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[コラム] 母という名前の重み

凍った体で雪から子どもを守ろうとした母 / 赤ちゃんをゴミの山に捨てた非情な母 

  • [コラム] 母という名前の重み
子どもを殺害したという衝撃的なニュースに連日接していると、ドイツの文豪パトリック・ジュースキント(Patrick Suskind)の小説『香水』を思い出します。また、裸で赤ちゃんを守った母親の話も重なります。

香りに狂った人殺しの話『香水』を映画で接した人がもっと多いかもしれません。破格的な性愛シーンがあるにもかかわらず、韓国でも15歳以上観覧可能だったからでしょうか。

主人公の人生は生まれてすぐに殺されそうになる危機の状態から始まります。人殺しを生んだ母は、9カ月間、胎内で育んで産んだ赤ちゃんを平気で魚かすが溜まったゴミの山に捨てる非情な女性です。それに先立って四人の兄弟が同じ母から産まれましたが、泣くこともできずに、この世から去りました。

このように冷酷な母の話が今日の韓国社会を幽霊のように漂います。子どもを殺​​した親​​を扱ったニュースが絶え間なく続いています。

子どもが死んだ後、白骨になるまで部屋の中に放置しておいた40代の牧師夫婦が検挙されたというニュースも聞きました。女子中学生の娘を5時間も殴って殺した後、家出したと申告して、信徒たちの前で永遠の命の道を見つけろと説教したそうです。

専門家たちは、非情な社会で母親たちがロールモデル(Role Model)を見つけられずに、極端な状況に追い込まれたという診断を下します。

本当の母の姿を求める人に聞かせたい話があります。

韓国戦争(朝鮮戦争)当時、寒い冬、後退していた米軍兵士は雪が積もった谷で赤ちゃんの泣き声を聞きました。鳴き声の方へと向かった兵士は、雪の穴の中から赤ちゃんを発見して、ビックリします。

裸の女性が赤ちゃんを抱いている光景を見たからです。赤ちゃんを抱いて戦争地域を脱出しようとしていた母親が、雪に閉じ込められると着ていた服をすべて脱いで赤ちゃんに着せた後、裸になって抱きしめて凍った状態で発見されたのです。

米軍兵士は、凍った地面を掘って母を埋め、赤ちゃんを胸に抱いて連れて帰り、自分の息子として育てました。

子どもが成長して青年になった後、兵士は母親のことを教えてあげました。

高齢になった義父の記憶を辿って母親の墓に訪れた青年は、着ていた服を脱いで墓を覆った後に伏せて​​号泣しました。

「お母さん、あの日、どれほど寒かったでしょうか」

この話を最初に接した時、赤ちゃんを生かそうとした母親の一念が米軍兵士を赤ちゃんのもとへと導いたという考えを隠すことができませんでした。

韓国社会は、若い母親が子どもを育てるのに十分な環境を提供していません。そのような環境は、どうしたら作れるのでしょうか。いつ、そんな社会が訪れるのでしょうか。

凍り付いた体でも自分の子どもを冷たい空気から守ろうとする母親の心が合わさるなら、女性一人でも余裕をもって子どもを育てる社会を作ることができるでしょう。筆者が母の犠牲をあまりにも強制してしまわなかったか、心配にもなりますが。
  • O2CNI_Lim, Chul / 写真=photopark.com
  • 入力 2016-02-07 08:00:00




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