JTBCで放送していた『Hidden Singer』という番組は、それなりに成功した音楽番組です。視聴率もケーブルチャンネルで1~2位を争ったうえ、中国とトルコ、タイ、ベトナムと米国NBCにフォーマットを輸出したので、自慢するだけのことはあります。

『Hidden Singer』のフォーマット自体は簡単です。本物の歌手と物まね歌手がカーテンの後ろに隠れて歌を歌って、観客が本物の歌手が誰なのかを当てるゲーム形式の音楽番組です。

本物の歌手と争うだなんて、一見、相手にならないようにも見えますが、思ったより簡単ではありません。もともと物まねと歌が得意な人が出演するのに加え、出演が確定した後にボーカルトレーナーからトレーニングを受けるため、熱烈なファンではない場合は、本物と偽物を区別することが容易ではありません。場合によっては、物まねをしている出演者が本物の歌手より歌が上手なことだってあります。

『Hidden Singer』に出演する物まね歌手たちには共通点が一つあります。オタクだという点です。本物の歌手を熱烈に好きで、歌手の歌を聞きながら、つらい夜を過ごした思い出をそれぞれが持っています。そうするうちに、自分のスターとそっくりに歌えるようになった人たちです。

『Hidden Singer』とはフォーマットがまったく異なりますが、SBSの『ファンタスティック・デュオ』もアマチュア歌手たちが舞台を飾る音楽放送です。先日、S.E.S出身の歌手「パダ」のデュオを選ぶ舞台で「海（パダ）の王子」というニックネームを持つ30代の男性がものすごい歌の実力を披露しました。

彼がソウルフルな声で『I'm your girl』を歌ったとき、観客はもちろん、パネラーとして参加した歌手たちも感嘆しました。パダは歌を聞きながら感動を抑えることができず、涙ぐみました。歌の実力があまりにも優れているため、MCが「なぜ歌手を目指さないのか？」と尋ねたりもしました。

ファンタスティックデュオに出演してスターと一緒に歌を一般人たちも、ある意味ではオタクです。「海の王子」は、東海岸でサーフィンを楽しんでいたとき、パダのデュエットの相手を募集するというニュースを聞いて、サーフィンをやめて番組に応募したそうです。真夏の海でのサーフィンよりも、パダのパートナーになることを自ら望んだのです。

「海の王子」は歌手の道を進みませんでしたが、SUPER JUNIORのリョウクは成功したパダのオタクです。S.E.Sのパダの熱心なファンとして活動していた当時、紫の文字で「天上の声チェ・ソンヒ」というプラカードも作ったそうです。

2013年のSUPER JUNIORのコンサート初日、リョウクがパダスタイルに女装をして『I'm your girl』に合わせてダンスを踊った時、舞台裏からパダが突然登場し、リョウクはその場で腰を抜かしてしまいました。パダとカンインが食事をした席で仮装をする話が出てきたときに、リョウクにこっそりとビックリショーを企画したのです。

パダはリョウクのTwitterに「リョウク、私よりもきれいになってどうするの？！」という文を投稿したりもしました。

リョウクと同じSUPER JUNIORのメンバー、イトゥク（朴正洙）もS.E.Sのファンです。しかし、イトゥクが好きだったS.E.Sメンバーは、パダではなく、ユジンでした。イトゥクは2007年、メンバーたちと一緒に車に乗って移動しているときに交通事故に遭い、170針も縫う重傷を負いました。

この事故で腰を痛め、社会服務要員になるようにとの判定を受けたのですが、何度も再検査を受けて、最終的には現役で入隊しました。 2012年の入隊を前に、ユジンと一緒にKBSのトークショーである『ハッピートゥゲザー』に出演しましたから、ファンとしては非常に感動する事件だったことでしょう。

S.E.Sファンの中には、韓流スターのBoAもいました。BoAはSMエンターテイメントでオーディションを受けた時に、S.E.Sの1枚目のアルバムの収録曲である『完全な理由』を歌いました。BoAは練習生生活の間、S.E.Sのお姉さんに会うのを楽しみにしていましたが、日本に語学研修を行った後にようやく対面することができたそうです。

BoAも数多くのオタクを生みました。Red Velvetのアイリーン、Lovelyzのケイ、SHINeeのキーは、自分のアイドルのあとを追ってアイドル歌手になりました。少女時代のティファニーもBoAの熱烈なファンでした。ティファニーが数多く芸能企画社のラブコールにも応じず、SMエンターテイメント行を選択した理由は、BoAがいたからだそうです。SMエンターテイメントの家族になった後、ティファニーはBoAとの親交を誇示したりしています。

少女時代は、多くのオタクを量産ました。GOT7のベムベムは少女時代のテヨンにすっかりはまったテンパであり、ジャクソンは少女時代サニーのファンです。Red Velvetのイェリは自他が公認する成功したユンパ（ユナのオタク）です。SMエンターテイメントに入ったイェリは親近感のわく態度のおかげで、かなりの年齢差を克服して、ユナと親しくなったそうです。

SMルーキーズのジェミンも評判の高いソウォン（少女時代ファン）です。ディズニー・チャンネルの『ミッキーマウス・クラブ』にユナとスヨンがゲストとして出演した時は、あまりにも嬉しくて眠れなかったと打ち明けました。

彼らのストーリーを見ると「オタクがオタクを生む」という言葉が改めて思い浮かびます。MAMAMOOのムンビョルも「ヨドク（女性のオタク）は、ヨドクを生む」という言葉を証明して見せた人物です。f（X）のクリスタルの熱烈なファンだったムンビョルは天で輝く星のように、自らもヨドクの群れを率いています。

韓国の芸能人のうち、成功したオタクには誰がいますか。（上）
韓国の芸能人のうち、成功したオタクには誰がいますか。（下）