果を「生かす」方向を積極的に模索した。この時、ジャイルズ・ブリンドリーのびっくりショーに関する資料が真剣に検討され始めた。

    ブリンドリーは、イギリスの医師で、1980年代初めに米国の泌尿器学会の講演で、フェノキシベンザミンを直接注射してその効果を実証した。高血圧症の治療薬であるフェノキシベンジャミンは1950年代、人体のホルモンのアドレナリンの構造を少し変えて作られた。フェノキシベンジャミンは、体内でまるでアドレナリンのようなふりをするので、結果的にアドレナリンの機能を低下させる。だとしたら、フェノキシベンザミンと同様にシルデナフィルも勃起不全を治療することができないだろうか。この予測は、合致した。

    ファイザー社は、研究方向を勃起不全に合わせ始めた。1994年5月、ファイザー社は、勃起不全症の患者12人を対象に、一日に一回シルデナフィルを投与した結果、10人から効果が表れることを発見した。このニュースは、泌尿器学会に伝わり、医師の反応は肯定的だった。以来、ファイザー社は、数回にわたる徹底した臨床試験を経て、1998年3月27日、ついに食品医薬品局からバイアグラの商標名をつけて新薬承認を得た。

    バイアグラは新薬開発の過程でかなり幸運なケースとして通じている。すでに同じ成分を持っている「狭心症の治療剤」として動物実験と臨床の最初のステップの試験を終えた状態だったので、どうしても実験速度が速かった。新薬開発の経済性の側面から「これほど良いことはない」と評するほどだ。

    一方、高血圧症の治療薬の一種であるミノキシジルも脱毛の治療薬として多くの人気を集めた。ハゲ頭だった、高血圧患者が高血圧治療薬の一種であるミノキシジルを服用した後、髪の毛が生えたのだ。以降、ミノキシジルは脱毛防止、発毛促進剤として広く使用された。解熱・鎮痛剤として広く使われているアスピリンは本来、内服用の殺菌剤として開発されたものであった。がん治療剤として用いられているインターフェロンの場合は、関節炎にも特効があることが明らかになり、関節炎の治療剤としても使われている。

    禁煙の治療剤として使用されているブプロピオン(商品名:ウェルバトリン)は、元は、うつ病の治療薬として開発された。この薬は、ニコチン離脱症状を緩和させ、喫煙の欲求を低減する。食欲の衝動も調節して禁煙による体重増加を防ぐ効果もある。

    このように、科学技術は、多くの場合、特定の分野で出てきた結果を再利用して新たな成果物を作っている。ややもすると捨てられるところだった研究結果を発想の転換を介して有用に再利用した事例、こうした事例を教訓にして、人類に役立つ新薬が多く誕生することを期待したい。
  • 文:カン・ゴンイル科学評論家(前淑明女大薬大教授)、コラム提供:韓国科学技術情報研究院(KISTI) | 入力 2014-10-31 10:00:15