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ダウムカカオに「キムギサ」のM&A成功させたパク・チョンファン代表

    「パク・チョンファン代表。私は釜山の某大学に通うAといいます。本当におめでとうございます。今回、キムギサをダウムカカオに626億ウォンで売却されたというニュースは、私のように釜山の大学生には一筋の光のようなニュースでした。ソウルでスカイ(ソウル大・高麗大・延世大)やKAIST出身だけが栄光を味わうと思っていましたが、パク代表が成し遂げたことを見て、私もできるのではないかという希望を得ました。続けて精進なさって、地方で創業の夢を見ている大学生に勇気をください」。

    モバイルナビゲーション「キムギサ(キム技士)」をサービスするロクアンドオール(LOC&ALL)社のパク・チョンファン代表(43)は、ダウムカカオへの売却が発表されて一日が経った去る20日、フェイスブック(facebook.com/leon0070)にこのようなメッセージを受け取った。面識のない学生だった。 Aさんはパク代表のフェイスブックを検索してメッセージを残した。パク代表は、「626億ウォン創業大当たりニュース」の後に「うらやましい。すごい」という反応よりも、「(地方の学生に)希望を与えた」「私もできるという意欲が生まれた」というメッセージが押し寄せたことがうれしかった。そして「うまくやっていくべきだ」という使命感が生じた。パク代表は「ダウムカカオは独立経営を約束しました。今回の売却代金の半分を株でもらいました。会社をもっと育てて価値を上げなければ、真の大当たりは出ませんでしょう。今が始まりです」と語った。パク代表の事例が注目される理由は、彼のストーリーが「1950~60年代に素手で創業した企業家」を連想させるからだ。

    2000年代以降、韓国のモバイル創業サクセスストーリーは、「外国の有名大学出身」「シリコンバレーで創業」「MBAを修了」「ソウル大サークル出身の」「屈指の大企業を飛び出して」「英語力で」「(何を隠そう)有力者の子」などの言葉を逃れることができなかった。誰もが認める良いスペックが人脈を作り、ビジネスを成功と投資回収につなぐ事例が多かったからだ。 「良い背景と外国大学出身」は、今も成功への近道であると認識されている。

    しかしパク代表はこのような単語との距離が遠い。釜山の東亜大(学士)を出て、卒業するころにIMF危機(アジア通貨危機)に直面して就職ができず大学院(釜山大)に行き、ソウルには29歳の時、1999年に初めて上京した。パク代表が考えた夢の職場はサムスン電子、SKテレコムなどだった。地方大学出身というハンディキャップのために、サムスンやSKテレコムは難しいと考えて銀行に入ろうともした。もし彼が卒業後すぐに銀行に就職したならば、会社をダウムカカオに626億ウォンで売却したナビゲーションベンチャーの代表ではなく、専門(コンピュータ工学科)を考えた時に銀行業界のIT業務を担当している可能性が高い。

    パク代表は、「通貨危機のために夕立を避けようと大学院に進学しました。災い転じて福となったようです。その時にキムギサ共同創業者の一人、シン・ミョンジン副社長(CTO)と会いました。ソウルには大学院を卒業して、初めて上京して来ました。周辺の創業者の中で大学と大学院も釜山で終えて、最初の仕事をソウルで得て始めた事例はほとんどないようです。通常は大学の時、ソウルに上がって来るでしょう。そのためか、故郷の釜山など地方の大学生からの声援メッセージが押し寄せています。『ソウルへ行けば油断がならない』という言葉をまだ言ってますよ。地方で創業して成功するのはさらに難しいのが事実です。今回の買収・合併が個人の成功というよりは、私のような普通の者にもチャンスを作ることができるというメッセージを与えたようで、何より満たされました」と語った。

    ソウルに上京しても、部屋に窓もない昌信洞(チャンシンドン)の安アパート街に1年以上住んだが、引っ越ししたところも禾谷洞(ファゴクトン)の歓楽街だった。最初の仕事は屈指の通信社KTではなく、KTの子会社のKTITという会社であり、ここから移った会社が「ポイントアイ」と呼ばれるロケーション(位置)を基盤にする技術専門ベンチャーだった。

