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  • Q.
    韓国で有名な陰謀論について教えて下さい:天安艦事件
  • A.
    天安艦襲撃事件

    保守政権の極端な不信から始まった代表的な陰謀論の中に「天安艦襲撃事件」があります。この事件に疑惑の視線をそらせられない人は「襲撃事件」という言葉自体ふさわしくないと感じるかも知れません。

    まず事件の概要から見てみましょう。

    2010年3月、西海(黄海)の白翎島(ペンニョンド)近隣で警備任務中だった天安艦が沈没し、海軍将兵40人が死亡して6人が行方不明になりました。さらに、行方不明者の捜索のために投入されたSSU(海難救助隊)・UDT(海軍特殊戦戦団)・特戦司令部将兵のうちUDTのハン・ジュンホ准尉が潜水病で死亡し、捜索を助けていた民間漁船クミャン号が操業地に向かう途中にカンボジア貨物船と沈没して2人が死亡するという事件まで重なりました。

    事件の初期には様々な説が提起されました。韓国国防部は、「北韓(北朝鮮)が関連したであろう可能性を排除していない」というほどでした。実際には北韓の攻撃で沈没したことが明らかになるのも嫌がる雰囲気でした。北韓の攻撃を防がなければならない海軍戦艦が北韓潜水艇の浸透を許し、真っ二つになったことを認めなければならないので体面を汚すことになります。

    とにかく初期には、船体が老朽化した艦艇が三角波によって破壊された、暗礁にぶつかり座礁した、などの説が入り乱れました。最初から北韓のしわざを疑った国防部とは異なり、青瓦台も魚雷に襲撃された可能性については慎重でした。1970年代に白翎島海上に機雷を敷設した責任者が「一度だけ偶然に爆発したことがある」という文書を伝達したあと、機雷爆破説に傾く雰囲気も感知されました。

    天安艦が引き揚げられ、爆発地域の近隣で底引き網漁船がプロペラ、推進モーター、調整装置など魚雷の部品をすくい上げたことで、北韓潜水艇の魚雷攻撃としての糸口が見つかりました。米国・英国・カナダ・スウェーデンという多国籍の専門家が含まれた合同調査団は「天安艦は北韓潜水艇の魚雷攻撃によって沈没した」と公式発表しました。

    調査団が北韓の魚雷攻撃だと判断した根拠は次のとおりです。

    - 船体外観が深刻に折られ、破損した部分が発見された。

    - 水中爆発で、船底が下から上へ曲がった。

    - 事件発生当時、地震波と空中音波が検出された。

    - 白翎島住民が爆発音を聞いて、100メートル以上高く立ちのぼる炎も見た。

    - 西海の北韓海軍基地で運営されている小型潜水艇とこれを支援する母船が天安艦攻撃の2~3日前に基地を離脱したが、天安艦沈没の2~3日後に基地に復帰した事実が確認された。

    - 爆発地域の近くですくい上げられた魚雷の部品は、北韓が海外に輸出するために作った武器紹介パンフレットの設計図面と一致する。

    しかし、合同調査団の発表も疑惑を払拭できませんでした。軍の対応も陰謀論を大きくするところに一助となりました。

    沈没前と沈没後の映像は公開されましたが沈没の瞬間を収めた映像はなく、事件の翌日に海洋警察が艦尾と推定される物体を識別して海軍に報告しましたが、どういう理由からか海軍はこの報告を無視しました。生存者を救出するためには1分も惜しいという局面だったため、疑うのはしかたなかったでしょう。メディアは軍に海上警察の報告を無視した理由を尋ねましたが、国防部は海上警察が艦尾座標を伝達したという事実すら明かすことはできないという姿勢でした。

    合同調査団の発表が信じられないと提示する疑惑の中では次の3つが核心です。

    1、魚雷の破片に書かれている1番という文字が、高温でも消えなかった。

    2、船が真っ二つになるほどの衝撃にも、切断面にある蛍光灯が残っており、将兵らの鼓膜も破れていない。

    3、天安艦の船体から出てきた吸着物と魚雷推進体、爆発試験で出てきた副産物がすべて同じだとはいうが、その物質は爆発時に生成される酸化アルミニウムではなく水酸化アルミニウムで、海底にあった鉱物の可能性が高い。

    ハンギョレ新聞はロシア調査団の報告書を引用して合同調査団の発表内容について疑問を提起しましたが、ロシアの大使がこれを否認したために葬られました。しかしその後、在米の科学者アン・スミョン氏が米海軍を相手に米国側の記録を公開するように請求し、3年余りの訴訟の末に1400ページの文書を受け取ります。ところが、この文書にロシアの調査団の報告書があったことが明らかになりました。

    ロシアの調査団の報告書は事故発生時刻に対する疑問を提起して、事故の原因を魚雷ではなく機雷爆発として見るなどハンギョレ新聞の報道内容と一致しました。

    米国はロシアの報告書がでたらめだと主張しながらもこれがもたらす波紋を懸念しましたが、ロシアの報告書は公式発表はされませんでした。しかしこの報告書のためか、主要西側諸国が一様に北韓を糾弾するなか、国連安全保障理事会は北韓を攻撃者と明示しないまま天安艦を攻撃した事態を糾弾するという、少しあいまいな形式の議長声明を採択しました。

    このような点がまだ天安艦に陰謀論が飛び交う背景でしょう。陰謀論者らは天安艦が暗礁によって座礁したか、機雷爆発または振動によって生じる劣化現象である金属疲労のために真っ二つになったと信じています。

    これを北韓のしわざにして保守勢力が国政を掌握しようとしているというのが陰謀論の要点です。事件発生の6年後である昨年2016年1月、裁判所は軍当局によって名誉毀損の疑いで起訴されたインターネットメディア代表のシン・サンチョル氏に対する判決を下し、「北韓の魚雷砲撃で天安艦が沈没した」という判断を下しました。しかし政府の発表も信じられないのに、裁判所の判決をそのまま受け入れられるでしょうか? 天安艦の陰謀論はまだ進行形なのです。