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テクノロジー > 障害者のための「小さくても大きな」技術…サムスン電子
「音をひとつ変えたところ、視覚障害者の不便は大幅に向上された」。
グローバルな各家電企業は、生活家電を簡単な音声コマンドでより簡単に動作させたいと必死になっている今日、サムスン電子の家電事業部の研究者はちょっとした「音」に注目した。
冷蔵庫・洗濯機・エアコンなど、人工知能(AI)とモノのインターネット(IoT)を組み合わせた製品は、消費者の音声コマンドに反応する音がすべて同じであることから、視覚障害者から「どの製品が動作するのか区別できない時がある」という反応を受け取った。これに対してサムスン電子は今年から、冷蔵庫の温度調整や洗濯機の洗濯コースなどにさまざまな音を適用して、視覚障害者の不便を解消することができた。主要製品で障害者のアクセシビリティを高めようとするサムスン電子の隠れた努力が注目されている。
いわゆる「賢い技術」の確保にもそうとうな手間をかけているわけだ。代表的な事例がまさに全世界の色盲の視聴者に配慮した、世界初の「シーカラーズ(SeeColors)」アプリの開発だ。同社は色覚者がテレビの色を正しく表示できるように、色覚異常を診断して画面を補正するこのアプリをQLED TVとUHD TVの全モデルに採用して発売している。「シーカラ-ズ」は10種類の色覚異常診断を使用して、ユーザーの色覚異常の有無と程度をなんと90%以上の精度で確認する。この診断結果にしたがって、テレビの色表現をユーザーに合わせて補正する方式だ。
サムスン電子はハンガリーのブダペスト工科大学と手を組んでこのアプリを開発し、まず昨年にハンガリーなどの欧州3カ国で商品化して好評を得た。サムスン電子の家電事業部はこのような暖かい技術を採用するために、ソウルR&Dセンター内に「ヘクスラボ」(実際の家庭のような環境で構成された研究スペース)で障害者を直接招待してフィードバックを得た。
テレビよりもサイズが顕著に小さいスマートフォンでも、サムスン電子の障害者に対するアクセシビリティ技術は光を放っている。視覚障害者の利便性のために、ギャラクシースマートフォンで撮影するときは顔の位置と人数などを音声で案内する。指を自由に動かすことが困難な障害者のために、画面のタッチではなく、音声コマンドで機能を操作できるようにした。
家の中のブザー音や赤ちゃんの泣き声を感知して、スマートフォンの画面と振動で知らせる機能は、子供を育てる聴覚障害者の夫婦に非常に便利に使われている。
サムスン電子の関係者は、「アクセシビリティデザインで最も重要な原則は、いっしょに作っていく(Co-creation)こと」だとし、「障害者と直接協業する形で、技術開発が行われている」と説明した。
このような努力のおかげで、サムスン電子製携帯電話のユーザーエクスペリエンス(UX)デザイナーのペク・インホ氏が「大韓民国人権賞」を受賞した。特殊学校の教師と公務員を中心に授賞者が選定される人権賞で、家電業界の従事者が受賞することそのものが非常に異例な状況だった。
サムスン電子が内部人材の技術力を活用して、社会に貢献する企業の社会貢献(CSR)活動も、障害者のアクセシビリティ向上に尽力してきた。サムスン電子の社内ベンチャーであるCラボの「relumino(リルミノ)チーム」が、低視力障害者が物をより明確に見ることができるように支援するサングラス型の「リルミノグラス」を開発したことがまさにそれだ。この製品はメガネに装着したカメラから送信された外部映像がスマートフォンに送信されると、これをその視野障害者が識別できる映像になって眼鏡レンズ(ディスプレイ)に投射する原理だ。
サムスン関係者は「このような技術開発の成果は、社会への貢献という純機能だけでなく、サムスンの社員もその価値を共有し参加するようにして、内部の力量を育てるところにも効果がある」と述べた。