コラム > オピニオン
[筆洞情談] デート暴力
- 2009年に英国でクレア・ウッドと呼ばれる30代の女性が別れたボーイフレンドに殺される事件が発生した。この男性は過去にも付き合っていたガールフレンドを暴行して虐待した前科があった。この事件をきっかけに、女性が望めば恋人と関連する前科を警察で照会できるようにした家庭内暴力前科公開制度（別名クレア法）が2014年から全面施行された。この法案は施行初年度、1300人の女性をデート暴力から救ったと集計された。
全世界的に2000年代に入ってデート暴力（Dating abuse）が深刻な社会問題として浮上している中、韓国でもデート暴力犯罪が増えている。警察が今年2月の1カ月間、デート暴力集中取り締まりを行い、1279件を摘発した。警察庁によると2015年6月基準で、ここ5年間のデート暴力犯罪者は3万6362人、これにより死亡した人も290人に達した。
デート暴力は身体的暴力だけでなく、性的暴行、脅迫、金品恐喝、ストーカーなど様々な形があり、国、人種、年齢、経済水準、社会階層を問わず発生する。
米国の研究によると、女子学生の83％がデート暴力を経験したことがあり、米国の32カ所の高等教育機関の男女6159人を対象にした調査では、強姦や強姦未遂の84％がデート相手によるものであることが分かった。バラク・オバマ米大統領が直接指示し、女性のデート被害予防対策（PSA）を発表するほどだが、デート暴力がそれだけ日常化したということだ。米国は1990年にカリフォルニア州で初めてストーカー禁止法を制定して以来、50の州でストーカー刑事処罰法を施行しており、1994年には「義務逮捕」と民事上の接近禁止命令を中心としたデート暴力処罰規定が女性に対する暴力防止法の中に含まれた。オーストラリアは身体攻撃、ストーカー、暴力の脅威を犯罪と規定して、すぐに「警察命令」を発動する。日本も「ストーカー行為等の規制に関する法律」に基づいて刑事処罰を原則としている。デート暴力の法的根拠がほとんど存在せず、ストーカーをせいぜい罰金10万ウォンの軽犯罪として処罰する韓国とは極めて対照的だ。
韓国の刑事政策研究院によると、2005年から10年間、恋人を対象に殺人や性暴力などの4つの犯罪を犯したデート暴力事犯の76.6％が前科者だという。「韓国版クレア法」を制定しなければならないという声が高い理由だ。デート暴力防止のために、相手の前科参照を許可することについて、女性の86.8％、男性の62.7％が賛成したというのだから、積極的に検討する必要があるテーマだ。
ちょうど8日は国際女性デーだ。どのような社会が文明社会なのか、野蛮社会なのかの尺度は、昔も今も、女性・児童・高齢者など社会的弱者をどれだけうまく保護し、人権を守っているかにある。韓国はまだ道のりが遠い。 - 毎日経済 チェ・ギョンオク論説委員 | (C) mk.co.kr | 入力 2016-03-07 17:26:07
