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【韓国コラム】ラオコーンの寂しい主張

    1506年、イタリアのエスクィリーノ(Esquiline)の丘で発見されたラオコーン(Laocoon)の群像だ。

    ブドウ畑を掘り起こしていた農民が彫刻像を発見したという知らせが伝わると、法王ユリウス2世は直ちにミケランジェロを派遣した。彫刻像を確認したミケランジェロは「必ず彫刻像を購入しなければならない」と勧めた。ユリウス2世はこれを買い取り、バチカンのベルヴェデーレの庭園に展示した。

    オリジナルではなく大理石で作られた複製品だったが、それほど価値のある彫刻像だったのだろう。原本は紀元前200年頃に青銅作品で作られた。

    ラオコーンはトロイの司祭だった。ギリシャ軍の知略で有名なオデュッセウスが作った木馬の危険を見抜いた数少ない人物だった。預言者のカサンドラー(Cassandra)とともに絶対に木像を城内に持ち込んではいけないと声を張り上げたが、敗軍が残していった戦利品を歓呼する群衆の中に彼の声は埋もれてしまった。

    ラオコーンはあきらめなかった。木馬が入ってくると槍を投げて木馬の中を確認しようとした。

    彼の行動はギリシャ軍を支持していた海の神ポセイドンを憤らせた。ポセイドンは2匹の蛇を送って、ラオコーンと彼の2人の息子に罰を与えた。ラオコーンの警告を無視したトロイは木馬から這い出てきたギリシャ軍によって陥落してしまった。

    「孤独だけど正しい声を上げる」のはとても難しいことであることを示すエピソードだ。

    大理石の群像が発見された後にも同じことが繰り返される。群像は右腕が切断された状態で発見されたが、彫刻家のほとんどが上に向かってまっすぐに伸びていたと推測したそうだ。ミケランジェロだけが意見を異にした。「肩と腕の筋肉の形に照らして右腕が後ろに曲がっているはずだ」という彼の寂しい主張は無視された。

    400年後、ローマの石工作業場でラオコーンの群像の切断された腕が発見された。ミケランジェロの予測通り、後方に曲がった形だった。

    真実は決して投票で決定されないことを雄弁に示す事例だ。

    今日、他人とは違う意見を見つけるのは容易ではない。蛇にかまれるのではないかという心配が先走るからだろう。ポセイドンが送らなくても暇さえあれば、かみちぎろうと舌を出す蛇が群衆の中でとぐろを巻いているから恐れるのは当然だ。
  • Lim, Chul | 入力 2021-12-04 00:00:00