A. | 持病の喘息がひどくなったためなのか、直前に行われたアカデミー賞に先立つ公演で歌った『Let it Go』の状態が良くなかったため、公演を企画した人やファンもハラハラした状態で舞台が始まりました。公演を控えて、音響問題まで発生したため、緊張が高まりました。 このようなすべての心配をイディナ・メンゼルは鎮めてしまいました。特に最後の曲で『Let it Go』を歌いながら、最後には韓国語の歌詞で歌い、韓国のファンたちを熱狂させました。このようなファンサービスは、おそらく韓国のファンのテチャン(観客が一緒に歌うこと)により導き出されたように思われます。 コンサートの最初の曲である『Defying Gravity』から観客がテチャンをしたのです。メンゼルが「You are crazy、crazy fans」と言うほど熱狂的でした。歌をきちんと知っている人がおらず、一人で歌うことが多いという『Take Me or Leave Me』を歌うパートナーを募ると、パートナーに志願した観客3人が、歌をすべて覚えているだけでなく、実力もプロ並みで、彼女を喜ばました。『Let it Go』を終えた後、アンコール曲を歌いに舞台に戻ってきたとき、観衆が一緒に『Happt Birth Day』を歌って、彼女を感激させました。 アンコール曲が次々と歌われ、最終的には70分で予定されていた公演は2時間近く続きました。公演が終わった後には観客にサインをして、一緒に写真も撮るなど、打ち上げも続いたそうです。 韓国の観客のテチャンに惚れ込んだ外国の歌手はイディナ・メンゼルばかりではありません。米国のヘビーメタルバンド、アヴェンジド・セヴンフォールド(Avenged Sevenfold)のボーカル、エム・シャドウズ(M Shadows)は、「なぜもっと早くこの国にこなかったんだ!」という感想を明らかにしました。 さらに米国のロックグループのテスタメント(Testament)は、公演が終わった後、フェスティバル関係者に「ここに集まった観客をすべて米国に連れて行きたい」と発言するほどでした。 韓国歌手たちの公演でもテチャンは基本です。去る2013年、ドリームコンサートで少女時代が『I Got a Boy』を歌ったとき、観客がラップは基本で、ナレーションまで一緒に歌いました。テチャンしたのが男性ファンだったら、あまり注目を集めなかったのでしょうが、観客がほとんど女性で、しかも少女時代の大ファンであるソドク(少女時代のオタク)はあまりいませんでした。 韓国の観客が、昔からテチャンに没頭したのかというと、そんなことはありません。日本では西洋のミュージシャンの公演を簡単に接することができるかもしれませんが、韓国では数年前までは、非常に珍しいことだったので、テチャンをする機会もあまりなかったです。 テチャンは一時、歌手に狂ったように付きまとう10代の少女たちの専有物であると認識されていました。もちろん、女性を目にすることがあまりない兵士たちが、久しぶりの慰問公演でガールグループに手を振って、熱狂的なテチャンを見せたりはします。 韓国のテチャンは、2002年、日韓ワールドカップにより刺激を受けたカルチャーだという見方が支配的です。街に出て、誰もかれもが喉がかれるほど応援歌を歌ったため、多くの人の前で歌を歌うことが恥ずかしくなくなったという意味です。ワールドカップが終わって、その年の9月にジャズのスーパースターが集まったバンド、フォープレイ(Fourplay)が韓国で公演をしたとき、ワールドカップの熱気がそのまま続きました。 以後、韓国で公演をしたミュージシャンたちが感想を一言ずつ残して、このような反応がSNSに乗って、世界各地に伝播されると、韓国のファンたちは密かに、自分たちのテチャンに誇り(あるいは負心 )を持つようになります。 テチャン→感激したミュージシャンたちが残した良い感想→テチャンにさらに熱意と誠意を見せる韓国観衆→メディアの評価→ミュージシャンの期待→期待を裏切らないテチャン。少なくともテチャンに関するこのような好循環構造が作られました。 褒めれば伸びるというように、韓国のファンたちが賞賛に酔いしれている面がなくはありません。 そのためか、大衆文化を研究する学者たちの中には、韓国のテチャンに警告を出す人もいます。フェスティバルやコンサートでの韓国の観客の反応は好感が持てて、自慢できるかもしれないが、「韓国のテチャンは世界一」のように考えては困るというものです。 外国のアーティストたちが、東洋の少女たちが英語、フランス語の曲を完璧に一緒に歌ったからと感激するのは事実ですが、数万人の前で歌を歌ってテチャンを誘導する彼らが、5000~1万人程度の観客がテチャンをしたからと、世界で一番だと考えるのかは未知数だということです。 韓国のテチャンが本当に最高の認定を受けるには、世界の多くの国のミュージシャンの音源とアルバムが韓国で売れて、ミュージシャンの訪韓公演も頻繁に行われることが並行されてこそ、テチャン効果を100%認められることができるということです。 ミュージシャンが頻繁に韓国を訪れるようにするためには、まず、ファンのお財布に余裕があるべきでしょう。豊かな暮らしをする韓国が、テッチャンの答えになることでしょう。まあ、韓国の暮らしがそれでも豊かになってきたからこそ、韓国の観客に対するテチャンの評価も出てきたのではないでしょうか。 |