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乞食を育てて正規職を目指す…ゲームに反映された韓国社会

    コジ(乞食)は嘲笑と軽蔑の対象ではない。共感のキャラクターだ。正規職は現実だけでなく、仮想世界でも叶えたい夢だ。いわゆる「サムポセデ(三抛世代/恋愛・結婚・出産を放棄した世代)」の疲れ切った現実は、モバイルゲームにもそのまま反映されている。

    『コジキルギ(乞食育て)』はそんなゲームだ。スマートフォンでゲームをクリックするやいなや、貧しい表情をしたコジ(乞食)が「一銭ください」と、登場する。ちょこんと座って物乞いする乞食キャラクターがゲームの主人公だ。ボタンを押すと乞食にお金が落ちる。物乞いをすればするほどお金がたまる。

    このゲームはモバイルゲーム開発会社のマナババ(manababa)が開発した『コジキルギ』だ。去る8月に発売された後、2ヶ月でGoogleのプレイゲームランキング2位を獲得した。悲惨な主人公を前面に出したゲームはもっとある。見習い社員を正社員にすることが目標の『私の夢は正規職』、より高い時給を得るためにアルバイト経験を積む『ピョンジェの極限バイト』などが代表的だ。派手なコンピュータグラフィックス(CG)や壮大なストーリーとは距離が遠い。

    ところが若年層を中心に、旋風的な人気を集めている。 『コジキルギ』は累積ダウンロード170万回を突破した。『私の夢は正規職』は韓国で100万ダウンロードを超え、英語や中国語や日本語にも翻訳されて、国外で50万ダウンロードを追加達成した。『ピョンジェの極限バイト』も最近、10万ダウンロードを超えた。

    『コジキルギ』ゲームはこの6月、マナババのムン・ジョンフン代表が知人2人とともにに2ヶ月でさっと作った。チュソク(秋夕)を起点にダウンロードが爆発的に増えた。

    ムン代表は、「みんな金持ちになりたがるけど、金持ちの反対を考えてみてコジ(乞食)を主人公にした」と語り、「コジに感情移入して、お金を集める快感でゲームを楽しんでいるようだ」とした。

    『私の夢は正規職』は殺伐とした職場生活を、生き生きと盛り込んだ。ゲームの中の主人公は仕事中にミスをしたと切られ、会社の売上げが減少したと解雇される。上司が与えるミッションに失敗すると浮かぶ「ゲームオーバー」画面は、見習い社員の主人公がひざまずいて泣いている姿だ。

    このゲームを作ったクイックタートル(Quick Turtle)のイ・ジンポ代表は、辞職勧告を3回受けた苦い経験からアイデアを得た。イ・ジンポ代表は会社員10人あまりを訪ねて会社生活についてインタビューし、その内容をゲームに盛り込んだ。イ・ジンポ代表は、「直接解雇されたことから、心が本当に痛みましたね。私の経験をゲームとして作ったけれど、たくさんの人が共感してくれて驚いた」とし、「この地には困難な人々が本当に多いようだ」とした。

    ゲームの共通テーマは、「フクスジョ(土の匙と箸)」にたとえられる、暗澹とした現実に対する共感だ。『コジキルギ』のユーザーがグーグルプレイストアに残したコメントを見れば、「金がない、実際の自分自身とゲームの中のコジが似ている」「いくら働いても金をためられない現実の息苦しさを解消してくれる」という共感する評がずらりと続く。プレイヤーの欲望を代理充足させるのがゲームだ。

    専門家は、非正規職や青年失業で疲弊している韓国社会の姿がゲームに反映された結果だと解釈している。

    韓国銀行が今年の下半期に発表した「主要国とわが国青年層の雇用状況の評価と示唆点」のイシューノートによると、一昨年を基準にして韓国青年層の失業率は8.0%だった。

    ハ・ジョンガン聖公会大学教授は「青年たちの暮らしにくい現実がゲームに反映された現象だ。正社員になりづらく、金を集めることが難しい境遇を、ゲームの中の主人公に感情移入することになるようだ」とした。
  • 毎日経済_イ・ソニ記者 | (C) mk.co.kr | 入力 2015-11-06 07:37:43