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国民ナビゲーションアプリは「田舎者コンプレックス」から生まれた

    「15年前、昌信洞の安アパート街、禾谷洞の歓楽街のオフィステルを転々とした青年、626億ウォンで会社を売却する」。

    ダウムカカオが626億ウォンで買収したナビゲーション「キムギサ」を創業したパク・チョンファン代表(43・写真)のストーリーだ。 1999年に釜山で大学を卒業し、無一文でソウルに上京した青年が、スマートフォンのアプリで大ヒットを生み出した。退職金として受け取った5000万ウォンをそれぞれが投資して、友達3人で会社(ロックアンドオール/LOC&ALL)を共同創業し、100倍の利益を得ることができた。

    20世紀の韓国では、素手で会社を始めてサムスン、現代、LGなどのグローバルグループに作り上げた財界の神話があるならば、21世紀のモバイル時代には、徒手空拳で創業し、600億ウォン台の会社価値を生み出す「モバイル創業神話」が作られる。実際、パク・チョンファン代表は、外国の有名大学やMBAを終えた後に韓国へ戻って創業し、会社を育てたいくつかのスタートアップとは異なり、20世紀の韓国の「素手創業」を連想させるストーリーがある。

    釜山で生まれ育ったパク代表は大学(東亜大コンピューター工学科学士、釜山コンピュータ工学修士)を終えて、1999年に初めて上京した。ソウルに知っている者がまったくなく、大学の同期のキム・ウォンテ現ロックアンドオール共同代表(共同創業)が住んでいた昌信洞(チャンシンドン)の安アパート街に転がり込んで暮らした。パク代表は「フトコロには両親からもらった10万ウォンだけだった」と回想した。光も差し込まない共同トイレを使い、暖かい水も出ない安アパートに1年以上住んだが、当時入社したての会社(KT子会社のKTIT)の部長が「なぜこんな家に住んでいるのか」と涙を流すほどだったとした。

    パク代表が「人間らしく生きてみよう」と引っ越したところは、禾谷洞(ファゴクトン)の小さなオフィステルだったし、この地域も禾谷洞の歓楽街だった。パク代表は「昼に行って契約したが、夜に戻ってみるとオフィステルを見つけられなかった。禾谷洞でも有名な歓楽街だったので、ネオンサインで見えなくなったからだ。釜山から上京した田舎者で、まったく知らなかった。だから契約後の最初の日はオフィステルで眠れず、近くの旅館で寝ていた」と語った。

    ナビゲーション事業をはじめようと心に決めたのも「田舎者コンプレックス」があったからだ。昌信洞の安アパートから禾谷洞に荷物を移したとき、会社から借りたボンゴを利用したが、ソウルの地理を知らなくてあちこち迷い、あぜ道に踏み込んだことも経験したからだ。パク代表は、「今考えてみると思い出話だが、当時は地図帳を買って通ったが禾谷洞・一山(イルサン)・幸州山城(ヘンジュサンソン)一帯がわからなかった。ナビがあればはるかに楽だと思った」と過去の記憶をたどった。パク代表はその後「ポイント・アイ(POINT-I)」と呼ばれる、携帯電話の位置基盤ソリューションプロバイダに参加した。「安アパート同志」のキム・ウォンテ代表がポイント・アイを共同創業したためだ。この時から「ナビゲーション」と縁を結んだ。ポイント・アイはKTFの「チングチャッキ(友達さがし)」サービスを提供し、後に「ケイウェイズ」というモバイルナビゲーションを供給して大きく成長した。しかしiPhoneが登場した後、ポイント・アイも立つ瀬を失って他の会社に売却された。

    「スマートフォンが未来」だと判断したパク代表は、2013年に「安アパート同志」キム・ウォンテ代表、大学院(釜山)の仲間シン・ミョンジン現ロックアンドオール副社長と一緒に、スマートフォン用ナビ会社を創業することにした。退職金として受け取った5000万ウォンをそれぞれが投資した。ロケーションベースのサービスの経験があり、ビジネスになりうるという確信のためだった。

    とは言え、「創業」は苦難の連続だった。創業7ヶ月が過ぎて資金は底をつき、投資家を探したが「通信社がサービスするし、GoogleやAppleが地図サービスを行うのに、小さな会社でどうするというのか」という理由ですべて断られた。けっきょく資本金を使い尽くし、投資誘致も放棄して、技術保証保険などから金を借りた。借りた金も減っていく頃、創業2年5ヶ月めではじめて韓国投資パートナーズからの投資を受けることになった。

    ダウムカカオの李碩祐(イ・ソグ)代表が「キムギサ」を注視して、投資を紹介してくれたのだ。ダウムカカオは最終的に626億ウォンでキムギサを買収することになったが、この会社の最初の投資から買収まで、イ・ソグ代表が導いたといっても過言ではない。

    パク代表は、「3人の共同創業者の持分は50%だ。このうち半分は現金で、残りは株式で得ることにしたが、これは会社をさらに育てるという動機からだ。買収・合併の神話を越えて、グローバル事業として成功するまで会社を発展させる」と抱負を明らかにした。
  • 毎日経済_ソン・ジェグォン記者 | (C) mk.co.kr | 入力 2015-05-20 17:31:01