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韓国政府、ローンスター「5兆食い逃げ」を証明できるか

ローンスターの仲裁裁判本格法廷争い開始 

    △写真=米国系私募ファンドのローンスター(Lone Star Funds)は、韓国外換銀行の売却時期に伴う機会費用2兆ウォンを韓国政府のために逃したと訴訟を提起した。

    ▶ 5兆1000億ウォン(約5000億円)の血闘

    韓国政府と米国系私募ファンドのローンスターとの法廷争いが本格的に始まった。ローンスターは、去る2012年11月、韓国政府が外換銀行に対する売却の承認を遅らせて不当に税金を課して、莫大な損害を被ったとし、韓国政府を相手に投資家・国家間訴訟(ISD)仲裁裁判を提起した。韓国政府がISDで外国投資者と行う最初の裁判だ。

    2012年に提起された裁判は、世界銀行傘下のICSID(国際投資紛争解決センター)が主宰する。ICSIDは去る3年間、書類で双方の意見を受け付けた後、5月中旬から米国ワシントンで最初の審理を進行した。ローンスター側の問題提起と韓国政府が反論を繰り広げる場だ。口頭審問、関係者の陳述等の手続きが含まれており、法務部はもちろん、金融委員会、金融監督院、企画財政部などの6つの関連政府部処のチーム長級の実務者10人で構成された政府合同対策チームがワシントン現地に到着した状況だ。

    加えて、証人として金錫東(キム・ソクトン)元金融委員長(現、法務法人・地平(チピョン)常任顧問)、金勝猷(キム・スンユ)元ハナ金融持株会長、金重会(キム・ジュンフェ)元金融監督院副院長、キム・ビョンホハナ銀頭取、権泰信(クォン・テシン)元国務調整室長(現、韓国経済研究院長)などが大挙採択された。彼らは、第1次・第2次審理に参加する。

    ▶ ローンスターはなぜこのような世紀の裁判を提起したのか

    ローンスターの核心となる主張は「韓国で、はるかに多くの金を稼ぐ機会があったのに、韓国政府が差別待遇をして逃した」に要約される。外換銀行売却の件が代表的だ。ローンスターは、ハナ金融に外換銀行を最終的に2012年、3兆9157億ウォンで売却した。2003年10月、外換銀行の株式51%を1兆3830億ウォンで買収した後、9年ぶりに2兆ウォン以上の差益を上げたわけだ。

    しかし、ローンスターは不満が大きかった。2007年9月にHSBC(香港上海銀行)を相手に、より高い価格で売却する機会があったからだ。当時、ローンスターとHSBCは、5兆9376億ウォンの売買契約を締結して政府の承認を待っていた。しかし、ローンスター側の期待とは異なり、韓国政府は承認の決定を下さなかった。ローンスターとHSBCは、2008年4月に売買契約を一度延長して意志を表示したが、韓国政府の決定が下されなかったため、2008年9月に結局、放棄を宣言した。

    ローンスターの立場からすると、韓国政府が政治的な状況のために承認を遅延して、約2兆ウォン以上を稼ぐことができたにもかかわらず、チャンスを逃したことを浮き彫りにして、損害賠償を受け取るという心算だ。今回の審理でローンスターは「買収者であるHSBCの持分買収に対する承認を遅延させる韓国内の規制基準はない」という点を強調している。ローンスターは売却の遅延により発生した、機会費用2兆ウォンに加え、これまでの利子などを勘案して計3兆3800億ウォンを賠償してほしいという主張だ。

    もちろん、韓国政府は「話にならない」という立場だ。「政治的な考慮ではなく、韓国の国内法と国際規範に合わせて処理した」というのが核心論旨だ。また、当時の状況に対する事実関係を中心に反論する。韓国政府が売却遅延をしたという内容と関連して、当時の韓国政府は、ローンスターが外換銀行を買収する過程に不法行為があったことを捕捉して、司法手続きが進行中だったため売却承認ができなかったという点を強調している。

    当時のローンスターは、外換銀行の安値売却事件(2006年12月起訴)と外換カード・外換銀行の合併時の株価操作事件(2007年1月起訴)と関連し、調査を受けていた。証人として採択されたチョン・グァンウとキム・ソクトン元金融委員長などの政府官僚出身者らも、このような当時の状況を積極的に説明する方針だ。

