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[筆洞情談] 「ぼうっと」すること

    「すでに何もしていないが、もっと猛烈に何もしたくない」

    数年前に流行したあるカード会社の広告のキャッチコピーだ。激務に苦しみ疲れた彼らの中には、このフレーズに「激しく共感する」という反応が多かった。過去には遠くの山を見つめながら無念無想の時間を過ごしたことが多かったが、最近ではスマートフォンのせいで私たちの脳と指は少しの間も休めない。

    「我を忘れてちょっと休みたい」という現代人たちの熱望が「ぼうっと大会」というのを誕生させた。2014年に初めて開催された「ぼうっと大会」は、脳を休ませようという趣旨で何もしていない状態を長く維持できた人が勝者となる。疲労社会である韓国が作った発明として、中国の北京にも輸出された。今年も先月30日にソウル麻浦区の漢江公園で「ぼうっと大会」が開かれ、申請者3500人のうち50対1の競争率を勝ち抜いた70人余りが参加して2時間のあいだ「ぼうっと」した。

    「ぼうっと」することを米国では「スペースアウト(space-out)」と呼ばれ、医学的には「デフォルトモードネットワーク(default-mode network)」という。「ぼうっと」することの賛成論者たちは、ニュートンがリンゴの木の下で万有引力を発見したことや数学者アルキメデスが浴槽の中で浮力の原理を発見し、ユーレカを叫んだのも刹那の休憩がもたらした結果だと主張する。人間の脳は1.2~1.4キログラムで全体の体重の2%にしかならないが、全体酸素量の20%を消費する。

    したがって、肉体の疲れを癒すためにストレッチをするように、精神の弛緩のためには脳を休ませる必要があるという主張が少なくない。

    「ぼうっと大会」にはいくつかのルールがあり、携帯電話の確認・睡眠・時間の確認・雑談・笑うこと・食べること・読書などが禁止されている。進行要員が心拍数をチェックして、市民たちが参加者を見守ったあとにシール投票をして優勝者を決める。しかし、あえて「大会」として競争させる必要があるのだろうか。誰かが自分の姿を評価していると思うと、心拍数がかえって上昇しないのだろうか。「ぼうっと」しながらも順位を付けるというのは、何にでも順位を付けなければ気が済まない韓国人の「等数脅迫」を見せられているようで多少惜しい。連休期間のあいだ、携帯電話はしばらく置いて春の日差しの下で「ぼうっと」してみるのはどうだろうか。無我の境地に到達しても良いし、魂がアンドロメダへ行って来るのも良いのではなかろうか。
  • 毎日経済 シム・ユニ 論説委員 | (C) mk.co.kr | 入力 2017-05-03 07:35:56