『妻の誘惑』（SBS 2008）、『私はチャン・ボリ！』（MBC 2014）、『いとしのクム・サウォル』（MBC 2015）。

3本のドラマの共通点はなんでしょうか。

マクチャンドラマ（支離滅裂で筋の通っていない刺激的なストーリーで視聴者を魅了するドラマこと）と悪口を言われるキム・スンオク作家の作品というのが共通点です。そして結末がうやむやに終わるという点も同じです。同じ作家が書いた作品なんですからまあそうなのかもしれません。

考えてみるとキム・スンオク作家の作品でなくても、マクチャンドラマは「開かれた結末（視聴者の想像にまかせる結末）」だという共通点を持っているようでもあります。

イム・ソンハン作家の『人魚姫』（MBC 2002）や『アヒョン洞の奥様』（MBC 2007）も開かれた結末の形式をとっています。イム・ソンハンも「マクチャンの大家」に挙げられる作家です。

マクチャンドラマの共通点を挙げるとなると終わりがありませんが、まず演出家や作家が「マクチャンだと悪口を言わないでください。ちょっと刺激的でもマクチャンではありません」という言い訳をするのも同じです。

実際に刺激的なシーンや表現を無条件に悪いものだと言い切ることもできません。しかし、チョク台本（本の装丁がされていない急いで作られたペラペラな台本）に頼って撮影するほど急いで書かれると、刺激的な内容が入ることの蓋然性を見つけることが難しいのでしょう。視聴率が落ちて、ドラマの展開が行き詰ってくると、主人公がこれまでには見せなかった奇妙な行動をとったり、交通事故や不治の病が登場したり、とんでもない人物も登場します。このようにして高めた緊張感をしっかりとまとめることができずに終わってしまうのがマクチャンドラマの宿命なのかもしれないですね。

（チョク台本とは1~2ページほどの台本のこと。ドラマの撮影前にあらかじめ作られず、撮影の直前に撮る分だけをいそいで作った台本のことだ。台本の執筆速度が撮影の速度についていけず生じる現象だ）

愚かで善良な主人公があくどい友人や義理の姉妹、義母、後妻などに凄惨ほどに苦しめられても許しと和解で終わる結末もほぼ同じです。作品を作った人たちは許し云々としながら、ドラマの価値を高めようとしたのかもしれませんが、悪役キャラクターがどのような罰を受けたのかを描くことが困難だからではないかという疑いも持たれます。

マクチャンドラマはそれでも健在です。高い視聴率がマクチャンドラマを守ってくれる力です。

身分が変わった2人の女性とその母親の話を扱ったMBCの『私はチャン・ボリ！』（2014）の場合、後半に行くほどに視聴率が上がって30％のラインを越えると2話が延長されました。「マクチャンドラマの母」と呼ばれる作家キム・スンオクが書いた結末は猟奇的でコミカルです。

このドラマは天下の悪女が1人でもなく、3人も登場します。イ・ユリが引き受けたヨン・ミンジョンは天下の悪女です。子供の頃から彼女の性格が明らかになります。交通事故で気を失ったチャン・ボリを義理の妹とした後、彼女の絵を奪って絵画大会で1等をもらい、実の母を酒屋のおばさんと呼ばせたことも足りなくて、自分をいじめると嘘をついてピスルチェの後援を受けます。

チャン・ボリの実の母親インファ（キム・ヘオク扮）や義母ト・ヘオク（ヨン・ミンジョンの実の母親。ファン・ヨンヒ扮）もヨン・ミンジョンほどではありませんが悪徳であることには変わりなくチャン・ボリを苦しめます。

最終回の1週間前、ト・ヘオク役を引き受けた俳優ファン・ヨンヒがインタビューで「結末は本当にバラエティ豊かで、スペクタクルですが、想像を超える面白い話が一つ登場するので期待する価値があります」と打ち明けました。ト・ヘオクは精神異常者となった後、刑務所から出てきた娘を見分けることができません。むしろ近所の犬を見てミンジョンと呼びます。

刑務所で縫製授業のボランティア活動をするヨン・ミンジョンの手は指がついたまま固まった状態でした。

離婚しようと言ってイ・ジェヒが火の中に投げた指輪を拾い火傷を負うのですが、固まった手の中にある指輪を手放さないように手術も受けずに生きていきます。

希代の悪女まで心を入れ替えたのですから、ドラマは誰もがハッピーなエンディングで終わります。