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[モノの哲学] 石鹸と処女にして母の聖母マリア

    「アルカリ(alkali)」という言葉がある。訳すと「塩基性物質」程度になるだろう。化学的には水によく溶け、「酸性」を中和させる。小学校時代の科学の時間に最初に学んだこの言葉は、淵源が古いアラビア語だ。「アル(al)」は「物質」を、「カリ(kali)」は「灰」を意味する。簡単に言うと「アルカリ」は、物質が焼けて残った「灰」という意味だ。

    「灰」の成分で作られて出現したモノがある。驚くべきことに燃え尽きてしまった灰で作ったこのモノは、美容に使われる。それはまさに「石鹸」だ。最初の「石鹸」は、アラビア人が塩素の脂肪と焼け残った灰を混合して作ったという。だから昔、この地域では石鹸を「アルカリ」という用語で混用して使用したりもしたそうだ。また、韓国では洗濯などに使われた石鹸水を「ヤンジェッムル(洋灰水)」と呼んだのだが、これは西洋から来た石鹸水という意味だ。

    石鹸水ともいえる「ジェッムル(灰水)」または「ヤンジェッムル(洋灰水)」の逆説は、燃え尽きてしまった「灰」や灰の成分が汚れた物質を再びきれいに再生するために使われるという事実だ。人の肌はもちろん、繊維の汚染を、むしろ焼けてしまった物質を、元通りに回復させる。韓国では俗に、全てが破壊された状態を「灰の山」に比喩する。「灰」は、一種の再生不能な状態、完全な破壊による回復不可能な状態を意味するが、「石鹸」は、その「灰の山」が発揮する「美」の回復能力と再生能力を示している。それを私達は「無用の有用性」として、「不可能の可能性」としてとらえることができるのではないか。

    イエスを受胎したマリアを称して「聖母マリア」と呼ぶが、英語では「処女の母(virgin mother)」と書く。この言葉は、単語そのものに文学的逆説を抱いている。「処女が、いかにして母になれるのか」という原初的な問いについての話ではない。むしろ逆だ。自立できない赤ちゃんのために、あらゆる苦しい仕事と「汚染された」苦労をしなければならないのが、母親という立場だ。だから、母親はきれいな状態ではいられない立場だ。ところが、その立場にいる存在のみが純潔な「聖母・処女(virgin)」になる。生命を誕生させ、育て、保護する純潔な力は、この「低く、汚された立場」から出てくる。「処女の母」は自分自身は「灰」の身となり、他のモノの表面をきれいに再生させ、回復させる「石鹸」と似ている。

    今、韓国は国家の非常事態だ。この共同体の危機回復のために、格別な公的責任を負っている人々は、このモノを再び見つめるべきだ。
  • 毎日経済_ハム・ドンギュン文学評論家 | (C) mk.co.kr | 入力 2015-06-19 16:09:35