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[SNSの世界] トップスターの私生活と陰謀論

    米国の人気歌手ブリトニー・スピアーズにとって、2007年は悪夢のような一年だった。彼女は1999年の最初のアルバム『ベビーワンモアタイム(Baby One More Time)』が大ヒットし、2006年までは毎年トップの座を守った。しかし、2007年の初め、アルコール中毒のリハビリで入院してからは脱出と再入院を繰り返し、輝いていた長いブロンドの髪も切った。以来、毎日のように入れ墨と麻薬の服用、自殺騒動、過食症、セックスビデオ流出などの大きなイシューが流れた。米国のメディアは、スピアーズの断髪と暴飲暴食で太った姿などを連日、特筆大書した。

    しかし、彼女の突出した行動の背景として、ソーシャルネットワークサービス(SNS)を中心に、奇妙な噂が出回り始めた。当時のジョージ・W・ブッシュ政権が、国民の関心を政治から芸能界に移すためにブリトニー・スピアース使用したというのだ。ブッシュ政権は、2007年、イラクでの米軍の戦死者が3000人を超え、世論戦で守勢に追い込まれていた。米国内の世論は、初めて海外派兵への反対が賛成を上回り始め、ブッシュ政権の海外政策はほとんど失敗という非難も相次いだ。このため、彼女の私生活がすべて公開されてニュースが拡大再生産される背景には、ブッシュ政権の陰謀がいるという噂が急速に広がった。スピアーズがブッシュ政権の依頼を受けてお金をもらってわざわざ突出した行動をしているという噂もあった。

    「芸能人陰謀論(Celebrity Conspiracy Theories)」は、大衆文化が早くから花を咲かせた米国では古くから人々の噂の対象となっていた。マリリン・モンローの死は、薬物の過剰摂取による自殺ではなく、米国中央情報局(CIA)が暗殺したといううわさもその一つだ。モンローは、政治家たちと交流しながら自然と政界の秘密を知ることになったが、薬物中毒だった彼女が、これを漏洩することをCIAが懸念したというものだ。それより以前に、ポップアーティストのアンディ・ウォーホルが世界的な名声を得れるまでCIAの支援があったという事実は、アメリカ人が「芸能人陰謀論」に陥るきっかけとなった。

    韓国のSNSは先週、再び「芸能人陰謀論」に熱くなった。俳優イ・ミンホと歌手スジの熱愛ニュースがインターネットのメディアを介して公開されると、人々は「今度は何だ、何だ」と、その背景を探し始めた。

    SNS上では、再び政界の陰謀ではないかという疑惑があふれた。その中でも、李明博(イ・ミョンバク)政府が5年間、海外資源開発企業に2800億ウォンを貸したというニュースを覆うためだという主張が急速に広がった。特徴的なのは、海外の芸能人関連の陰謀論は個人の突出した行動と死、出産など、素材が多様なのに対し、韓国は「男女交際」に関するものがほとんどであるという点だ。米国は、「芸能人陰謀トップ30」ニュースにトップスターの異性交際に関するものはない。それほど韓国ではトップスター間の交際が陰謀論になるほど大きな問題だということを象徴的に示している。

    それでは、SNS上ではなぜ陰謀論が簡単に作られて拡散するのだろうか。昨年、韓国でも出版された米国英語学者のジョナサン・ゴットシャルの本『ザ・ストーリーテリング・アニマル』は、陰謀論が魅惑的な理由は「驚くほど優れた物語」のためだと説明する。「陰謀論」は、事件を古典的な問題(葛藤)構造として提示し、良い人と悪い人をはっきりと分ける。日常生活に疲れた人々は、良い人と悪い人が容易に区分される事件にすぐに惹きつけられる。これをゴシップとして笑って騒いで、頭痛の種を一瞬でも忘れてストレスを解消するのだ。

    公務員の年金制度改革がなぜ難しく、ここまで遅れているのか、陰謀論として面白く解説するネットユーザーはいるだろうか。良い人と悪い人が一目でわからない場合は陰謀論が成立しにくい。とにかく、今のトップスターの基準は、異性交際が発覚したときに、陰謀論が登場するかどうかで判断されるのではないだろうか。
  • モバイル部=ソ・チャンドン記者 | 入力 2015-03-27 16:11:05