    技術専門ベンチャーに入社して以来10年間、愚直にひとつの井戸を掘り下げて、ナビゲーションベースの技術とサービスを体得できたが、これは「キムギサ」を創業するための大きな資産となった。彼が30代を捧げたポイントアイは常勝疾走した。当時、KTFサービスで人気を集めた「チングチャッキ(友達探し)」サービスを開発し、一般的な携帯電話用のナビゲーション市場をリードした「ケイウェイズ(K-Ways)」も大きく注目されてコスダックに上場した。

    しかし2007~2008年、「AppleのiPhone、アプリストアの登場」という衝撃がやって来た。携帯電話の分野でのIMF危機だった。有料だったモバイルサービスは、すべて無料で解放された。利用者にはこの上なく良かったが、携帯電話会社にサービスを供給し安住していた企業に「iPhone」は、すべてのものを変えるIMF危機とも同じ意味だった。パク代表のいたポイントアイは、けっきょく迂回上場を推進した業者に売却された。

    パク代表はこの時、ポイントアイで働いていた「生涯の同志」キム・ウォンテ現ロクアンドオール共同代表、シン・ミョンジン副社長と一緒に創業して、無料ナビゲーションを作ろうと決心する。位置情報サービスはモバイルの最高収益事業の一つだという確信もあったし、パク代表とキム代表そしてシン副社長が最もよく知っている分野であるためだった。

    退職金をそれぞれ5000万ウォン投資して、資本金1億5000万ウォンで2010年にロクアンドオールを創業した。技術もあり実力もノウハウもあった。しかし、彼らに「背景(バック)」はなかった。ベンチャーキャピタルを訪ねたが、投資を得ることには失敗した。

    パク代表は、「あまりにも良くない話をたくさん聞いたので、そもそも投資を受けるのはやめようと決心した」と回想した。

    それもそのはず、「常識」で見ると「キムギサ」はだめな事業だった。当時、大小ナビゲーションメーカーだけでも300社があったし、スマートフォンナビもSKテレコムの「Tマップ」とKTの「オーレナビ」が存在した。グローバルな競争相手はGoogleとAppleだった。田舎者の3人がいくら頑張って戦って見たところで手にあまるような相手だった。

    「キムギサ」を「門前薄待」したベンチャーキャピタルでいちばん多く受けた質問も、「既存の強者にどのように勝つのか」というものだった。

    創業7ヶ月めで資本金は使い果たされた。 2011年初め、ほぼ無一文の状態で技術保証保険を通じて、投資ではなく金を借りた。借りた金も消えて行くころ、創業2年5ヶ月ぶりに韓国投資パートナーズ(Korea Investment Partners)からの投資を受けることになった。私的な集まりで会ったダウムカカオの李碩祐(イ・ソグ)代表が「キムギサ」に注目して、投資家を紹介してくれた。投資を受けて既存の従業員に遅れた給料を払い、人材を採用することができた。この縁はずっと続いて、けっきょくダウムカカオが「キムギサ」を買収することになる。

    • < キムギサ(ロックアンドオール)の現況 >

    「キムギサ」を買収しようとした会社は、ダウムカカオが初めてではなかった。「キムギサ」は「正確で速い」という口コミで1000万ダウンロードを超え、月利用者も200万人を越えると、SKプラネットやネイバーなどが買収を打診した。特にネイバーは「キムギサ」の初期投資会社の一つだった。ダウムカカオは一番最後に交渉しており、買収・合併について真剣に検討したのも3月以降だった。

    「キムギサ」がアピールした理由は、独自のシステムを通じてリアルタイムで更新される膨大な交通情報をもとに、過去と現在の交通の流れを分析し、1分単位の高速で正確な道案内を提供するという利点だ。競合他社は交通情報に基づいて5分単位で更新するが、「キムギサ」は利用者間の交通情報をリアルタイムに反映している。また、特定の通信社に依存しないし、利用者の幅も20代から50代まで広く、利用者が多くなると精度がますます高くなる。

