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テクノロジー > 健康・医学 > 韓国の研究陣「脳・コンピュータインターフェース」実験に成功
9日、水原市の長安区に所在する特殊霊長類実験室。腕を動かないように固定したサルが、目の前のボールを見つめていた。サルの前には脳に挿入されたチップの信号を読み取るコンピュータで操作されるロボットアームが設置されていた。 7~8秒単位でのボールの位置がランダムに変わったが、そのたびにロボットアームがまるでサルの手のようにボールに沿って優しくボールをなでた。
カトリック関東大学国際聖母病院医学科のソン・ジョンウ教授の研究グループは昨年10月、国内で初めて霊長類の脳に植えつけた微細電極チップが検出する脳神経細胞(ニューロン)の信号で霊長類の考えを読み、その意図したとおりにマシンを動かす「脳-コンピュータインタフェース(BCI)」の実験に成功した。
この日、実験室で会ったソン教授は「四肢麻痺患者に平凡な日常を取り戻し、生活の質を向上させることができるリハビリテーション技術」だとし、「このような技術は人と脳の構造が最も近いサルでのみ検証することができる」と説明した。
研究陣は2016年6月から研究に着手し、昨年4月に当時6歳だったがアカゲザルの大脳皮質の内側に縦横4ミリの大きさの2個の微細電極チップを植える手術を行った。ひとつは猿の考えを読み取るためのチップであり、他のひとつはロボットの腕として認識した情報を逆にサルの脳に伝達するためのチップだ。
一つのチップには脳の反応による脳神経細胞の電気信号を読み取ることができる96個のプローブが組み込まれている。プローブ1本あたりで2~3個の脳神経細胞の信号を読み取ることができる。猿の健康状態は、現在まで良好だ。
手や腕を自在に動かすことができる霊長類は、3次元的に腕を伸ばすとその方向に沿って脳神経細胞が特定の運動神経を刺激する、一定の電気信号パターンを示す。ソン教授は「目で机の上に置かれたカップを見て手を伸ばして取り上げる単純な動作のためだけに、約30種類の無意識の微妙な方向調整が行われる」とし、「脳神経細胞の信号を分析すると、このような3次元上の腕の動きを正確に予測することができる」と説明した。
サルが目でボールを見て取ろうとしたときに表われる脳の信号はプローブを介して中央サーバーに転送され、コンピュータが脳信号のパターンを解読してどのような動作に対応するのか、その意図を把握した後にそれに合わせてロボットアームが動作するように命令するわけだ。
現在まで、特定の場所にボールを与えたときにサルがロボットアームを伸ばし、正確にボールをつかむ確率は平均83.8%だった。これは全体の試行回数のうちでサルの視覚的な注意力が落ち、自分でボールを取ろうとしないケースを含む数値だ。ソン教授は「初めて試みたときの成功率は50%水準だったが、4~5日のトレーニングを経た後の成功率は88%まで上昇した」と説明した。
研究陣は2021年2月までフォローアップ研究を通じて技術的精度を向上させ、ロボットアームで外部環境を認識してサルの脳に渡すことができるようにする計画だ。
ソン教授はパーキンソン病や認知症のような脳疾患はもちろん、各種の難治性疾患を治療するには霊長類に対する研究が不可欠だと強調した。ソン教授は「1990年代後半から脳神経疾患の治療とリハビリに広く活用されているディープブレインスティミュレーション(DBS)技術は、霊長類を活用した臨床実験を通じて開発された技術」だとし、「現在は世界で10万人以上が恩恵を享受している」と述べた。
それとともに、ソン教授は「霊長類研究は一匹を活用した実験セットのみで」数億ウォンがかかり、少なくとも3~5年以上は実験を続けなければならないだけに、国家次元の投資と支援が重要」だと付け加えた。
最近では人を対象とした侵襲式BCI実験も多様に行われている。米カリフォルニア工科大学(カルテック)の研究者は2015年、四肢麻痺患者の脳にチップを植えた後に2次元的にロボットアームを制御することに成功したと国際学術誌「サイエンス」に発表した。
2016年には米オハイオ州立大学とファインスタイン医学研究所の共同研究グループが、大脳皮質の内側のチップで読み取った脳神経細胞の信号を手首につけた電極パッチで伝達して筋肉を動かす「ニューラルバイパス」を開発し、国際学術誌「ネイチャー」に発表した。
猿の意図をリアルタイムで読み取ってロボットアームを3次元的に制御することに初めて成功したのは、米ピッツバーグ大学のアンドリュー・シュワルツ(Andrew Schwartz)教授の研究グループだ。当時の研究結果はネイチャーに発表された。ソン教授はシュワルツ教授の弟子であり、ポスドクを務めた後の2010年に韓国に戻って関連研究を続けてきた。