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ギャラクシーノート7、最大4兆の損失…サムスン電子携帯部門、史上初の赤字


  • ギャラクシーノート7、最大4兆の損失…サムスン電子携帯部門、史上初の赤字
サムスン電子がギャラクシーノート7の製造中断にともなう損失を第3四半期に全て反映させたことは、製品の失敗をはやく忘れて今後の未来戦略に集中するという意図に解釈される。損失を先に反映させることで4四半期以後の業績に対する負担を取り除くということだ。キム・ギョンミン大信証券アナリストは、「公正公示を通じて、サムスン電子は第3四半期に減益を大きくとった」とし、「第4四半期に利益が改善されることが期待される」と分析した。

しかしサムスン電子は第3四半期に、モバイル部門で史上初の赤字を出すと予想される。

サムスンは全世界で毎年3億台以上のスマートフォンを販売する企業だ。第2四半期にも7760万台のスマートフォンを販売して、22.8%のシェアで1位を堅く守った。 2位は11.9%を記録したアップルが占めており、中国のファーウェイ(Huawei/華為技術有限公司)やオポ(OPPO/広東欧珀移動通信有限公司)やシャオミ(Xiaomi/小米科技)などが後に続いた。

「スマートフォン帝国」サムスンにとって、年1500万台の販売が予想されたギャラクシーノート7の失敗は、規模でみると大きくないと見えることもある。しかし、ノートシリーズはサムスンに格別の自負心を与える製品だ。まず大画面のファブレット・フォン(スマートフォン+タブレットPC)のジャンルを初めて開拓し、スマートフォンの元祖であるアップルがサムスンをコピー(模倣)するようにした。スマートフォンの入力ツールとして手のほかに「ペン」を追加したことも革新的としてあげられるし、何よりもサムスン電子で販売しているスマートフォンの中では最も高価な製品だ。このためにギャラクシーノート7の失敗が内部従業員に与える虚脱感と衝撃は小さくない。サムスン電子無線事業部の某役員は、「客地で最も成功した息子が冷たい死体になって帰ってきたのを迎える親の心情のようだ」とし、「ひどいという言葉のほかに表現を考えられない」と説明した。サムスン電子が去る8月19日にギャラクシーノート7を正式発表し、54日目に中断させた過程で多くの事件が起きた。この過程で多くの疑問が生じ、一部は解決されたが多くはまだ現在進行形だ。中断までの過程で、時間順に5つの疑問とこれに対する解答を提示する。

① ギャラクシーノート7の被害は?...単一のIT製品で歴代最大規模

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サムスン電子は去る7日に暫定実績を発表し、営業利益を7兆8000億ウォンと提示した。サムスンははっきりと明示しなかったが、当時のギャラクシーノート7のリコールによる損失の規模は1兆ウォン台の序盤程度と予想された。このような中で12日、公正公示を通じて7兆8000億ウォンだった営業利益を2兆6000億ウォン減少した5兆2000億ウォンを発表した。これまでよりも営業利益は30%以上減少した。これを勘案すると、サムスン電子がギャラクシーノート7の中断で被った損失の規模は、3兆ウォン台半ばから最大4兆ウォンまで達すると予想できる。サムスン電子はこの日、売上げも49兆ウォンから47兆ウォンに減ったと発表した。

サムスン電子の関係者は、「ギャラクシーノート7の中断にともなう直接的な損失をすべて反映した数字」だとし、「生産された製品を全量廃棄することと、リコールに関連して予想できる諸費用をすべて含むもの」だと説明した。販売量を基準にして見ると、サムスン電子が生産したギャラクシーノート7は約430万台と推定される。初期に250万台が生産されたし、このうち販売された製品は150万台だ。リコールのために150万台を製造し、新しいギャラクシーノート7は約30万台以上売れた。ギャラクシーノート7のコストを1台当たり500~600ドルで計算すると、純粋な製品の処理費用だけで2兆ウォンを超える。これに加え、リコールのために通信社などへの支払いの必要なコスト、通信社が課すかもしれないペナルティなどを勘案すれば、単一のIT製品で歴代最大規模の損失額が計算される。

② 技術革新のジレンマ?...増えた新技術がむしろ毒になった可能性

サムスン電子は去る8月2日(現地時間)、米ニューヨークでギャラクシー・アンパックイベントを開催した。昨年はリンカーン・センターのアリス・タリー・ホールで開かれたアンパックイベントは、今年はハマースタイン・ボールルームに変わった。ここは1906年にオペラハウスとして建てられたが、今ではさまざまな公演場として頻繁に使用されるところだ。

ギャラクシーノート7を華やかで立体的に見せるために、会場を製品の発売場所として選定した。この場でブルーコーラル色のギャラクシーノート7を持って登場した高東真(コ・ドンジン)サムスン電子無線事業部長(社長)は、虹彩認識技術と防水・防塵技術や進化したSペンなど、ギャラクシーノート7の最強スペック(仕様)を披露した。

