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中国の国有企業ケムチャイナ、錦湖タイヤ買収戦に本格的に参入


中国政府の所有する化学企業ケムチャイナ(ChemChina/中国化工集団)は、下半期の買収・合併(M&A)市場の最大魚といわれる錦湖(クモ)タイヤの買収戦に本格的に参入した。グローバルM&A市場の「捕食者」として浮上した中国の国有企業が錦湖タイヤの買収戦に飛び込んだことで、国内外のタイヤ産業に大きな地殻変動が起きるだろうと予想される。

ケムチャイナは先月、錦湖タイヤの債権団と機密保持契約(NDA)を結び、錦湖タイヤに対する細部資料を渡されて、買収の準備作業に着手したことが確認された。これに先立ち、ケムチャイナはボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に錦湖タイヤの買収諮問をまかせるなど、事前準備作業を行っていたことが分かった。

企業が売主の側と企業買収の機密保持契約を結んで会社資料を閲覧することは、M&Aの初期段階に該当する。 11月に行われる予備入札と来年の初に行われる本入札で最高価格を提示して、結果的に優先買取請求権を持つ朴三求(パク・サムグ)錦湖アシアナグループ会長の資金力を越えてこそ、錦湖タイヤを手に入れることができる仕組みだ。

タイヤ業界とIB業界では、ケムチャイナの錦湖タイヤ買収は最後まで積極的に続けられるだろうと見込んでいる。最近、中国の大企業の波状的な海外M&A基調と、中国のタイヤ産業の成長に根拠した見通しだ。

IB業界の関係者は、「ケムチャイナがリングに飛び込んだ以上、パク・サムグ会長が思いもよらない価格を書いて出す可能性が高い」とし、「債権団も内心最も期待する、潜在的な買収者は中国だ」と語った。

総合化学メーカーであるケムチャイナは、中国政府が直接所有する国有企業で、去る2月にスイスの種子・農薬メーカーのシンジェンタ(Syngenta)社を430億ドルで買収することにし、中国企業史上で最大規模の海外M&A記録を書き換えることもした。ケムチャイナは昨年3月、世界5位のタイヤメーカーである伊ピレリ社を買収し、筆頭株主の座を譲り受けるところだ。

ケムチャイナグループに編入されたピレリは、国内外のタイヤ市場調査と錦湖タイヤの価値評価など、今回のディールで主導的な役割を果たしていることが分かった。

2015年のタイヤ売上げ基準で世界14位の錦湖タイヤが5位のピレリと一家族になる場合は、統合売上げが96億ドルに増えて「売上げ100億ドル」をにらむことになる。 6位の住友ゴム(60億ドル)との間隔を大きく広げつつ、4位の独コンチネンタル(108億ドル)のあごの下まで食いつくことができる規模だ。

債権団の売却主幹事を務めているクレディ・スイス(CS)証券は、錦湖タイヤの普通株6636万8844株(持分比率42.01%)の公開売却を進めている。今年11月に予備入札を受けて、本入札および優先交渉対象者の選定は来年の年初に予定されている。来年の上半期中に売却作業を終える計画だ。

ケムチャイナが錦湖タイヤの買収戦に飛び込んだのは、中国政府の決定という解釈が出てくる。中国政府は2003年に中国国有資産監督管理委員会(SASAC)を作り、中央政府の国有企業を統合的に管理するようにした。設立当時は189社だった中央の国有企業の数は、国有企業間のM&Aで5月には106社にまで減少したが、個々の企業の規模はさらに大きくなった。ケムチャイナも大規模な投資などの主要経営事案でSASACの管理を受けている。

中国政府の海外M&Aの捕食本能は、最近のデータにもそのまま表れている。韓国経済研究院によると、中国は今年の上半期だけで1341億ドル規模の海外M&A(225件)を成功させた。同じ期間の韓国企業の海外M&Aは31億ドル(32件)にとどまり、43倍の差が現れた。中国政府が海外企業を買収して、一気に市場シェアと技術力を確保する成長戦略を駆使しているからだ。

韓国経済研究院のキム・ユンギョン副研究委員は、「最近、中国企業の活発な海外M&AはSASACを中心に、中国政府の緻密な計画に基づいて行われていると見るのが妥当だ」と述べた。

自国の自動車産業と比例して成長しているタイヤ産業の特性も、中国がグローバルなタイヤメーカーに注目している理由だ。ヒュンダイ・キア自動車に対する韓国タイヤ・錦湖タイヤなどの国内ブランドの新車タイヤ(OE)が多く装着されるように、世界有数のタイヤメーカーは自国の自動車メーカーと緊密な関係を結んでいる。

世界最大の自動車市場として浮上した中国は、自国の自動車産業を核心的未来産業として育てている。将来的には電気自動車が大勢として座を占めても、エンジンは無くなるはいえタイヤはそのまま残る。それだけタイヤ産業は未来の自動車産業の重要な軸という話だ。現在、中国は世界のタイヤメーカー20位のうちで、10位のジョンチェゴム・グループ(Zhongce Rubber Group)をはじめ3社が布陣している。低価格タイヤで素早く内需市場をおさえているが、技術力の面では国内タイヤメーカーに比べて遅れるという評価だ。このような点から、中国企業が国内2位の錦湖タイヤを買収する場合、先進の技術力を選んで食べて「食い逃げ」するだろうという懸念が出ている。

錦湖タイヤは最近、新設した米ジョージア工場をはじめ中国の南京と長春そして天津工場やベトナム工場など、4カ国に9ヶ所もの生産工場を保有している。

タイヤメーカーの売り物件が容易に出てこない状況で、中国企業だけでなく、世界1・2位のタイヤメーカーであるブリヂストンとミシュランも錦湖タイヤの買収候補に嘱望される理由だ。

しかし、結局は錦湖タイヤ買収戦の最終ラウンドは、パク・サムグ会長と闘わなければならない。パク会長は債権団から優先買収権を確保したが、個人資格として賦課された権利である上に、第三者に譲渡することはできないという但し書きまでついている。 1兆ウォン台に達すると見られる買収資金をパク会長が動員できるかがカギだ。
  • 毎日経済_チョン・ボムジュ記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2016-10-10 00:09:46




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