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  • Q.
    梨花女子大で起こった立てこもり事件の背景と警察が投入された理由を教えてください。(上)
  • A.
    詐欺賭博師の人生を描いた映画『タチャ イカサマ師』に、このような場面が出てきます。詐欺賭博を行うマダムが、「私、梨大を出た女よ」と自分を紹介する場面です。

    「梨大を出た」の一言は、韓国では最高のインテリ女性、最高の花嫁候補であることを保証する言葉でした。恋愛と結婚を夢見る韓国の男性たちにとって、梨花女子大出身者は羨望の対象です。一時は、新郎新婦を結んであげる斡旋業者の手帳に美貌の梨花女子大卒業生の名前が、判事や検事や医師と一緒に書かれていたくらいです。

    梨花女子大学が「生涯教育単科大学支援事業」に参加するという事実が知られ、お金がなかったり、高校時代に勉強に手を付けることができず、大学進学をあきらめていた女性が歓呼したかもしれません。「ようやく、学歴をアップグレードする機会が到来した。私も梨花女子大の卒業生になれる」

    生涯教育単科大学支援事業は、教育部が大統領の公約事業として推進してきた「生涯教育」政策の一つです。パク・クネ大統領が「すべての国民が簡単に生涯教育システムにアクセスできるように、大学などで生涯勉強ができるようにせよ」と依頼した後、教育当局が力点事業として推進してきた事業でもあります。

    簡単に言えば、生涯教育単科大学支援事業は高卒出身の会社員に4年制大学の卒業生に授与する学士号を取得する機会を与える事業です。30歳以上の専業主婦もそこに含まれます。入試競争をくぐって大学に入ることが厳しい人たちに裏門を開いてあげる事業と言えるかもしれません。

    来年から新入生を選ぶ生涯教育単科大学支援事業の対象学校には、梨花女子大のほか、東国大学などの10校の大学が選定されました。裏門を開いてくれた見返りに、これらの大学には国庫から30億ウォンずつが支援されます。見方を変えると、教育当局が現金で大学が事業を展開するように誘導したと見ることもできます。財政の苦しい大学がよだれを垂らしそうですが、地方の無名大学だけが参加してしまっては、生涯教育単科大学支援事業の成果が疑われることになり、十分な志願者が集まらないかもしれないと心配した教育部は、この事業に名門大学を誘致するために追加選定作業(1次選定で6大学)まで行い、努力を重ねました。

    梨花女子大学も最初は生涯教育単科大学支援事業に参加する考えはありませんでした。この事業を推進すると入学定員から60名を減らさなければならないという条件が負担になったのです。入学定員を削減する必要がないという利点が追加された後に、この事業に参加することにしました。未来ライフ大学という名前でメディアコンテンツの企画・制作をするニューメディア産業専攻と健康・栄養・ファッションなどのウェルネス(Well-ness)産業専攻で150人の定員の単科大学を新設するという計画が立てられたのです。

    学校は財政支援を受けて、梨花女子大生を夢見る高卒の女性たちは機会をつかんだかもしれませんが、学生の反発を買いました。学生が反発をした理由は、学校がお金に目がくらみ、学位を売る商売に乗り出したと考えたのです。

    生涯教育単科大学支援事業により学内対立が表面化しましたが、梨花女子大学は、これまで金儲けに目がくらんで学問を捨てたという非難をずっと受けてきました。大学人文力量強化事業を獲得し、3年間で96億ウォンの財政支援を確保し、5月には年間50億ウォンサポートされる産業連携教育活性化先導大学事業(Prime事業)の参加対象にも選ばれました。生涯教育単科大学支援事業まで参加することから、大学街では「梨花女子大学が財政支援事業3冠王」に輝いたという言葉が出回りました。3冠王という言葉には、羨望と皮肉が混ざっています。

    大学街では他の学校に比べて寄付も豊かで授業料も高価な金持ち大学があまりにも政府の政策に順応しているのではないかという批判も提起されました。学生が教授と教職員など、5人を監禁したまま本館を占拠して座り込みをするようになった背景には、生涯教育単科大学支援事業だけでなく、これまでの学校の政策に対する蓄積した不満があるのです。

    占拠と座り込みが長期化し、最終的に不幸な事態が起こりました。1999年、ソウル地下鉄労働組合が繰り広げたストライキ座り込みを鎮圧するために2000人の警察が進入して以来、17年ぶりに1000人以上の大規模な警察兵力がキャンパスに進入する事態が起きたのです。

    この日、学校の内外に投入された警察兵力は21個中隊の1600人にもなります。学校本館の建物を占拠して座り込み中だった学生が200人ほどでしたから、警察の数が8倍に達したことになります。警察の過剰鎮圧と見ることもできますが、鎮圧中のケガ人を減らすために、多くの兵力を投入した側面もあります。問題はこれまで学内紛争への介入を自制してきた警察が進入したという事実自体にあります。

    ここで、今回の事態の本質がある程度明らかになりました。学校側は学内の構成員を説得する自信がありませんでした。警察投入により事態が悪化した後、梨花女子大学の教授協議会は「(生涯教育単科大学支援事業に参加するという)マスコミの報道が出てくる2日前に、教務処から一通の電子メールを受信したのがすべて」と明らかにしました。

    これまで、韓国の教育当局は大学の構造調整を押し進めてきました。人材のミスマッチ(miss match)をなくすというのが、大学の構造調整の骨子です。見方を変えると、生涯教育単科大学支援事業も構造調整の延長線上にあります。大学の卒業証書は、後でいくらでも手に入るから、まずは就職からしてみようと誘っているのです。生涯教育単科大学支援事業が定着すれば、産業現場で不足している高卒人材の供給も容易になることでしょう。

    しかし、学位を簡単に取ることができるように裏門を開いてあげるべきなのかに対する明快な答えを出すことは容易でありません。大学が学問を研究するところなのか、それとも産業現場に人材を供給する養成所なのか、生涯教育の学位が必ず必要なのか、という問いに対して正しく回答することも難しいです。

    だから同意を求めることは後回しにするしかなかったのかもしれません。大学と産業現場の人材ミスマッチを減らすという政府とはコミュニケーションが十分でしたが、学内構成員の意見のミスマッチを減らす努力は、最初からなかったのです。確かに、Prime事業参加大学選定時の大学構成員の同意点数が3点にしかならなかったので、疎通することに努力する理由もなかったのでしょう。

    ところで、学生の主張の通り、生涯教育単科大学支援事業が学位を売る商売なのであれば、大学が金儲けをするために国がなぜ支援金まであげるのか、このような疑問が当然浮かびます。これについては、次回へと続けることにします。