ギャラクシーノート7は発売当時、華やかな仕様で消費者の注目を集めた。何よりも最初に採用された虹彩認識技術と水にぬれても書けるSペンなどは、競争相手であるアップルと確実に差をつける機能になった。機能が多くなり、各機能間の最適化作業にもエンジニアが苦労して、同時にバッテリーの消耗も増えた。従来製品よりも電池性能を500アンペア時増やしたことは選択ではなく必須だった。容量が増えたバッテリーがけっきょく問題になったことを勘案すれば、革新的な技術が多分に毒になったこともありうるという分析だ。

オ・セジョン国民の党議員(前基礎科学研究院長)は、「新しい技術を多く詰め込んだことから、製品内部で干渉がひどくなったように思える」とし、「技術的な問題だが、これを事前に予測していなかったということは問題があるように思える」と指摘した。

③ リコールは性急だった?...バッテリー以外の問題点も調べる必要

8月19日、韓国と米国で最初にリリースされたギャラクシーノート7は、リリースされてまもなく発火事件を起こす。米国消費者製品安全委員会(CPSC)によると、サムスンがリコール決定を下す前に、CPSCに申告された発火関連の受付件数のみで92件に達している。これには発火によって家が燃えたり車が全焼するなどの、財産の損失に関連する部分もあった。

サムスンは製品の出荷前に約一ヶ月間、さまざまなテストを実施した。内部エンジニアだけでなく、外部の信頼できる開発者らに製品を与え、使用上の問題点を報告してほしいとした。韓国と米国の各通信会社との周波数の互換性問題などをテストするために長い時間、製品の性能もチェックした。このようなすべての過程で、ギャラクシーノート7は何の問題もなかった。

しかし発火事件が相次ぐやいなや、サムスンはけっきょく先月2日に世界規模でリコールを発表した。当時、発火の原因としてサムスンSDIで製造したバッテリーの欠陥が問題として取り上げられたし、バッテリーを中国のATL製と交換することで事件は終わるようだった。当時としてはサムスンの先制的な措置に対する賛辞が多かった。過ちを隠さずに堂々と公開し、消費者に問題のないように舵を取ったという内容だった。しかし、結果的に見れば当時のリコールの決定は性急だったという判断を消し難しい。使用停止を勧告して、より慎重に問題を把握する必要があったということだ。当時、バッテリーに加えて他の問題点も把握したならば、製品の製造中止は避けられたという分析だ。

④ 発火の原因は?...部品の欠陥・設計ミスなども論議

先月の2日、リコール当時のギャラクシーノート7の発火原因は、サムスンSDIが製造したバッテリーの欠陥だ。しかし交換製品に搭載された中国のATL製バッテリーにも欠陥があるという指摘が出ている。

ブルームバーグは12日、消息筋を引用して、米国当局の捜査官らがグローバルリコールを通じて交換されたギャラクシーノート7の発火原因として、前回のリコール時のバッテリーの欠陥とはまた異なるバッテリーの欠陥を疑っていると報じた。 ATL製バッテリーが搭載されたギャラクシーノート7の発火事例として、これまで主要メディアの報道などを通じて知られているのは米国の6件、韓国1件、中国1件、台湾1件などだ。

現在はバッテリーの欠陥に加えて、スマートフォンの内部設計上の問題があげられている。防水・防塵機能によって内部の熱が外に出られず問題が生じたのか、スマートフォン内部のプリント基板(PCB)の不良なのか、バッテリーやアプリケーション(アプリ)を駆動するソフトウェア上の問題なのかについてはまだ明確な結論が出ていない。現在、米国CPSCと韓国や台湾などの政府機関で不良原因を調査している。

⑤ 「ノート8」出るか?...今後のブランド戦略の変更も

8月19日に出荷されたギャラクシーノート7は、去る11日に中断され、54日間存在した最短期間のスマートフォンという汚名を残すことになった。発売から販売・リコール・中断まで、サムスン電子としてはあわただしい二ヶ月を送ったわけだ。サムスン電子のノートのブランドイメージは悪化したが、これをこのままにするとは思えない。来年にも変更されたノートシリーズが発売されるとの見通しが優勢だ。下半期の高級スマートフォンのラインナップからノートが抜けて、サムスン電子の悩みは大きくなった。

当面はギャラクシーS7の寿命を延長させて、来年初めの「S8」発売まで引いていくことだ。スペシャル形態のリミテッド・エディションとともに、別の色や異なるUX(ユーザーエクスペリエンス)を採用した製品の発売が有力と思える。ただしノートシリーズを購入する顧客は、大画面とあわせてペン機能を好む者がほとんどだ。これらの顧客層を考えると、サムスンはS7で顧客の忠誠心を維持するのは容易ではないようだ。
  • 毎日経済_イ・スンフン記者/ユン・ジノ記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2016-10-13 07:18:51




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