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[筆洞情談] 冷麺

    「おいしい。しかし、グローバル化するのは難しそうだ。西欧では基本的に冷たい食べ物を料理として扱ってくれない」。数年前、海外のある有名料理評論家が韓国の冷麺(ネンミョン)を評するのを放送で見た記憶がある。

    内心「3回は食べてから言うべきだ」と考えた。平壌冷麺の深い味を知ろうと思ったら、少なくとも3回は食べてみなくてはいけない…というのが冷麺愛好家たちの持論だ。ただし世界的に麺を冷たくして食べる国が珍しいことは事実だ。冷たい麺が大衆料理として発展したのは韓国と日本ぐらいだろう。さらに、日本は冷たいそばをめんつゆにつけて食べるくらいなので、冷たいスープがメインの料理は韓国の冷麺が独歩的だと考える。

    冷麺はその単純な姿とは異なり、味の標準化が極めて難しい料理だ。専門店ごとにスープをとる材料と方法が異なり、ソバの構成比が異なり、続いてトッピングが異なっている。とうぜん質感も異なっている。それぞれの味に呼応するマニア層が、まるでなにか「門派」のように分かれている。光化門で道一つを挟んで、ある職場では「冷麺を食べに行こう」と言うと何も言わなくても当然忠武路のP冷麺店だと考え、向かいの職場では麻浦U冷麺店を訪れるという話を聞いたこともある。職場文化によって冷麺の好みも変わる。

    冷麺に対する情熱は漢江から南へ下ると急激に冷める。大邱(テグ)で育った私が冷麺を初めて食べたのは大学の構内食堂で出てきた粉食冷麺で、しっかりとした平壌冷麺を食べたのは職場に入った後だった。職場で新人だった時代、大邱で友達に会って「一番うまい冷麺の店に行こう」と言った。この友人がしばらく探し回って案内してくれたところが東城路のある食堂だったのだが、石焼ビビンバやイカ炒めなどに加えて、粉食店の冷麺を出すところだった。嶺南の不毛な麺文化を嘆いていた記憶がいまだに鮮やかだが、今はどうか分からない。

    10年前までは、真夏に老舗の冷麺店の前で並ぶ人の大半は70代以上の年寄りたちだった。

    「このお年寄りたちが去ってしまったら、冷麺の店はどうなるのか」と考えたりもしたが、よけいな心配だった。最近、冷麺の店には20代の女性会社員のグループ、デート中の若い男女たちも頻繁に目につく。真夏の冷麺は性別・年齢に関係なく、「無条件に真理」なのだ。午前11時20分、P冷麺店の前で列に並びながら、こんなことを考えていた。
  • 毎日経済 ノ・ウォンミョン 論説委員 | (C) mk.co.kr | 入力 2017-08-15 09:00:00