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もっと! コリア (Motto! KOREA)
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  • Q.
    韓国の中産階級が没落している理由は何ですか?
  • A.
    中産階級の没落、このような表現が適しているかはよくわかりません。もちろん、時々新聞や放送に登場する言葉ではありますが。しかし、個人的な考えでは「中産階級の没落」とい​​う表現自体はただの象徴的な意味しかないように思います。

    「中産階級の没落」は自らを中産層として自覚する人が減少しているという程度の意味で受け入れたほうがいいでしょう。もちろん、中産階級についてのいろいろな解釈は多分に政治的な意味が込められています。

    中産階級とは庶民や下流層に身分上昇の欲求を刺激し、彼ら自身は上流層にジャンプしようとする巨大なグループです。そのため、中産階級は社会安全網の重要な要素になります。中産階級が堅実な社会ほど安全です。紛争の緩衝地帯が中産階級の厚さの分だけ丈夫からです。

    このような意味からいえば、中産階級の没落、または中産階級の危機という言葉は、社会の危機という表現に置き換えられることができるでしょう。朴槿恵政府が重要な課題の一つとして任期中に中産階級の割合を70%に引き上げると公言したのも、このような理由からでしょう。

    韓国の中産階級は1980~90年台に強固なベルトを形成していました。保守と進歩陣営の争いにもかかわらず、韓国社会が大きな動揺を見せずに経済成長を謳歌することができた背景にも、中産階級が支えたからと見ても構わないほどです。

    堅固だった韓国の中産階級が崩壊の兆しを見せ始めたのは、通貨危機と直接的な関係があります。終身雇用の概念が消え、雇用が危機に瀕したからです。1990年代半ばまでは自営業者の所得がサラリーマンに比べてもそれほど悪くなく、食べていくのにギリギリだったということもありませでした。

    しかし、通貨危機の余波で、職場で大量解雇事態が発生して、路上に追い出された人々が大挙して自営業に飛び込んだため、あまり大きくもなかった自営業の市場が無限競争状態に急変しました。職場から、市場から、安定した雇用がなくなったのです。

    特に韓国の人口の15%を占める1955~1963年の出生者、別名ベビーブーム世代の非自発的退職が持ってきたショックは相当でした。714万人に達したベイブーム世代の330万人が引退を余儀なくされ、今後2020年までに150万人以上が自営業の市場に追加投入されるしかない状況です。

    老後対策もできていない40~50代の退職者が自営業に集中することになり、廃業するリスクがそれだけ大きくなったわけです。廃業は中産階級から庶民層への低下を意味します。

    かといって労働市場に新たに入ってくる青年たちに雇用が保障されているわけでもありません。青年たちが希望する職場は限られているのに、高学歴化により3D(Dirty・Dangerous・Difficult)業種忌避現象は相変わらずで、求人と求職のミスマッチにより、青年は就職待機状態で貴重な時間を殺しています。

    • < 年齢別不渡り率の推移 *資料=金融決済院 >

    韓国の中産階級が経験している試練として、苦労して購入した住宅価格の暴落、子供たちにかかる教育費用減少の兆しが見えない、お金を借りるところもないということが挙げられますが、根本的には安定した収入を期待しにくくなったというのが最大の要因です。

    肉体労働をしてでも食べていけるという自信、仕事を辞​​めてもそれまでに集めたお金で老後の生活を楽しむことができるという希望、苦労して教育を受けさせた子供たちに未来を委託することができるだろうという期待。このようなものが消えた状況で、もはや自分自身を中産階級だと自負することができなくなったのでしょう。

    家の価格が下落して資産は減り、マイホームを購入しようと融資を受けたのに元利金を返済することによって暮らし向きはさらに困窮になるという、住んでいる家すら完全に保障することが難しいかもしれないという不安が韓国中産層を地獄に落とします。将来の見通しが不透明になるなら、このような不安はさらに深まるでしょう。

    韓国人が中産階級の要件を政府が提示した基準よりもはるかに高く設定している理由はここにあるようです。労働で暮らす自信がないため、所持しているお金でも多かったらと思うのです。昨年、トレンドモニターが実施した調査では中産階級の条件として現金で1億ウォン以上を持たなければならないという回答が60%以上になりました。

    同じ調査で韓国の中産階級の職業はサラリーマンではなく、自分の事業をしたり、医師、弁護士、教授などの専門職を持っていることも、老後が保障される安定した雇用という共通点があります。

    最終的には、将来への不安が中産階級を脅かしているわけです。社会安全の基礎である中産階級を復元するには、このような不安の治癒策が設けられる必要があるでしょう。