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[科学の香り] 双子についての誤解と真実


  • [科学の香り] 双子についての誤解と真実
最近、双子が大勢だ。KBSのバラエティ番組『スーパーマンが帰ってきた』に出演する俳優、ソン・イルグクの三つ子、テハン、ミングク、マンセは名前のように大韓民国をワクワクさせている。コメディアンのイ・フィジェの双子ソオン、ソジュンまで力を合わせて、国民を「双子バカ」にしている。双子が連日話題となり、私たちの周りにも多胎児が多いと感じられる雰囲気だ。

▶ 双子の出生率、20年間で3倍に増える

実際に最近、双子が多い。20年間、全体の出生児数はますます減少しているが、双子の出生率は着実に増加している傾向にある。統計庁が発表した「2013年出生統計結果」によると、多胎児は1万4千人で、全体の出生児の3%を占めた。7000人で全体出生児の1%を占めていた1991年と比較する場合、3倍近くに増えたわけだ。専門家は最近多胎児が増加している理由について人工授精が増えたためだと分析している。

一般的に人工授精とは、人為的に作られた受精卵を母親の子宮に入れて着床を誘導する方法のことを指す。成功率を高めるために母親の体内に受精卵を2~3個ずつ移植するのだが、このとき移植した受精卵がすべて着床すると多胎児が生まれることになる。もう一つの手術法である「過排卵」は受精の可能性を高めるために、一度に複数の卵子が排卵されるように誘導する方法で、複数の卵子がすべて受精に成功して着床すると、双子として生まれる確率が自然妊娠よりも50倍も高い。したがって、最近私たちの周りには双子が、正確に言えば「二卵性双生児」が多く生まれている。

▶ 同じ日に生まれた兄弟であるだけ

二卵性双生児は同じ日に生まれただけで、遺伝的には兄弟と同じだ。共有する同じ遺伝子の割合が一卵性双生児は100%だが、二卵性双生児と一般的な兄弟は50%にしかならない。だから性別が異なる場合もあれば、性格や外見も少しずつ異なっている。三つ子であっても、テハン、ミングク、マンセを一度で見分けることができるようにだ。その理由は、二卵性双生児が名前のように二つの異なる受精卵から育ったからだ。二つの卵子がそれぞれ受精して一緒に育ったのだ。

では、2つの精子が一つの卵子に一緒に授精したら、双子になるだろうか。正解は「ノー」だ。非常にまれに2つ以上の精子が同時に卵子に入る「多精子受精」が起こる。しかし、このようにして作られた受精卵は、染色体数が正常な人の46本よりも多くなるため、赤ちゃんに育たず自然流産となる。

一般的に母親は月に1つの卵子を作る。だから二卵性双生児は月に卵子が2個以上作られるという特殊な状況で生まれる。同様に受精卵が3つで、全て育つと三つ子、それ以上育てば数に応じた多胎児が生まれる。ところが、三つ子からは様々な方法で生まれる可能性がある。二つの卵子が受精して、そのいずれかが分裂をすれば、この三つ子は二卵性双生児と一卵性双生児になるのだ。

▶ 二卵性双生児は母系遺伝される

「双子は1世代を隔てて生まれる」という俗説がある。1代を隔てて現れる遺伝子があるというのだろうか。俗説とは異なり、一卵性双生児は遺伝とは何の関係もない。一卵性双生児は、単一の卵子と精子が出会い受精卵になった後、2つに分離して双子に育ったものだ。一般的に受精卵になった後、数日以内に分離するが、その原因はまだ明らかにされていない。

しかし、二卵性双生児は遺伝的な影響を受ける。二卵性双生児を決定する特定の遺伝子があるのだ。この遺伝子を持っている人は、FSH(卵胞刺激ホルモン)の量が一般の人々よりもはるかに多い。卵胞刺激ホルモンは下垂体から分泌され、卵子が育つようにする役割をする。このホルモンにより月に2つ以上の卵子を送り出すケースが生じるが、精子と出会って両方受精して育てば二卵性双生児になるのだ。卵子の生成と関連している遺伝子であるため、母系遺伝される。