    パク代表は「キムギサ」を売却するつもりはなかった。日本と中国への進出を目前にしていたからだ。日本と中国でも「キムギサ」の技術をベースにした無料のナビゲーションサービスが受け入れられると、企業価値は大きくなりうると考えた。

    しかし、パク代表は「株式全量売却」を選択した。現金で50%を得て、ダウムカカオの株式50%を得た。共同創業者3人がそれぞれ約50億ウォンを手にすることができたし、従業員にも苦労に対する補償を出すことができた。

    なぜこの瞬間、持分売却を選択だろうか?一般の人が見ると626億ウォンは大金だ。しかし、起業家の基準で見れば不器用な売却でもある。特に「金」を計算したら、ダウムカカオに売却するよりも、会社をより大きくして中国などの外国企業に売却する機会を見つけることもできる。

    しかし、パク代表は決断の理由で「ビジョン」を挙げた。彼は「ダウムカカオが設計するビジョンが『キムギサ』と同じだった。いっしょにやってみたいという気がしました。売却を交渉した人々はイ・ソグ代表らではありませんでした。実務者らと対話しました。ゴルフで言えば方向性が同じだと。いま一人でするよりも、ダウムカカオが持っているオンラインとオフラインを接続するビジョンといっしょに、大韓民国の交通・物流などを変えることができそうでした。国民がモバイルを通じて、より便利な生活を享受する機会をいっしょに作ってみたかったのです」と語った。キムギサの626億ウォンは、またひとつのシードマネーであるわけだ。

    ■ ダウムカカオ製品に抱かれたキムギサの未来は?

    カカオペイと組み合わせて決済まで...旅行サービスの新しい市場を開くだろう

    ダウムカカオは「キムギサ」を買収し、独立経営を約束した。実際、ダウムカカオは「キムギサ」の買収・合併発表で、「オンラインとオフラインを接続するO2Oビジネスを展開していくために、ナビゲーションなどの交通関連のサービスは非常に重要な要素の一つだ。『キムギサ』の膨大な交通情報、リアルタイムビッグデータ分析システム、ダウムカカオサービスとの相乗効果、将来の成長可能性などを見て戦略的に投資した」と説明した。

    ダウムカカオのサービスに編入させようというのではなく、独自の経営とサービスを使用して相乗効果を狙うということだ。実際、ダウムカカオは第1四半期の業績発表企業説明会で、カカオタクシーに続いて代行運転、バイク便などの交通情報と地図を中心とするO2Oビジネスを展開するという計画を明らかにした。

    「キムギサ」もまだなすべきことは多い。ナビゲーションの特性上、グルメ・旅行などの情報が多い。「キムギサ」を通じてグルメと観光地案内サービスを行い、今後は「キムギサ」アプリを通じて予約と支払いまで行うこともできる。これにカカオペイが融合されるのは当然のプロセスになる。

    「キムギサ」は日本や中国など、アジア市場を中心に海外進出も積極的に推進している。

    日本はすでに試験サービスを行い、有料マーケット「AUスマートパス」に出店するなど、本格的なサービスを準備している。韓・日関係の梗塞で「キムギサ」の日本進出は両国で注目されていないが、日本進出はずいぶん前から野心満々に準備したサービスだった。

    「キムギサ」はダウムカカオが「ナビゲーション」をもとに、海外市場に挑戦する基盤になるという分析が出ている。 「メッセンジャー」と「ゲーム」以外、海外に出すサービスがないダウムカカオの「ナビと地図」は第3のアイテムになりうる。

    ■ He is ...

    △東亜大コンピューター工学科学士、△釜山大コンピュータ工学修士、△1999年KTIT入社、△2001年のポイントアイ入社、△2010年5月ロックアンドオール(キムギサ)創業、△2015年5月ダウムカカオの100%子会社に編入。
  • 毎日経済_ソン・ジェグォン記者/写真=キム・ホヨン記者 | (C) mk.co.kr | 入力 2015-05-29 15:53:18