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[コラム] ふたつのマンション

  • 昨年末、釜山のマンションで出勤途中の住民に警備員が挨拶するよう強制したという話が伝わり、しばらく騒々しかった。

    マンション住民の「カプジル(甲質)」(立場を利用して相手に不利益になる行為をすること)問題に飛び火したこの事件は、インターネットコミュニティ「今日のユーモア」にマンションと繋がっている地下鉄の通路で警備員が90度で挨拶する写真を投稿しながら始まった。 「このマンションの入居者代表会議で何人かの住民が他のマンションでは出勤時間に警備員が並んで挨拶するのに、なぜうちのマンションの警備員は挨拶をしないのかと継続的に抗議があった」というコメントが一緒に添えられた。

    翌日、このマンションに住んでいる学生が「オンラインでイシューになるまで何の行動もとらなかった自分が恥ずかしい」と、「警備のおじさんが毎朝挨拶しないようにしたい」という文をエレベーターに貼り付けた。この学生の張り紙を見た中年層がやっと激怒した。

    学生は警備員の挨拶を防ぐためにマンション中を回って住民の同意を受け取ったが、全体の住民のうち2世帯だけを除いてサインをしてくれたと明かした。

    うるさくなると、このマンションの入居者代表は、あるマスコミとのインタビューで「挨拶する人は警備員ではなく、出入りの通路を制御するセキュリティ要員」だとし、「彼らが不親切だという苦情があり、挨拶をしてほしいとお願いしただけで、挨拶を強要してはいない」と釈明した。

    この事件が起きてから2カ月後、ソウル市加陽洞のあるマンションでは「警備員削減」に関する住民投票が実施された。このマンションの入居者代表会議は「管理員の削減を要求する請願が多数発生している」とし、警備員8人のうち2人を解雇する案を住民投票にかけた。

    警備員を減らすと世帯当たり月に3275~5275ウォンが削減されるという根拠が提示された。住民投票が行われると住民が「縮小対象の警備員の中には、10年間ずっと私たちと一緒だった人もいる。1カ月の管理費4000ウォンを節約しようと、カプジル行列に同参するのか」という壁新聞を貼り付けた。

    住民投票の結果は大多数の人が一緒に暮らす方を選択したと知られた。このアパートの770世帯のうち419世帯が投票に参加したが、73%に達する317世帯が警備員の削減に反対した。

    ふたつのマンションの話は違うが、伝えるメッセージは終始一貫している。

    まず、マンションのカプジルは住民全体の意志ではなく、少数の声の大きな人が行ったものだという点が同じだ。入居者代表がカプジルの先頭に立とうが、少数の人の意見に反対せずに受け入れた入居者代表であろうが、その責任から逃れることができないという点も同じだ。

    もう一つ注目すべき事実は、声の大きい人の主張を放置すると、全体の意見になってしまうという点だ。釜山のマンションは2カ月間警備員に挨拶されるのが気まずかったにもかかわらず、他人事のように忘れて暮らす人がほとんどだった。その期間中、挨拶を強要した人は住民の誰もが自分の考えと同じだと感じたかもしれない。

    このような不当な行為は、若い学生が勇気を持って行動したことにより是正された。その後、ようやく他の人も自分の声を出すことができた。

    ソウル市加陽洞のマンションの住民投票も似たような面がある。壁新聞を貼り付けた住民がいなければ 、このマンションの投票結果では指導部の意思が貫徹されていたのかもしれない。自分の利益と直結しないことにも関心を持って努力した人がいたおかげで、住民の大多数が自分たちの考えを投票用紙に込めることができた。

    マンションのカプジルと同様に韓国の政治経済社会でのカプジルは少数により行われる。しかし、このようなカプジルを防ぐためには、普通の人の犠牲をもっては力不足だ。指導層の犠牲なしには不可能だ。
  • O2CNI_Lim, Chul | 入力 2016-03-06 08:00:00