ママの伸長や体重など、身体が大きいと二卵性双生児を出産する確率が高いという分析もある。身体が大きいということは、それだけ身体ホルモンの分泌が比較的旺盛だということになる。その分、卵胞刺激ホルモンも多く分泌される確率が高く、月に2つ以上の卵を分泌する確率も高いということだ。

▶ 一卵性双生児はクローン人間よりもそっくり

一卵性双生児は同じ受精卵から出てきだけに、多くの部分で全く同じだ。性別が同じで、母親のお腹から出てきたばかりの双子の外観は見分けがつかないほど似ている。これは双子が持っている遺伝子の塩基配列が同じだからだ。塩基配列とはDNAを構成する成分が記載される順序だが、体の特性を決定する重要な役割を果たしている。

したがって、一卵性双生児は「クローン人間に最も近い存在」と表現されることもある。では、クローン動物と双子の内、どちらがより同じだろうか。実はクローン動物も双子も、両方遺伝子は同じだ。しかし、生まれたばかりの状態を比較するなら、クローン動物がよりそっくりだと見ることができる。動物を複製する場合は菌がない特別な空間で動物を成長させ、体の一部を取って培養する時にも外部のいかなる影響も受けないようにする。そのため、遺伝子が壊れることが少なく、元の姿のままで生まれてくるのだ。

しかし、クローン動物も双子も年齢とともにどんどん変化する。人は年齢とともにストレスや汚れ、ウイルスなどの外部環境によって性格や病気が決まるが、このような外部環境が既に所有している遺伝子よりも大きな影響を与える。このような内容を扱う学問が「エピジェネティクス」だが、クローン動物もこの理論が適用される。木浦大学のホ・ユンミ教授は「同じ受精卵から始まった双子とは異なり、クローン動物はすでに成長している、遺伝的に変化が生じた動物の細胞を培養したものだ。したがって、クローン動物が成長していく段階で表れる差は一卵性双生児の差よりも大きくなりうる」と説明した。こうなると、一卵性双生児がクローン人間よりも遺伝的により同じだと見ることができるだろう。

▶ 一卵性双生児もDNAが異なる場合があるのだろうか

これまで私たちは一卵性双生児のDNAは完全に同じだと思っていた。だから生まれる瞬間の塩基配列は100%一致すると考えてきた。ところが最近、一卵性双生児も非常に微々たる部分で生まれる前から遺伝的な違いを持っ​​て生まれるという研究結果が相次いで発表されている。

EUROFINS(有害物質の分析試験研究機関)の科学者たちは一卵性双生児である父親と叔父、そして一人の息子の3人の精子を採取してDNAを分析した。その結果、双子の父親と息子から双子の叔父が持っていない遺伝的な変異を発見した。つまり、父親と叔父の双子のDNAが異なっていることを確認したのだ。科学者たちは、この変異体が双子の一人にだけ表れたことについて、受精卵が分離された直後に一方の遺伝子にのみ変化が生じたことを意味すると説明した。まだ胎児に発達する前の外部環境、つまり母親のお腹の環境によって双子のDNAが変わったという話だ。

女性の双子の場合には、どのような遺伝子が発現するのかによって外見が変わることもある。女性の性染色体は「XX」だ。同じX遺伝子が2つもあるため、2つのうちのどちらから発現しても結果は同じだ。同じ位置の遺伝子が発現するときに、姉は二つのXのうち左側から発現し、妹は右のXから発現するなら、同じ物理的特性であっても非常に微細な差が生じることがある。

一卵性双生児のDNAの分析や成長しながら表れる変化は、科学者たちにとって常に関心を持っている研究対象だ。環境と遺伝子のつながりを探して老化や病気に対処できる治療薬や方法を開発することができるからだ。エピジェネティクスは宇宙でも行われる。 NASA(米航空宇宙局)は、2015年3月に双子の一人は地球に、残りの一人は宇宙ステーションに1年間滞在した後、誰がより老化するのか、DNAにどのような変化が生じるのかを確認する計画だ。果たして双子の宇宙飛行士の兄弟が高速で移動する物体ほど時間が遅くなるというアインシュタインの「特殊相対性理論」を証明することができるか、エピジェネティクスの糸口を提供することができるか、その帰趨が注目される。
  • 毎日経済 文:イ・ユンソン科学コラムニスト、コラム提供:韓国科学技術情報研究院(KISTI) | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-01-08 08:58:09




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