    • < ローンスターと外換銀行の買収売却関連の現況 >



    ▶ 国民の税金がかかった裁判だというのに…

    5月中、10日間にわたり第1次審理を開催した後、6月29日の第2次審理がすべて終わってから、仲裁判定部(Tribunal)が決定を下す。通常、判定までに約1年ほどがかかる。

    問題は、裁判が徹底的に非公開で行われているという点だ。仲裁判定の結果も当事者が同意しない場合、公開されないことがある。これに対して、「民主社会のための弁護士の会」(以下、民弁)のソン・ギホ弁護士は「数兆ウォンに達する国家予算がかかった事案であるにもかかわらず、政府が訴訟に関連する情報を独占したまま密室主義を守っている」と強く糾弾した。市民団体は「政府の対応がはっきりと表れていない中で、最終的な判定がややもすると韓国政府に不利に下されて、国民の税金で賠償金を支払わなければならなくなるのは最悪のシナリオ」だとし、透明な裁判過程の公開を求めている。

    ▶ ローンスター訴訟の法律事務所は、韓国最大手のキム&チャンの代わりに世宗(セジョン)

    今回の裁判では、法律事務所間の競争も観戦ポイントの一つだ。まず、韓国政府側の法律代理人としては法務法人「太平洋(テピョンヤン)」と米国の法律事務所「アーノルドアン・ポーター(Arnold&Porter)」が乗り出す。法務部は去る2012年11月、ローンスターが仲裁を申請したときから、これらの法律事務所を選任していた。

    法務法人テピョンヤンは、ISD TFチームを置いており、国際取引法学会の会長兼国際投資紛争センターの仲裁人を務めているキム・ガプユ弁護士が率いている。テピョンヤンは、2012年にSK建設を代理して、ベトナム政府を相手にISD訴訟を起こし、勝訴の趣旨の仲裁決定を導き出したこともある。米国法律事務所アーノルドアン・ポーターは国際仲裁、企業専門の法律事務所として、昨年基準で企業諮問分野25位(Corporate Board Member magazine)に名前をあげた有名法律事務所だ。

    ローンスター側は、法務法人セジョンの米国系法律事務所である「シドリーオースティン(Sidley Austin LLP)」を選任して、陣容を整えた。法務法人セジョンでは、韓国人で初めWTO紛争事件を引き受けたキム・ボムス弁護士(国際仲裁実務会の副会長)が先鋒に立った中で、15人の国際仲裁チームが今回の裁判に臨んでいる。シドリーオースティンは米国に本社を置き、1900人の弁護士が所属しており、昨年の売上高は1兆ウォンを超える米国6位の法律事務所だ。

    最近、法務法人セジョンは裁判を控えてユン・ヨンロ元外換銀行頭取を顧問に迎え入れ、議論を巻き起こした。ユン顧問は、ローンスターが2007年に外換銀行の株式をHSBCに売却する当時、金融監督委員会の副委員長を務めたことがある。ユン顧問は「ローンスター裁判と法律事務所の入社は、全く関係がない」と語ったが、世間の視線はあまり友好的ではない。

    ▶ ところで、韓国最大手の法律事務所であるキム&チャンは、今回の仲裁からなぜ抜けたのか

    キム&チャンは、ジェフリー・ジョーンズ(Jeffrey Jones)などの有名弁護人団を構成して、ローンスターが韓国で営業する当時の法律代理人として活動してきた。また、国際仲裁の分野では数少ない韓国内の強者だ。当然、今回もローンスター側の代理人として出てくることが予想されたが、今回の裁判では名前を見ることができない。

    業界関係者は「キム&チャンは、ローンスターに対して韓国国内での営業時には韓国に対する友好的なイメージを積まなければならないと提案し、これと関連して全方位で弁護士らが活動し、ケースごとに成功手当を受け取るほど、熱心な法律支援を行った。投資仲裁の件もローンスターのために準備諮問まで全て行った。しかし、政府を相手に乗り出さなければならないという負担感のために、最終的に国際仲裁からは抜けたのではないかというのが業界の定説」だと語った。

    一方、今回のローンスターISD事件で、2012年から今年5月までに政府が使用した裁判関連の費用(弁護士選任費用、仲裁用など)は、219億ウォン(民弁発表)に達することが分かった。
  • 毎経エコノミー第1808号(2015.05.20〜05.26日)バク・スホ記者 / 写真=ユン・グァンシク記者 | 入力 2015-05-18 10:50:03